オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【小説紹介と雑談】『異世界職業図鑑』と長編の難しさ

異世界経済物語(小説家になろうの方でも共通世界観の「少年冒険者の生活」を連載中)

■20200630 本編完結済

 

おすすめ度☆☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

※R18です

 

 この小説はファンタジーの群像劇です。一つの異世界で繰り広げられる数多の物語を章ごとにフォーカスする人物を変えて描いています。なんか堅苦しくなりましたが、本編的には結構な割合でギャグ的なシーンが混ざってくるのでサクサク読めます。あとこの小説、R18なので結構あけすけな表現が出てきますが、あくまでメインは物語になります。

 しかしながらサクサクは読めるんですが、すぐ読み終われはしません。これは前の記事から更新が遅れた理由にも直結してるんですが、この小説、めちゃくちゃ長編です。話数は1000を超えて文字数で言えば730万文字! 参考にライトノベル一冊は約10万文字です。今まで読んできた続き物で一番長かったと思います。読むスピードには結構自信のある私ですら3週間以上かかりましたからね。読み終わってから記事書こうと思ってたらかなり時間が経ってしまいました。あんまり小説読まないって人だったらこの一作読み終わるのに一年かかるとか普通にあり得そうです。

 この小説のすごいところはこの大長編にもかかわらず、中だるみが見当たらず、終わりに至るまでどんどんと盛り上げていき、きちんと完結して見せたことです。編ごとの終わりが物語へと収束していき、一本の線に繋がっています。これは本当にすさまじいことで、これだけの長編を綺麗にまとめるにはその場その場で書いていては絶対に無理です。もちろん厳密に考えていなかった部分は多々あると思います。しかしながら書いたところから展開を組み立て、それを綺麗に着地させる作者さんの構想力には飛びぬけた物があります。

 基本的に小説は読めば読むほどこの展開になったらこうなるだろうなーという予測がつくようになります。これをテンプレと言うか必然性と言うかはともかく、これを外して読者を納得させるのは非常に難しいことです。

 しかしながらこの小説ではこの非常に難しいことを何度も成功させてきます。筋で読んでいると外され唸らされること多数。これもこの作者さんの構想力を裏付けする物でしょう。個人的にはやっぱり蜘蛛の糸編が一番好きですね。

 話自体のクオリティも非常に高く、完結していることもあってこれだけの長編でもガンガンお勧めしていきたいところなのですが、しかしながら人によっては合わないかもという部分もあります。

 基本的に物語というのは不快なキャラクター(ここでの不快は一般道徳に反す立ち振る舞いのキャラ)は登場を減らすべきです。誰だって不快な者を見たいとは思わないはずです。しかしながら古今東西色んな物語では”悪者”が出てきます。そんな”悪者”がなぜ出てくるのかと言えば、それは基本的に免罪符的な話となります。このキャラクターはこれだけの悪行をしたのだから何かに裁かれるべきという理由で打ち倒されてもらうわけです。主人公が何もしてない人を打ち倒したら主人公が不快なキャラになってしまいますから、免罪符が必要なのです。公平世界仮説ですね。

 なので”悪者”は打ち倒されるために必要なカルマポイントが溜まったら素早く退場させるのが基本です。まあ何事にも例外はありますが、それは例外足りうる要素がそろった時のだけです。

 この物語では長編であるがゆえに”悪者”にも長く活躍があり、悪行の報いが起こるまでに結構な時間差があります。そのせいでこのキャラきついよーとなる描写は結構続くことがあります。最序盤のヒモの章はその最たるものです。自分はここで一回読むのやめようかなってなりました。この辺りを耐えられないと厳しいかもしれないですね。ちなみになんですが、この理由で私はリゼロを読み進められなくなりました。主人公がめちゃくちゃするので……。

 非常にクオリティが高いこの作品がそこまで有名になっていないのはR18の検索の壁と上記の壁が大きいのかもと勝手に思っています。あとは全1178話の圧。

 しかしながら食わず嫌いするのはもったいない作品なので皆さん読んでみてほしいです。おすすめです!

 

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