【ネット小説 紹介】少年Z
両親の居ない一軒屋で血の繋がらない美少女三人と同居する何処にでもいる普通の高校生、田辺京也。
そんな彼の進路志望は引き篭もり。だって、世界にはゾンビが溢れているんだもの。
ゾンビは人間のお肉に噛み付くのが大好きで、人間を見つけると全力疾走で抱きついちゃう。
扉や窓もなんのその。鋼鉄のバリケードだって、歪んで壊れるまで叩いちゃうぞ♪ 愛が、重い。
ゾンビと美少女と少年の織りなすドタバタのラブコメディ。の、裏側の物語。
おすすめ度☆☆☆☆
(おすすめ度 指標
☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説
☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説
☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ
の目安で付けています)
この小説は現代ファンタジーです。一言で言えばゾンビサバイバル物ですね。本文紹介のとこに書いてあるようなふんわりした雰囲気はなく、リアリティある主人公の戦いが描かれています。
個人的にはあんまりゾンビサバイバル物を好きで読んでたりはしないんですよね。ファンタジー畑で育った人間なのでメカとかもそこまで。なのであんまり経験がないんですけど何が面白いのかはそこそこに分かってるつもりです。
基本的にサバイバル物って二つの方向性があると思うんですよ。一つは取捨選択により起こる人間ドラマを軸にした物。もう一つは文明崩壊による主人公のサバイバルを中心に描く物。前者はドロドロしがちでサスペンス的要素が高く、後者は冒険的要素が強いですかね。このどっちかがメインテーマに据えられやすい。
これにゾンビという要素を合わせるわけですから最終的にはストーリー上でゾンビを関わらせなくちゃいけないわけです。文明崩壊の舞台装置として使うならともかく、人が化け物になるって要素を使わないならなんでゾンビって題材選んだの? って感じですからね。
どちらの方向性でも最終的にはゾンビ化の謎に迫り、主人公たちの生活が新たな展開を迎えて終わるってのが鉄板かと思います。大まかに言えば。
基本的には前者がゾンビサバイバルとしては主流だと思うんですが、ゾンビによるじひっ迫した状況でのドキドキの判断が売りなわけです。サスペンスですね。それでまあ個人的にはサスペンスがあんまり好きじゃないので好んで読んでないと。そう言うわけですね。なんでサスペンスが好きじゃないかというとドキドキしたくないからです。小心者なので心臓に負担をかけるとすぐ破裂してしまいます。
まあそれはさておいて。
この小説は基本的にはZと名付けられたゾンビ達、それに伴うゾンビパニックに精通している主人公が周りの人間を助けるためにいろんな状況を切り抜けるために奮闘するといった感じです。主人公の一人称で進むこの小説はファンタジックなところはなく、極めて現実的に物事が起こり、そして現実的にそれらに対処していきます。
ゾンビ発生時のシュミレーション、社会の動きから極限下での人間の動きまできっちりと詰めて描いているのがすごいです。特徴的なこととしてモブがおらず、皆作中の人間として成り立っていることです。読んでる最中、小説読んでるのに人間の嫌なとこがよく見えてきて嫌だなぁと思いました。(これは誉め言葉ですよ? おかげで好きなキャラが一人しかいません)
それらが生むリアリティはとても高く、かなりの重さがあるわけですがそれを主人公の軽快な一人称が緩和しています。そのおかげで中身の重さに反してサクサク読むことができます。
始まり方は粗い感じですし、終わり方は少し急いだかなぁと思う部分もありましたが、タイトルから中身に一貫したテーマを見事にまとめていてすばらしいですね。ゾンビサバイバル物としてとてもよくできた小説だと思います。こういう小説が好きな方には是非お勧めします。