【小説紹介と雑談】『異世界居酒屋「のぶ」』とグルメ系物語の話し
古都の路地裏に一風変わった店がある。
居酒屋「のぶ」
これは、一軒の居酒屋を巡る、小さな物語である。
おすすめ度☆☆☆☆(☆)
(おすすめ度 指標
☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説
☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説
☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ
の目安で付けています)
今回紹介する小説『異世界居酒屋「のぶ」』は食事を中心に物語が展開するグルメ系のやつです。書籍化、アニメ化もしていて、これ系統の小説ではかなり有名だと思います。
内容としては短い話数で一つの料理を題材に区切りがついており、それが連なって物語の形を成してる感じです。時系列も途切れるようなこともなく、綺麗につながってるので短編連作とはまた違う感じですね。区切りが小さくついていくので読みやすく、それでいてきちんと全体としてまとまっているので、読みごたえもあってとてもいいですね。
一時期漫画やweb小説にもグルメ系の物語が流行ってたくさん出てましたが、この小説はそのブームの最初の方に出てきた、このジャンルをけん引したような小説な印象です。多分最初の火付け役は『孤独のグルメ』だと思うんですけど、火付け役というよりは流行る下地を作ったという印象で、2010年くらいからなんかしらのグルメ系再評価の流れがあったんだと思います。人がご飯食ってるの見るのってそれだけで結構面白いじゃん的な。
この小説も2012年初稿(投稿年を見るに2014年付近まで更新はあまりなかったようですが)ですし、『孤独のグルメ』のドラマが始まったのも同じ2012年です。私は正直その辺ネット環境がなかったので実感としてはないんですけど、実際のところはどうなんでしょうね。この辺は全部想像です。
話を戻しますとグルメ系の話しって食事という動作自体は短い行動に紙幅を取られるので、ストーリー自体はあまり進められないんですよ。なので自然と行動の範囲が主人公の周りにならざるを得なくて、少し変化に欠けます。これ系統の物語って何か驚きを探しに行くというよりはある程度想定した範囲内での物語を見に行くような気持ちで見ると思うんです。
しかしながら何かしら変化がないと飽きられます。グルメ系のブームがひと段落したのもこの辺の変化がジャンル全体としてもうぱっとは出てこないようになったせいなのかなと思いますがそれはともかく。漫画だと視覚で料理が変わるので違いがあっていいんですが小説だとなかなかそうはいかないですよね。
そこでこの小説だと異世界という別の世界を持ってきてそこにいる人たちに料理を食べさせるという解決策を取ってます。短い区切りで現地の人の視点へ切り替えているので主人公の動きの少なさも解決してます。こう見るとすごく理にかなった物語の作り方なんだなぁと感心させられます。
その上で大筋を外さずに綺麗に物語を繋げていること、料理の描写も非常に上手く、完成度高くまとまっていてとても面白いです。まさにこういうのでいいんだよって読者から言われるような物語という感じですね。大体こういうのでいいんだよっていうのは綻びを許さない物なので、この評価がある時点でそつなく完成度が高いということです。そしてこういうそつのなさは高い筆力や知識に裏打ちされないと出ない物なので、作者さんはすごいということですね。
長く語ったんですけど一言で言えば面白いよってだけですね。こういうのが好きな人はぜひ読んでみてください。
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