オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【ネット小説 紹介】コスパ厨のアラサー男、嫁の不倫とリストラを機に子供部屋おじさんになる 〜税金対策に週三でダンジョン潜ってたら脳筋女子高生とバディ組んだ話〜

「知りたくないか? 労働ゼロで手取り月35万稼ぐ方法」(第4話より)

 

宇津美京介。30歳。既婚。子供なし。某大手企業勤務。年収850万円。
順風満帆な人生を計画通り歩んでいたはずが、嫁の不倫とリストラによって、それはあっけなく崩壊してしまう。

やむなく実家で子供部屋おじさんとなった宇津美には纏まった財産があった。
元々の預金、間男から受け取った慰謝料、割増退職金、マンションの売却代金。

しばらく無職でもいいかな? と思った彼だが、一つ問題が発生する。
それは税金。
一時に大きな収入を得てしまった彼には、この累進課税制度の社会では理不尽なほどの税金が課せられてしまう。

虎の子の財産を失っては快適な寄生ニート生活が維持できない! そう思った彼は一つの制度に目を付けた。
ダンジョン冒険者ライセンス制度。
5年前、突然世界中に発生したダンジョンにはモンスターが跋扈するが、金やダイヤ、レアメタルに加えて謎のマジックアイテムなどが眠っており、ライセンスをもって探索・戦利品を国に納品する冒険者に対して各種課税優遇政策が施行されているのだ。

もちろん宇津美は一切リスクを取る気はない。
安全圏内での最低限の活動実績確保のみを目的にダンジョンに週三で潜る日々。
しかし、そこで若干17歳にして5人の家族の生活を一身に背負って戦う少女、及川真理と出会う。

子供のような大人の男。大人のような子供の女。この出会いが何を変えるのか、宇津美はまだ知らない。

【第1回ファミ通文庫大賞最終選考作品。13 / 2391】

 

 

おすすめ度☆☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 この小説は現代ファンタジーです。上の本編概要で紹介がきっちりしてるのであんま説明する必要もなさそうですが、一言で言えば現代でダンジョン出来たので攻略して成り上がりって感じです。すごい大雑把に言えば。

 成り上がりと書いてはいますけど本質的には現実問題への爽快感ある回答というのがメインな気がします。エンタメって感じですね。この小説もなんですが、ちゃんと仕事やってきたけど突然リストラに対して見返すためにダンジョンへ! という流れ、結構よく見ます。そういうのってダンジョンに傾倒しまくってダンジョン以外は強くなった主人公をヨイショする舞台装置化するみたいなのが多いんですが、これはしっかり元いた場所への葛藤なんかも書かれてて世界が広くとってもいいです。

 こういう成り上がり物ってこうはならないだろってツッコミが結構あったりするじゃないですか。この小説だとそういう部分が少なくて、こういう要素に対してこうなってほしい! みたいな読者の要望(この小説だと対象としては男性20歳より上あたり)を全部綺麗に叶えつつ、ストーリーラインが崩れてないのでかなりすごいです。

 読者層の想定が出来ていて、その欲しいものがちゃんとあるってことは面白いに決まってます。熱いところは熱いし、大体にちゃんとした理由があって淀みないのが素晴らしいです。

 ただ一つだけ。タイトルの詰め込みや小説序盤のネット用語の乱用みたいなのがちょっとなーと思いました。物語として伝えるべきものは作品の中で十分と思うので、タイトルやらネット用語で媚びても、ウケるのは一部しか重ならない違う層なのではないか? なんて気持ちがあります。少なくとも自分はブラウザバックするか悩みました。

 とはいえそれ以外の部分にはケチのつけようなく面白かったので、そんなの気にしないって人にはめちゃくちゃお勧めです。というかその辺ちょっと……って思っていても読む価値あります。

 

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889544428