オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【小説紹介と雑談】『異世界クイズ王 ~妖精世界と七王の宴~』と同じ土俵で戦い、それでも一位になる方法

かつてクイズ王と呼ばれた男、ユーヤこと七沼遊也。
彼が目を覚ましたとき、そこはクイズと妖精が支配する世界、ディンダミア妖精世界であった。

彼を召喚したのは小国の姫、エイルマイル。
この世界で、七つの国の王が競う巨大なクイズ大会が開かれる、それに出場してほしいと告げられる。

しかしユーヤは困惑する、言語は通じるものの、異世界の知識などまったく持っていなかった。
そんなとき、ある人物から決闘を申し込まれる。果たして経験と技術だけを武器に、異世界で勝ち抜くことができるのか――。

 


こんな方にオススメです

・クイズ番組が好きだった方
・クイズに興味がある方
・クイズにガチで取り組んでいる方
・「おいおい、異世界でクイズなんかできるわけないだろ」と思った方

 

おすすめ度☆☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 どうも、私です。月日の流れが早いというか、ff14にハマりすぎているというか。気づいたら記事更新をしていない期間が結構長くなってたのでこりゃいかんと書きに来たというのもあるのですが、今回紹介する小説が純粋にすごいと思ったのが割合としては大きいです。

 この小説、『異世界クイズ王 ~妖精世界と七王の宴~』は題名の通り異世界でクイズ物するって話です。クイズというのは基本的に問題を出し、それにこたえるという形式をとる以上、その世界に基づいた知識が前提となってくるわけです。それを現実を基盤にした場所以外でやるというのはかなり難しいことだと思います。異世界に自然な問題を出した場合、私たちに取っては全くもってわからないものになってしまうので、それをいちいち説明していくというのは本筋から離れてつまらなくなりがちです。私としてはタイトルやあらすじを見てまたアイデアだけの見切り発車っぽいなーと読む前は思っていました。

 しかしながらこの小説はそんな予想を見事にぶっちぎってくれました。一度熱中したら飽きるまで他の事を全くやらなくなる私がこうして紹介をしようと思うだけのパワーがありました。

 クイズという物がその世界の知識に基づいたものであるというのは先にも述べましたが、皆さんも感覚的に理解していると思います。ンベラ星人が好物のノミュイスタはマグマの中で取れる木の実ですが……とか書かれてもわかんないです。ちなみにこれは今私が適当に考えただけです。

 そのような読者に対して説明をしなければならない異世界においてクイズをするとなった場合、一つだけ共通しているものがあります。それは人間の反応です。異世界と言ってもこの小説でやっているのは人間同士のクイズ勝負です。その世界の知識という大きな共通項が抜け落ちてしまっている中で、クイズに対しての人の反応をこの小説は鍵としています。

 なんでもそうなのですが、特に何か対人相手の技術を極めようと思った時に、その物事に当たった人の普遍的反応に対して有利を取る技術というのが存在します。それはそのジャンルにおいて前提を備えているのが当たり前になり、道具的な工夫の要素がなくなった時に出てきやすいものです。

 対人ゲームが分かりやすいと思うので例を挙げます。対人ゲームのトップ層というのはその時点で最強と呼ばれている装備だったり、この行動にはこの行動をするのようなテンプレートを完全に網羅している存在です。そうやって能力的に差が付かなくなった集団の中でトップを目指そうとするならば、そのような前提を抜けた場所での工夫が必要になってきます。それは時には普通のプレイヤーには全く関係のないことであり、そんなの大したことないと思われる程度の差しか生まないこともあります。しかしながら皆が一様に努力し続けて並び立った集団の中で、その上一歩抜き出すにはそのような技術がものすごく重みを持つのです。スポーツや競技などを真面目にやったことがある人ならば納得しやすいと思います。

 この小説は異世界でクイズ物を通してそこよりも深い、上で述べたような対人の競技においての努力についてアクセスしていくようなそんな中身だったのです。それはとても普遍的で、しかしながら努力をし続け、辿り着いたものにしか語れないような工夫です。作者の方は競技クイズの世界にどっぷりと浸かっていたのだろうなと思わせるような知識の幅でした。これをクイズ全くやってなかったけど下調べしまくって書いたよ! って言われたらそれはもう宇宙人ですよ。

 その上でまるで情景を見てきたかのような描写と関わる要素の多さで言えば驚異的ともいえるストーリーのまとめ方といい、作者の方の力量に感嘆しました。

 しかしながら作中でも主人公が述べていますが、クイズという物が大衆の娯楽という世間の前提がある以上、深く競技的な深層に潜っていくのに大衆的な共感は得られません。この辺りの王道感の喪失や切り良くまとめたせいなのか、少し謎が浮いたままになっている終わり方も考えておすすめ度は4にしています。

 しかしながらこの小説で使われてる技量というのは私が今年呼んできた小説の中でもトップに食い込みます。トップですと言い切れないところが今年(私が読んだ年なだけで連載年はあれですが)の豊作ぶりを表してる感じがしますね。

 とまあ長々と語りましたがとても面白く、すごかったので読んでみてはどうでしょうか。切り良く終わっていますし、題材もクイズと取っつきやすいので読みやすいと思います。競技的なことをやっていたよ! って人には特におすすめです。

 

 

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