オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【小説紹介と雑談】暴食妃の剣とweb小説のゲーム的表現

 

タイトル:暴食妃の剣 感想

貧しい者は真っ当な武器を持てず、命を懸けて戦おうとも、冒険者として大成することはできない。
 三流冒険者ディーンは、魔獣と戦うことよりも荷物運びや魔獣の解体などの補佐に徹する《運び屋》として貧しい生活を行っていた。
 あるときディーンは雇い主の男の判断ミスによって魔獣の群れに囲まれる羽目に陥ったばかりか、魔獣の気を引くための囮にされてしまう。
 しかし、偶然逃げ込んだ先で、膨大な力を秘めた暴食の悪魔の心臓を手に入れる。暴食の悪魔の心臓は、喰らった相手の力を奪う能力を秘めていた。
 ディーンは相手を喰らうことで無限に成長する暴食の魔剣を手に、一流の冒険者となることを志す。

 

 

おすすめ度☆☆☆(☆) 

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 この小説はハイファンタジーの冒険活劇ですね。うだつの上がらなかった主人公がある時、すごい力を持った悪魔の助力を経て相手のスキルを強奪できる魔剣を手に入れ、そこから成り上がっていくという感じです。ハイファンタジーではありますが作中世界だとスキルという要素が当たり前に存在しているので、その辺はやはりゲーム的……というよりweb小説ゲーム物的と言うべきでしょうか。

 こういうジャンルの小説だと一足飛びに強くなっていき、周りの人間をあっという間に追い抜かしてカタルシスを得るみたいな展開が多いわけですが、この小説ではあくまで魔剣を手に入れたことはきっかけであり、強敵に苦戦しつつもそれに勝利し力を手に入れ、そしてまた別の強敵……と地に足付けて強くなっていきます。いや、まあそれでも成長速度は普通に考えればやばいんですが、成り上がりの要素を含む物語だとこれくらいでも十分に丁寧に感じます。

 スキル的なわかりやすい成長要素とその成長があって立ち向かえる強敵たちとの熱いバトルがこの小説の魅力ですね。成り上がり的な要素と冒険活劇の二種類。

 この小説でもそうですが、昨今見かけるハイファンジー小説で冒険メインとなるとかなりの割合で見ることになるスキルという要素。実際のところ分かりやすく成長を見せられ、説得力もあるのですごい発明なんだなぁと感じます。

 多分これが流行ったのはVRゲーム物のようなゲームを題材にした物が流行ったからというのが理由の一つな気がします。その流れで「あれ? これTRPGのスキルシステムとの方が相性良くね?」という気づきがあり、TRPG的な表現の仕方が流入しているといった感じな気がしますがどうなんでしょうね。

 ステータスやスキルなんて要素は浸透してはいますが、その表現なんかはかっちりしてるわけではないですからね。しかしながらスキルやらステータスと言われた際に、ゲーム的ではなくTRPG的な表現の方が多くなってきたのは確かだと思います。

 最初期はMMORPG的な表現が多かったわけですが、今MMORPGは下火です。理由的にはいろいろあるんですが、少なくとも今あるMMORPGだとよく見る小説の描写にそぐわないわけです。ああいうスキル性の凝ったMMORPGやりたい……。

 そうなるとスキルなんかの要素は使いたいものの、読者に馴染みがなくなってしまう。その辺の兼ね合いもあって比較的シンプルなTRPG的な表記が流行ったのかなぁと。まあこの辺り意識して書いてます! って人の方が少なそうではありますが。まあ真相はどうかわかりませんが、面白い変遷ではあります。

 とまあ小説の話しに戻りますと、もうこの小説は書籍化されています。少し粗はあるもののRPGのような没入感と冒険活劇はやっぱり面白いですね。そういうのが好きな人にはお勧めです。

 ではまた。

 

kakuyomu.jp

 

 

暴食妃の剣 感想