オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【小説紹介と雑談】<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-とVRゲーム物について

 各プレイヤーの行動や性格、プレイスタイルによって独自に能力が進化するシステム<エンブリオ>。人と間違うような、確かにその世界に息づくNPCたち<ティアン>。そんな夢のようなシステムを備えたダイブ型VRMMO<Infinite Dendrogram>は、瞬く間に一大ムーブメントとなって世界を席巻し、数多くのユーザーがこのゲームを楽しんでいた。大学受験を終えて東京で一人暮らしを始めた青年・椋鳥玲二もまた、受験勉強の終了を記念して、かねてより兄に誘われていた<Infinite Dendrogram>を起動する。

 これは世界か、遊戯の話。
 そして思い出の物語である。

※株式会社ホビージャパン様のレーベル、HJ文庫よりシリーズ刊行中
※あらすじを文庫版に差し替えました。

(=ↀωↀ=)<もうちょっと詳しい紹介は公式HPや特設サイトなどでー

(=ↀωↀ=)<漫画版もコミックファイアで連載中ですー

(=ↀωↀ=)<そしてTVアニメ化決定です!

 

本文あらすじより

おすすめ度☆☆☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 

 

 

 この小説は一昔前web小説全体で流行ったVR物に類する作品です。この類の作品は本当にたくさんあり、元祖で言えばクラインの壺。ブームへ火を点ける起爆剤となったソードアート・オンライン他、挙げればキリがないほどのタイトルがあります。

 最盛期は異世界転生と並ぶほどのジャンル(そもそもVRの皮をかぶった異世界物というパターンも多い)としてなろうで存在感を放っていたこのVR物ですが、最近は落ち着きを取り戻してきたように感じます。

 個人的に理由を考察すると手間がかかってお手軽じゃないじゃん! とわかってしまったからだと思います。

 このVRというテーマで王道を行こうとすると現実世界を肯定しつつ、VR側の世界も真実であることを肯定するという流れになります。現実でも生きているが俺たちのリアルはここにもあると叫ぶわけですね。そもそもなんでこうなるんだとかここにも最初からゲームに比重が置かれてたりと色々あるんですがこの辺をきちんと説明するとなるとレポートかけちゃうレベルになるので端折ります。

 VR世界でリアルを叫ぶ。その為にはVR側の世界できちんと物語を作り、キャラクターの魅力や魅力的な世界観でその世界を主人公(読者)に認めさせれるだけの大きな土台作りが必要になってきます。たくさんのキャラとの出会い別れでそのキャラ達に愛着を持ってもらい、そこにもう一つの世界があることをきちんと示さなきゃいけません。

 その上今いるリアルを肯定しつつ異世界のリアルを叫ぶわけですから、もちろんリアル側でも物語を展開しないといけません。例で言えばゲーム内での相棒が幼馴染でそれがバレたことによるハプニングだとか。ここでも強固な土台作りが必要になってきます。複数キャラとの絡みだとか、シュチュレーションの必然性だとか。

 ここまで読んでくれた人ならお分かりだと思うんですが、くそ面倒です。しかもハイレベルな作家としての技量を求めてきます。その上この道はとても険しいの割にもうソードアート・オンラインという制覇者がいるのです。例えるならエベレストの登頂みたいなもので、とても険しくて実力ある人しかできない割に先駆者がいるというジャンルなわけです。なんとか差別化を図ろうとしても比較元が完成されすぎていて劣化になりやすく、なら王道以外の邪道を! となるとならVRより異世界の方が制限緩いし好きにやれるじゃんという帰結になってしまう。この辺がVR物が減った理由かなぁと思っています。まあすごいざっくりな上にそこまで考察しきっているわけでもないので怪しいのですけど。

 とまあ関係ない考察を垂れ流した所で小説の感想へ。この小説、インフィニットデンドログラムはVR物に能力バトルの骨子を組み合わせたものだと勝手に思ってます。

 なぜかというと主人公たちゲームのプレイヤーはログインしたときにエンブリオというモノを渡されるのですが、このエンブリオは本人のパーソナリティを読み取って自分だけの能力を発現させます。

 いいですか、自分の個性から自分だけの能力ですよ! 自分の属性は何か、自分に能力が生まれるとしたら……男子の皆さん、一度は考えたことがあると思います。この設定はとても絶妙でキャラ達のバトルや物語を見ているうちに勝手に登場人物への理解が深まります。

 その上にVRというゲームの枠組みを丁寧に描写し、膨大な量だろう設定も矛盾なく、そして魅力的に描いています。能力バトルにゲームの設定ですよ。そりゃあ相性百二十点満点です。私も自分のエンブリオはなんだろうなぁなんて考えちゃいましたよ。発芽しないようにしてた中二病の種が芽吹きかけました。

 総評すると『皆誰もが考える妄想をちゃんと物語の体裁に落とし込んで高いレベルで描写したVR物』となります。ついこないだアニメ化が発表されましたがそれも納得です。

 わくわくできる王道ライトノベルを読みたいって人には特におすすめです。

 

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