【ネット小説 紹介】ハルジオン~口だけ野郎一代記~
春風紫苑は己を愛している。否、己しか愛していない。
己を良く見せることにだけ全霊を注ぎ、全力で口車を回している。
その結果として僕っ娘メンヘラやメンヘラロリに目をつけられるのだが、口車は止らない。
これは自業自得の物語である――――そこには一切同情すべき点は無い。
膨れ上がる虚像、加速するメンヘラ。さあ、道化芝居を始めよう!
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2015年2月19日、第一部完結。
2015年8月9日、本編完結。
おすすめ度☆☆☆
(おすすめ度 指標
☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説
☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説
☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ
の目安で付けています)
完結済み。この小説は勘違い物ですね。能力低めの主人公が意図せぬ狂言回しで持ち上げられていくというジャンルです。web小説には結構見かけるジャンルで私は好きでよく読みます。
この小説は能力は決して高くない主人公が、その場その場で的確な対応を常にし続けることでどんどん持ち上げられていくのですが、一般的な勘違い物とは決定的に違う部分があります。
普通、勘違い物は主人公が意図しない方向に話が転がり、そして高い評価を得る、もしくはその布石になるのが基本です。周囲からの評価と本人の能力のギャップの落差が魅力なので、主人公が周囲の評価を自分で意図しているのならそれは普通に能力高いですからね。ギャップが薄くなってしまいます。
この小説の場合、主人公は内心以外でボロを出しません。内心でどう思っていようが周囲への対応は完璧でそれを主人公がたいていの場合、意図してやっています。その場合、先に言った通りギャップが薄くなるわけですが、それを誤魔化すためにこの作品は強烈な地の文を使っています。
勘違い物では周囲の評価と主人公の認識の差によってツッコミ役が不在になるので基本的に地の文がツッコミを担当するのですが、それだけだと大変なので主人公がボロを出すことで他に主人公のポカに気づきツッコめるキャラを作ったり、特定部分で主人公が周りを客観視できるようにしてツッコめるようにしたりします。
しかしこの作品ではそのようなことがないので地の文がツッコミ用の第三者のような存在になり、心情描写の段階で強烈に自己主張してきます。普通の情景描写が続いた後に主人公の心情に対して「ってなんでやねーん!?」ツッコんできます。突然地の文の中から知らないキャラが出てきたような感覚。内心どうあれ主人公は超人なのですが、それを心情描写のみを見てツッコみ、これが頻繁に起こるので個人的には正直苦痛でした。
しかし後半に行くにつれ、地の文のツッコミはおとなしくなっていきます。他人の意図を見抜いてそれに対して的確に返す主人公はまさしく超人であり、周囲の反応と地の文の認識が一致し出すからです。地の文で引っ掛かりまくり、するすると読めずにいましたが第二部のあたりからスムーズに読めました。
キャラクター造形や世界観は、現代ファンタジーバトル物として穴はあるもののきっちりと練られていてとても完成度が高く、それが引っ掛かりつつも一部を読めた理由です。ストーリーラインも早足ながらしっかりとしていて、特に終盤の完成度は非常に高く、地の文のストレスから解放されてからは後は一気に楽しめました。
私のように地の文の統一性を気にならない人にとってはかなり楽しめる作品なことは間違いないでしょう。試しに数話読んでみて自分に合いそう! と思ったならば迷わず読んでみることをお勧めします。