オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【ネット小説 紹介】中年社畜カードゲーマーの魔法少女狩り

その秘密結社がいつから存在したのか、真実を知る者はあまりにも少ない。
ある人はテンプル騎士団残党の流れを汲むものだと言うし。
ある人は古代ローマ大スキピオがその設立に関わっていると言うし。
ある人はトロイア戦争に参戦した神々のモチーフこそが『彼女たち』なのだと言う。
魔術的救世組織――ソロモン騎士団。
百戦錬磨の魔法少女たち。
彼女らは、今ここに、『魔王』の到来を観測した。
そして、一人の男の命を狙う。
男の名は和泉慎平。
地方都市の信用金庫に勤める34歳。
趣味はカードゲームとアイドルの追っかけ。
――果たして、魔法少女たちは、和泉慎平の人生の先に何を見るのか――

 

 

本文紹介より おすすめ度 ☆☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 

 この小説は主人公の戦う手段がカードゲームという一風変わったローファンタジーです。一部の者しか知らず、しかりてそれは確実にいる。現代に息づいている魔法、魔物、魔の付くファンタジー達を34歳の中年カードゲーマーがひょんなことから手に入れたカードを具現化する能力で戦っていくみたいな話です。ざっくり言えば。

 カードゲームが題材ではあるものの、お互いがカードゲームなわけではなく、主人公が力を発揮するステップ、枷としてのカードなのでメインとしては現代に魔潜む世界観においての物語ですね。

 カードゲームを題材とした小説は珍しいものの、言うほどないわけじゃありません。小説とカードゲーム、内向的なこの趣味達の共通項を持つ人間を浮かび上がらせると十代のライトノベルを読んでいる、まあ言ってしまえばオタク気質な青少年が浮かび上がってきます。その辺に刺さる題材として使われることが多いです。

 しかしながらカードゲームが題材で売れている(評価されている)オリジナル小説(やオリジナルアニメ)を私は見たことないです。思うにオリジナルでカードゲームを題材とするとカードに対しての根拠が薄くなってしまって結局状況次第の都合のいい小道具としてしか扱われなくなる、そうみられることが一つ原因にあるのではと。実在のカードゲームは実物があってきちんとしたルールが制定されているので枠を飛び出した妄想となりにくいですし、そもそもカード自体を遊ばせるためなのであまりストーリーを深堀りしませんし。

 まあ他にもカード内だけじゃストーリーを発展させづらいとか、労力の割にリアリティがでないとかいろんな理由があると思うんですが、ことオリジナル小説題材としての

カードゲームというのは主人公無双の小道具として使われる、というのが多い気がします。自分たちだけが攻略法を知っている、という読者のリアルと被る要素として優秀です。しかしそれを生かし切れているという小説はほとんど見たことがありませんでした。

 この小説、『中年社畜カードゲーマー魔法少女狩り』はカードゲームであるが故のジレンマ(相手もカードだと描写に間が抜ける、カードゲームが大きな事態につながるリアリティのなさ)などを解消しつつも、主人公をレンズとした感情移入のツボをきっちり抑えているのが素晴らしいと思います。

 カードゲーマー社畜という苦労人であり人畜無害な主人公が美少女たちに紆余曲折ありつつも認められていくというのは、このタイトルで読みにきた読者にピンポイントで刺さりまくると思います。特攻ありますね。

 主人公は認められてきても調子に乗らない(物語的な意味でも現実の自分に重ねている読者のためにもここはとても大事)、情景描写が非常に上手く現実離れしないなどあるべきところがあるところにそつなく収まっているのが作者さんの力量を感じます。

 普通に読んでいてもとても面白いと思いますが、カードゲームをやっていた、やっている男性に特に刺さると思います。おすすめです。

 

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885956365

http://novel-zero.com/issued/2018/12/01.html