【小説紹介と雑談】『継母の連れ子が元カノだった』とラブとコメのグラデーション
【書籍版2巻発売中! 5月3日よりコミカライズ開始!】
とある中学校で、とある少年と少女が出会い、気持ちを通じ合わせ、恋人となり、イチャイチャして、些細なことですれ違い、ときめくことより苛立つことのほうが多くなって、卒業を機に別れた。
さっぱりと晴れやかな気持ちで心機一転したはずが、二人は思いがけない形で再会する。
「僕が兄に決まってるだろ」
「私が姉に決まってるでしょ?」
「そういう自分勝手なところが嫌いだったんだよ、クソマニア」
「そういう自分本位なところが嫌いだったのよ、クソオタク」
親の再婚相手が連れてきた子供が、別れたばかりの恋人だった。再婚したての親に気を遣った二人は仲の良い義理のきょうだいを演じるが、しかし二人きりのときには、どうしても本当の関係を顔を出してしまうのだった。
本文紹介より
おすすめ度 ☆☆☆☆☆
この小説は現代を舞台にしたラブコメです。
主人公とヒロインは元々付き合っていた同士。それまでは熱々のバカップルでしたがとある出来事により破局。お互い表面上はいがみ合う関係となります。しかし親同士の再婚によって突如同じ家に住むことになった二人。これから二人の関係はどうなってしまうのか……といったあらすじです。
個人的に思うのがラブコメには恋愛中心かコメディ中心かの二極があり、そこにグラデーションのごとく各作品が分布しているということです。ラブよりの恋愛中心コメディ薄目の作品とコメディ多め、最後に恋愛で締めるような物。最近流行ったもので前者で言うと漫画ですが『五等分の花嫁』。後者で言えばこちらも漫画になりますが『かぐや様は告らせたい』とかになるでしょうか。どちらもほどほど、中間くらいには『とらドラ!』とかですかね。最近ではないですが。漫画ばっかあげてしまいましたが、どうしても小説で恋愛多めってなるとレディースとかの領域に行きがちな印象はあります。とまあラブコメというジャンルの中でもかなり揺蕩っている感じがしますね。
どれも味があって好きですが、うまく中心付近でどっちとものいいとこどりをしようとするとこれがなかなか難しい。恋愛とギャグは相性はいいものの、書くために必要な才能は別物であり、どちらも上手に描こうとすると絶妙なバランス感覚が作者に必要になってきます。
この『継母の連れ子が元カノだった』はそのあたりが絶妙で、軽快なギャグの下に元々付き合っていたという恋愛要素がきっちり下地に敷いてあるので、どちらも地続きで楽しめる自然さがいいですね。
素直になれない主人公とヒロインが環境やイベントによって少しづつ変わっていく。そういう内面の変化という恋愛要素の楽しみ方と、ライトノベルなどの文化を中心に、主人公たちの突然住まいが一緒になったが故のハプニング、素直になれないが故の行動や言動からのギャグ。高いレベルでこれらが合わさっていてラブコメのライトノベルとして非常によくできているなぁと感心します。二人の掛け合いでかなり笑いました。
質のいいラブコメを読みたいなぁと思っている方にお勧めです。
継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない (角川スニーカー文庫)
- 作者: 紙城境介
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2019/01/01
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