【ネット小説 紹介】我が愛しき娘、魔王
創られし世界・セラクタル。
そこでは日夜、自然発生する「魔王」と「人間」が戦っていました。
魔王はとても強く、残忍な精霊です。
彼らの行動理念はただ一つ。殺すこと。
そして人間も同じく、生きるために、魔王を殺そうとします。
そしてある日。一人の男が、可愛らしい魔王の赤ん坊を拾いました。
殺し合うモノ同士が出会い、けれども殺さなかった。
やがて二人は、幸せな親子になりました。
そしてそれこそが、世界が終わる、最初のきっかけだったのです――――。
紹介より
おすすめ度 ☆☆☆☆
(おすすめ度 指標
☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説
☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説
☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ
の目安で付けています）
この小説はハイファンタジーです。自然発生する殺戮の精霊である魔王と聖遺物に選ばれた勇者が日夜戦う世界。そんな世界で主人公は島流しをされてしまったところから物語が始まります。
一人孤独に押しつぶされそうな主人公はある日、魔王の赤ん坊を拾います。魔王発見即殺害が常識となっている世界で主人公はその赤ん坊を育て始める……というのが大まかなあらすじです。
この小説、『我が愛しき娘、魔王』ですが、最近ではあんまり見ないような王道な設定のハイファンタジーですね。ここでいう王道というのは一昔前のもので、異世界の世界観で見せるような感じのものです。まあ最近のweb小説の主流から結構外れてます。
テーマとしては『愛』というのが深くフューチャーされていて、それでいて世界観の謎（魔王とは、聖遺物とは、『神』とは等）もしっかりこちらの興味を引いてくるものになっており、総じて完成度が高いです。主人公の一人称で進む少し独特の文体も読みやすく、するりと世界に入っていけました。代わりに戦闘などの描写も一人称で進んでいくのでその辺りはちょっと薄味かなぁと思いましたが、正直これはあんまり読書中に情景を想像しない私個人の好みですね。濃い描写以外味を感じ辛いバカ舌なので。
主流から外れているためか、出来の割にあまり知名度が高くないです。普通に面白いしもっと評価されててもおかしくないと思ってるんですが。
こういう小説がもっと人目について読んでもらえる仕組みがあればいいのにと思ってますがなかなか難しいですね。なろうも初期に比べてかなり巨大化しましたが検索やランキング周りはむしろ悪くなった気もします。かといってこうした方がいいみたいな明確の改善案は思いつかないのでうーん。とりあえず私にできることとして紹介したわけですが、もっと読まれるといいなと願っております。
※追記 先日のことですが、完結されました。連載は約四年とかなりの長丁場だったのですがきっちりと終わらせて見せた作者さんに拍手を送りたいですね。四年継続するってなかなか難しいことですよ。私も数個の例外を除いたらあとは息を吸ってるとか飯を食べてるくらいのものですからね。何も誇れない。
終わり方はそこまでの驚きがあるといった感じではなかったのですが、綺麗にまとまっていてこの小説のテーマを考えるとこれがぴったりと思います。最後のシーンの良さはここまで読んできた人ならば言うまでもなく納得できるでしょう。
あまりなろうでは見かけないタイプの小説ですが、この機会に読んでみるのはどうでしょうか。
