【小説紹介と雑談】一般人遠方より帰る。また働かねば!
帰ってきた。
俺は帰ってきた。
でも、飯も水も家も全部金がいる。
普通に金が要る。
さて、元のようにバイトを頑張らねば!!
異世界より帰還した一般人がバイトして、飯を食べて、時々トラブルに巻き込まれて、警察に捕まりかけて、人助けをしたり羽目になったりする。
……はずだった。
ちょっとだけズレ始める日々を、のんびりと普通に過ごしたい本人と、変わる世界に否応無く動き始める周囲を書き記す。
あらすじより
おすすめ度☆☆☆☆
(おすすめ度 指標
☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説
☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説
☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ
の目安で付けています)
この小説は現代ファンタジーで、簡単に言えば異世界帰りの主人公が巻き起こす異能力バトルとそれに伴う周りの反応を楽しむみたいな感じです。こういうジャンルを一言で表す言葉を知らないので冗長な感じになってしまいます。なんていえばいいんでしょうかね……? 異世界帰還物? 他のなろうとがであげるならGATEとかでしょうかね。まああっちは現実から異世界なので逆ですが。
まあそれはともかく、こういう小説だと主人公が超人になってて現実世界の悪い奴らをバッタバッタとなぎ倒し、本人は形だけは嫌がるんですけど結局成りあがっていって満更でもない……みたいになりがちなんです。ていうかこうなる。
こういうの別に嫌いじゃないし、普通に好きなんです。でも、こういうのって成り上がるにつれて作者の経験不足からあやふやになっていったり、冷静に考えんでもこうはならんやろみたいになって醒める経験が多いです。個人的なあれですけど。
なんか都合のいいお金持ちやら、空想だけの政治家みたいなのが出てきたり、政府直属の組織がポンコツだったり。なまじリアリティの担保を現実世界に求めてるので、そこがあやふやだったりすると一気に作品から外へ放り出されるというか。
この作品はそこのあたりがきっちりしていて、すごく丁寧に日常を描いています。人によっては冗長じゃない? と感じるかもしれませんが、対比としての非日常、アクションパートがこれによって映えるのでやっぱりメリハリって大事だなぁと思います。
主人公のような超人が現れたらという考証もきっちり抑えていて、すごく自然に話しへ入れました。
また主人公がすっごく強いってわけじゃないのもいいですね。異世界の一般兵士くらいという強さ加減が絶妙で、現実で活躍してもちゃぶ台ごとひっくり返すようなことはできない匙加減が、こういう物語の主人公に必要な”謙虚な精神性”にすごくあってると思います。
ただちょっと丁寧すぎるというのもありまして、個人的には盛り上がりどころはもっと盛り上げてもいいような気もします。私があまり脳内で場面を思い浮かべないで読む性質なのでそう思っただけかもしれませんが。
とはいえかなり完成度の高い作品です。最近読んだこの系統の小説の中でも頭一つ抜けていると感じます。非日常に焦がれる人、教室でもしテロリストが襲ってきたらなんて妄想に耽っていた人にお勧めです。