オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【小説紹介と雑談】『Garden of Clockwork』とSCPの話し

VRMMO。深淵に臨む。

 

 

おすすめ度☆☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています) 

 

 

 先に言っておきますと今回紹介する『Garden of Clockwork』はもう3年以上更新がないので、正直続きが書かれる可能性は低いことを述べておきます。それでも紹介する理由は面白いからです。というか個人的には未完結であろうが、それまでの面白さで評価してるので普通に紹介します。まあ完結した方がいいのはそうですけどね。

 この小説は概要にもあるVRMMO物にSCPの要素を混ぜた小説ですね。このジャンルのやつだとよく見られるスキルレベルのアレに戦闘→リソース回収・自身強化→戦闘の気持ちいいループ。序盤はそうやって進んでいくんですけどそのうちに説明の足りてなかった世界観が徐々に浮き上がってくる構成です。

 知らない人に為に説明しますと、SCPっていうのは報告書の体で異常な物、事、場所について創作しようというコミュニティサイトですね。正確に言うとちょっと違うんですがまあそれは置いといて。

 このSCPという創作物は元々海外の掲示板で発生したものなんですが、それがウケてじわじわ広がっていき、今では世界中で盛んに創作が行われてます。

 特徴としては報告書という体裁で、ここに創作されるものはSCPのフォーマットに則った実用的かつ客観的な文章で書くようにされていることですね。情緒的な主観などはなるべく排除されています。

 方向としては割とホラーな風味が多いですが、いろんなジャンルの報告書が作られていて、特に評価が高いものは良質のショートストーリーを読んだかのような読後感があって一コンテンツとしても非常に深い広がりがあってとても楽しめます。

 で一言で言えば『約束事に則って自由に創作しよう』というサイトのコンテンツな訳ですが、ここのコンテンツは基本的に二次創作OKなんですけど営利利用はダメというスタンスです。なのでSCPの二次創作ってこの内輪で止まりやすくて外にはあまり出てこないですね。前提を説明するのが面倒なのでそりゃあ好きな人で集まってるとこで消費しますよね。地産地消というか。まあそうじゃないと明らかにめんどくさいことになるのが目に見えてるので仕方ないです。

 しかしまあSCPの世界観って先人が10年以上練り上げてきたものなので、普通に魅力的なわけですよ。しかしながらSCPのサイトでストーリー的なものを描くのは結構厳しいし、営利目的も無理となると他のとこでもまあ出てこない。(ちなみに厳しい理由はいろいろあるんですけど説明するのが面倒なので省きます)

 そんな中でこの『Garden of Clockwork』はVRMMO物の路線にいれつつ、SCPの流れを上手に世界観に組み込んでいるのですごい。

 SCP自体が誰にでも創作できるけど、ちゃんと枠組みの中に入ってるかサイトにいる人たちで精査してね! っていう方式で各記事の面白さを担保してるんですけど、そのせいで自由なように見えて結構縛りが強いんですよね。味が強いというかSCPの要素を入れると下手なものは全部塗りつぶされちゃう。

 その辺りをうまく制御して自分の物語に落とし込んでいるのがこの小説のすごいところで、その当時はやっていたVRMMO物に組み込めちゃう作者さんはパワーが高いです。更新はもう望めないかもしれませんが、こういうのが好きな人には是非お勧めしたい小説です。

 

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