オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【小説紹介と雑談】『子豚ちゃんな私は、この世界では超美少女らしいです。』とルッキズム

私(♀)には、日本という国で女として生きていた前世の記憶がある。どうやら転生者というやつらしい。転生先のこの世界と地球には、当然多くの違いがあるけれど、最大の違いは美的感覚だと思う。なんせ、私の価値観では不細工子豚ちゃんな見た目の私が、こちらの価値観では傾国レベルの超美少女らしいのだ。そんな私が、私基準ではめちゃくちゃかっこいい虎獣人の男性に出会って、押せ押せするお話。
本編は全十七話、プラス番外編いくつか。男女両方の視点から話を書いているので、場面の重複があります。

 

おすすめ度☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 この小説は美醜逆転物の恋愛小説ですね。元の世界だと虐げられているような見た目の主人公が持て囃される世界にて、元の世界では価値のあるとされていた見た目の相手が虐げられているのを見て、その相手に恋に落ちるみたいな話です。まあ美醜逆転で恋愛物って言ったらこれしかないような気もするんですが。

 元々美醜逆転というのは容姿が優れていない自分がどうしたら愛されるようになるのかを妄想していったら出来た要素だと思うんですが、個人的にはなかなか複雑だなと思います。

 現実では多かれ少なかれルッキズム、つまり容姿によって評価が左右される場面があるわけです。こと恋愛関係においては一番多いかもしれませんね。努力の多寡はもちろんあるでしょうが、容姿に恵まれる/恵まれないというのは確実に存在します。

 その上で恵まれない容姿である人が逆の立場になったらというのが美醜逆転物なわけですが、結局のところ立場が逆になっただけで仕組み自体は変わっていないというのが悲しいところ。ルッキズムに虐げられてきた人がルッキズムで支配する側に回るという構造。すごく嫌味な風に言えば逆転世界で虐げられている相手(つまりイケメンや美女)に主人公が手を差し伸べれば自分たちが支配層なら虐げられた人間も認めて上げれると示せます。

 現実では自分の身体の価値を社会が勝手に決めて、それに応じた対応を周りがしてくるというのは覆しのないようなことで、例えば自立すれば整形などの対応もできなくはないですが、子供のころに受ける周りからの評価は人格に多大な影響を与えますよね。何とか出来るようになった頃には癒えない傷がついていることもあります。

 そんな中で心が綺麗なら……みたいな綺麗ごとは通用しないとは言いませんがほとんど力がないのはそんな経験をしてきた彼ら/彼女らにとっては明らかであって、そういう時にこういう美醜逆転物が助けになるのかなぁなんて思ったり。そんなことを考えながら読んでました。

 まあこんなどうでもいいことを考えながら読んでいる人はいないでしょうし、普通にこのジャンルとして面白く読めたので興味がある方はいかがでしょうか。

 

 

 

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