オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【ライトノベル 感想】86―エイティシックス―(と電撃文庫について)

サンマグノリア共和国。そこは日々、隣国である「帝国」の無人兵器《レギオン》による侵略を受けていた。しかしその攻撃に対して、共和国側も同型兵器の開発に成功し、辛うじて犠牲を出すことなく、その脅威を退けていたのだった。
そう――表向きは。
本当は誰も死んでいないわけではなかった。共和国全85区画の外。《存在しない“第86区”》。そこでは「エイティシックス」の烙印を押された少年少女たちが日夜《有人の無人機として》戦い続けていた――。
死地へ向かう若者たちを率いる少年・シンと、遥か後方から、特殊通信で彼らの指揮を執る“指揮管制官(ハンドラー)”となった少女・レーナ。
二人の激しくも悲しい戦いと、別れの物語が始まる――!
第23回電撃小説大賞《大賞》受賞作、堂々発進!

 

おすすめ度☆☆☆☆(☆)4.5

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 今回は珍しく商業ライトノベルの感想です。ここ数年くらい、ほとんど手を付けてなかったわけですが、流れてくる評判が軒並み高評価だったので買ってきました。基本的に評判いいものは触ってみるというのが基本方針。とりあえず一巻を読み終わったので、その感想でも。

 まず読んでて思ったのが”電撃っぽい”ってことです。この作品は電撃の《大賞》受賞作なわけですが、電撃で受ける作品は割と共通していて、世界観をがっつり組み立て、その上に成り立つ心情描写、美しいストーリーラインです。キャラ物はウケがよくないですね。王道というのが相応しいですが、それだけ実力がある作家を拾ってきた方が先の展望がいいという方針なのでしょう。純粋に作家としての腕で判断している感じがライトノベル出版の中でも最王手しかできないよなぁと思わされます。

 キャラ物だとまぐれ当たりがあったりするものの、安定性に欠けますし。まあここ数年書籍をほとんど買ってない私の古ぼけた考察ですが、電撃小説大賞に限っては間違ってないと思います。たぶん。

 というわけで私が言う”電撃っぽい”はそれだけ完成度が高いって意味ですね。世界観を創りこむこの作り方は世界観に読者を引っ張れないと「重くて読めない~~」ってなりがちなので、それを筆力で解決している感じが素晴らしい。世界観を創りこむほどそこに住まうキャラクター達も現実臭くならざるを得ないのですが、その上で魅力を放ってます。

 この作品はメカやSF物の要素もあり、りゅうおうのおしごと! なんかも担当しているイラストレーターの方を採用されていて、え? メカも描けるんですか!? と思ったのですが、メカの方は別の方が採用されていて納得。昔記事に書いた「SFラノベはキャラとメカデザインを両立しないといけないから大変」というところをそつなくこなして、その上人気イラストレーターを新人に宛てる訳ですからやっぱり電撃は体力あるなぁと思いました。

 というか電撃文庫の感想になってるわけですが、まあ毎記事こんな感じに脱線してるのでいいかと思ったり。そもそも内容に触れるとネタバレになるので大筋だけ伝えてどこがいいのかを書くとなるとこういう風になるんですよ。仕方ないと言えば仕方ない。

 とまあ脱線しましたが完成度が非常に高く、高評価も《大賞》も納得の出来でした。多分続きも買うと思います。少なくとも読んで後悔はしないと断言できます。おすすめです。

 パッと思いつく感じだと異修羅も錆喰いビスコもリビルドワールドも電撃の系譜なのでまだまだ電撃が王者なのは続きそうですね。

 

 

 

86―エイティシックス― (電撃文庫)

86―エイティシックス― (電撃文庫)