オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【小説紹介と雑談】『Babel』と世界観構築の性別差

★ 電撃の新文芸より3巻まで発売
大学1年生の水瀬 雫(ミナセ シズク)は大学からの帰り道、ある日おかしな穴に遭う。
穴に吸い込まれ放り出された先は、見たこともない異世界だった。
魔法が当たり前の世界に困惑と共に降り立った彼女は、帰る方法を探す為旅に出る。
隠された大陸の真実。言語と変革にまつわる物語。
歴史に残らぬ少女と魔法士の旅路が、今始まる。 ※自サイト転載。《memoriae 1960~1961年》
本編完結済み・番外更新中。 

本編あらすじより

 

おすすめ度☆☆☆☆(☆)

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 この小説は異世界に転移してしまった学生の主人公の少女が、異世界での出来事で精神的に成長していくハイファンタジーです。書籍化済み。

 内容としてはきっちりとした世界観にそこに根付く人々を通じたエピソードによって主人公である雫が成長していく感じなので、チートや無双などといった自身の能力を上げて世界に価値を示すような物というよりは、どのように世界に馴染んでいくかを描いたものですね。

 主人公の心情や異世界の情景などが三人称による少し硬めの文章で語られて行くのですが、その表現の仕方が分かりやすく簡潔でとてもスムーズに読み進めることができます。

 かといって感情移入しにくいかといえばそんなこともなく、少し離れたところから描かれる視点からでも登場人物の感情の動きが伝わってくるような、そんな文章です。すっきりと読めてしっかり感情移入できるので主人公の成長物語にとても合っています。

 物語で成長を描くとなると主人公はまだ成長の余地を残す子供であって、成長すべき事柄に対して自分一人ではそれに気づくことができません。それを外界からの刺激によって成長するわけですが、一人称で描くと主人公の性格にもよりますが結構まとめずらいことになるのは想像に難くないので、基本的には三人称で描かれることになります(青春小説とか)。

 しかし三人称はどうしても神の視点になるわけで、心の動きからは離れてしまいがちになるので、それをうまく描写できるかは作者さんの技量にかかっています。この辺りをしっかりとこなして高い水準でまとめてるこの作者さんはとても素晴らしいですね。

 この辺の話しをちゃんとしてるとめちゃくちゃ長くなるので結構端折りましたが要するにこの小説はすごいということです。気が向いたらちゃんと書こうかなって気持ちがあります。

 それはともかく、とてもおすすめの小説です。どちらかといえば女性向けですが、男性も楽しく読める完成度の高い小説です。本編は完結済みなので安心して読めるのも魅力。

 

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 ここからは雑談ですね。話題は世界観の作り方から作者の性別が結構わかるよねみたいな話しです。

 主観なんですがこの小説で見られるように世界観を先に作って(あって)そこに生きたキャラを住まわせるという物語の作り方が結構女性の作者によくみられる気がします。前に記事にした本好きの下克上とかもそうですね。存在させたいシチュレーションが有った場合、世界観に合わせてキャラクターが作られている印象。最近の漫画で言えば鬼滅の刃とかもそうですよね。鬼がある不条理な世界観が先にあって、そこで産まれた人が足掻く。世界が先にあってその後にキャラクター。他にも私が読んだことがあるので言えば十二国記シリーズや彩雲国物語なんかもそうです。

 こういう作り方というのは作者の知識や技量がめちゃくちゃにモノを言います。キャラクターは作者の引き出し分しか大きくはなれないので、作者が世界観設定や人間心理についての理解が浅かったりすると違和感がモロに出てしまいます。なのでこういう作り方をしている(一般向けの)女性作家さんは名作か視界に映らないかで二極化してる気がします。まあ私が知らないだけかもしれませんが。

 男性の作者の場合、出したいキャラクターがいてそれに世界観を後付けする感じが多いです。キャラクターが主で世界観が従。この場合、好きなキャラクターがいれば刺さる層がいるので、世界観がきっちりしてなくても割と目に付く回数が多い印象。

 この辺は全部主観な上にすべてに例外がたくさんいますが、大雑把にはこんな感じの印象を受けてます。他にも判断基準はたくさんあるのですが、その辺まとめると普通に別の記事にした方いいのでここではまとめません。気が向いたらまとめるかも(記事内二回目)

 ここで勘違いしないでほしいのが、男性だからこう、女性だからこうと切り分けてるんじゃなくて、小説内でキャラや世界観がどういう扱いを作者から受けているのかを考えて、そうしたバックグラウンドを想像するとこういう考えからだから性別はこっちなのでは? という感じで捉えてるだけです。男女の違いがこういうとこに出るのが興味深いと勝手に思ってるだけなのでレッテル張りしているわけではありませんよ!

 なんか脱線しそうなのでこの辺で。