オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【小説紹介と雑談】『奥多摩個人迷宮(プライベートダンジョン)~浸食してきた異世界迷宮』とローファンタジーのダンジョン物

奥多摩で家業のコンビニを手伝う高校生、山岸恭二はある日、店内で《浸食》の影響によって大けがを負う。
救急車で搬送された病院で魔法によって回復した恭二は、何かに誘われるように<浸食の口>に飛び込んでその先で迷宮を発見する。
現代世界に突如現れたダンジョン。そして浸食の口からあふれ出す魔素《マナ》によって魔法使い達、そして新しい職業『冒険者』が誕生する――。

ダンジョン内でドロップする素材を現代科学に利用して、新たな産業が生まれ、世界は徐々に「冒険者」という職業に理解を示していく。

 

 おすすめ度 ☆3.5

 

 この小説はタイトルにあるように現実に異世界からのダンジョンが出てきたよーというローファンタジーですね。この小説の投稿自体は2015年で結構古いのでその頃の流れとしては割と新しめのものでした。今だと結構このジャンルは開拓されちゃってそこまでポンポン出てくるって感じじゃないですね。

 内容としては割とリアルよりで進む感じで、ダンジョンから手に入れた素材、技術をリアルで活かしてく見たいな方面に進んでいきます。そのストーリーならこういうのが欲しいよねって言うのが大雑把ながらも詰め込まれていて面白く読めますね。

 文体も取っつきやすく、すらすらと呼んでいけるのでこういうのが好きという人はおすすめです。

 

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 それでまあここからは雑談なんですが、現実にダンジョンできる系の奴の話です。

 この小説や前紹介した『Dジェネシス』もそうなんですが、結局そこで出てきた新素材をリアルでの有効活用にもっていこうってなると流れがテンプレートと化しちゃってあんまり目新しさがなくなっちゃいますよね。

 リアルのマクロ視点で見ると突然自分が石油王のような戦略物資を好きに扱えるようになったって話になってしまうわけで、それを狙う国家の圧に対して自身の武力(+自信を早期に認めてくれた国からの圧)によって対抗するという流れがテンプレートになりますよね。というかそうならざるを得ないですよ。それが自然。

 内容がリアルでの立身出世のほうに傾くとダンジョンは自分だけが使える新物資供給施設になってしまいがちで、そこからの世界の動きというのは割と決まった流れになりがちなんですよ。

 その資源を狙ったアメリカは実は宇宙人に乗っ取られていてその物資を狙ってアメリカエイリアン連合軍が外交と武力の両方で攻めてくる! みたいな予想を飛び越えてくるような展開にしづらいんです。いや、この例えはちょっと見たいですがそれはいいとして。

 リアルでの立身出世をこういうダンジョン物で行うと最終的なゴールは世界中の権力者に認められ、主人公が動くだけで世界に大きな衝撃を与えかねない人物になることだと思うんです。

 それでまあ既存権力の側を予想を飛び越えていく空想の産物にしちゃうと、途端にリアルでダンジョン資源から固めた地位まででがあやふやになっちゃうので厳しくなるんですよね。

 真実の中に嘘を混ぜてるからそれが本当に見えるのであって嘘ばっかの泥団子を鉄の塊に見せるには大変な労力がいるのです。

 他のジャンルならそれだけに注力して描写範囲を狭めるとかで何とか出来たりもするんですが、立身出世だとかかわるものが大きくなるので描写の係数も大きくなってそれを嘘で塗り固めるとマジで大変になりがち。

 結局何が言いたいかというと描写大変だし、テンプレの流れを変えるにはめちゃくちゃ難しいストーリーにリアリティ持たせないと面白くないから最近はあんまり出てこなくなったのかなぁということですね。話が長い。