オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【ネット小説 紹介】決戦世界のタリア

MMORPG《Decisive War World――決戦世界――》。それは異世界の女神によって用意された訓練場であった。世界で人気を博すこのゲームにログインしていた70万余のプレイヤーは、あるとき女神の力によってそのゲームと酷似した彼女の世界へと誘われる。女神はうそぶく。自らの世界の盾となれと。
かくしてゲームで鍛えた己がキャラクターへとその姿を変えられたプレイヤーたちの、異世界における『戦い』の日々が始まる。
これは僧兵の少女タリアとなった社会人ネカマプレイヤー藤崎英臣の、ファンタジーRPGを思わせる異世界を舞台にした冒険の物語。

 

おすすめ度 ☆☆☆☆(更新が停滞気味なため)

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 この小説はVRゲーム世界へ異世界転移という流れの異世界物です。この流れはなろうではテンプレと言ってもいいでしょう。この流れの小説は星の数とはいきませんが、少なくとも三桁じゃ収まらない程度にはあるジャンルですね。

 この流れを取る場合、ゲーム時代のノウハウなどで立身出世するストーリーが選ばれることが多いです。まあ無双してカタルシスを得るみたいななろう全体の流れを汲むならば当然のことでもあります。

 この小説、『決戦世界のタリア』はその主流とも言えるストーリーではなく、キャラクターや世界の構造への解像度を上げる、というファンタジー小説の王道を歩んでいる小説となっています。なろうの流れには逆らっていますが、その実もっと大きな流れを忠実に汲んでいるということですね。

 このような手法は作者の力量が試され、世界観に引き込むことが出来なければ中途半端に終わってしまう難しいお話の創り方ですが、この小説ではその問題を難なくクリアし、現実世界と異世界が地続きになっている実感が得られるとても素晴らしいものです。

 主人公は現実では男性ですがゲームのキャラクターが女性であり、異世界への転生の際、身体が女性のものに入れ替わってしまいます。普通なら女性になったというイベントが起きれば何らかのフィクション的出来事(服や身体の差異によって少し大げさに騒ぐなど)が起きるのが創作物での常です。それは様式美としていいものではあるのですが、少し物語自体の空気をフィクションの方に寄せてしまうのも事実です。

 しかしこの小説ではその辺りがとても自然で違和感なく読めるのです。物語全体としてピントが合っている、しかもそのレンズの度数がちょうどよく、見たいところが見れる感じです。少しわかりづらいかもしれません。

 とても面白く、連載の初期の方から追ってる作品ではあるのですが、ここ数年更新が滞ってるのもあり、完結している作品じゃないと嫌だという人にはお勧めできませんがそれ以外の人にはとてもお勧めできます。なろうもいいんだけど肉厚なファンタジーを読みたい! みたいな人はぜひ読んでみてください。

 

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