【ネット小説　紹介】お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件

藤宮周（あまね）の住むマンションの隣には、学校でも一番の人気を誇る愛らしい天使が居る。
　天使と呼ばれる程の美貌を持った優秀な少女――椎名真昼と、特に目立つこともない普通の生徒である周は、隣人といえど今までもこれからも関わる事もないと、思っていた。
　雨の中、ずぶ濡れになった天使と出会うまでは。
「借りは返します。ところで、お部屋片付けた方がいいですよ。ひどい有り様でした」
「余計なお世話だ」
　傘を押し付けたことから始まる、ちょっと言葉がきびしい天使様との関係。
　風邪を引いてしまい看病してもらったり、不摂生をとがめられご飯を作ってもらったり、共同作業（部屋のお掃除）をしたり、二人でお出かけしてしまったり。
　最初は素っ気なかったものの次第に甘えるようになる真昼と、最初はめんどくさがりの事なかれ主義だったのにいつしか懐に入れてしまうようになった周。
　これは、素直ではない二人の歩み寄りのお話。
※GA文庫様より6月15日発売

おすすめ度☆☆☆☆

(おすすめ度　指標

☆5つ　万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ　小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ　少し癖があるものの小説好きにおすすめ　

の目安で付けています）

　この小説は恋愛物です。コメディはあんまり入ってないのでそちらを期待するのはやめておいた方がいいです。

　冴えない感じの真面目で奥手な主人公が学校で評判の完璧美少女と隣室になり、彼女の誰も知らない一面を知り、そして彼女も主人公の事を知り惹かれあっていくみたいなあらすじです。

　ランキングで上がっていたのを読み出したのですが、このような恋愛物として非常に完成度が高く、尚且つ更新頻度も一日一話の速度だったので書籍化も時間の問題だなぁと思っていたのでga文庫から出ると聞いた時も驚きはありませんでした。

　この小説の後、埋もれているお互いの内面を認め合って惹かれ合うみたいな構成の恋愛・ラブコメが一時ランキングを埋め尽くしていた記憶があります。まあ言ってしまえば現実の読者にも希望がある話ですから感情移入しやすいですよね。自分のいいところはまだ誰にも知られていないだけ、それが分かってもらえれば彼女が出来る！　みたいな。まあ現実ではそんなことはないのですが。

　それはともかく題材として自己表現が苦手なオタク君達に刺さる題材なのは間違いありません。それを非常に上手く物語に落とし込んだこの小説はとても素晴らしく、これからのラブコメ・恋愛物題材の枠を一つ増やしたと言えるでしょう。

　そんな素晴らしい小説なのですが、この題材には欠点があります。それは今後の展望が描きづらいというところです。

　恋愛物・ラブコメは結ばれるまでの波乱を面白おかしく/ドキドキハラハラと描くわけですが、これはお互いの内面を知り合うという広げるにも有限なところを出汁にしてるので終わりが早い。主人公とヒロインがお互いの内面を知り尽くし、相思相愛。結ばれた後に起こることなんてこのジャンルとしてはなんの面白さもないですよね。少なくともラブの部分の形は変わってしまう。だから他のラブコメや恋愛物は主人公とヒロインが結ばれるまでひたすら引き伸ばしたり、サブキャラのサイドストーリーしたり、他の要素を伸ばしたりします。なので長く続けることを考えるならこのオタク救済物語とも言える骨子の他に何らかの要素が必要になります。

　しかしこの小説はその辺りの要素は余りなく(強いて言うならヒロインの過去話くらい）web版だと百話を超えた辺りでもう付き合いだしたので、あとはイチャイチャしてるだけどいいますか、どんなことが起きようと恋愛物としての側面が強調されるだけで物語としてのネタ切れ感があります。恋愛物としてももはや障害という障害もなく、書籍版で加筆修正するとしてもこのネタ切れ感は拭えないのではないでしょうか。

　もちろんこれはストーリーラインをメインに観ている自分だから感じることであってキャラメインで観ている人なら話は違うと思います。そういう人ならキャラ同士の絡みはあればある程いいですし、シーンに感情移入しているほど効くでしょう。

　しかし物語としては付き合った時点で終わってしまったかなぁと自分的には思います。

　とは言え完成度が高いのは確かで、三章辺りからがラブコメ好きの自分に向いていなかったと言うだけなので、ジリジリと距離を詰めた主人公達のイチャイチャが大好物ですと言う人にはとてもお勧めできます。

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