オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【漫画】響~小説家になる方法~【感想】

 先に断っておきますがこれは普段のweb小説紹介ではなく、私が読んだ漫画の感想なのでweb小説を求めてきた人はブラウザバックしてください。それか他の記事読んでください。最近は漫画やアニメを消化していて小説を追う頻度が下がってるのでこういう記事が増えるかもしれません。

 

  ということで本題の漫画の感想を。

 この漫画、響~小説家になる方法~なんですがすごいんですよ。いろいろと。

 

 導入としてはある日小説の編集部に募集要項を満たしていない手書きの原稿が送られてきます。連絡先すら書かれていない、あまりにも自己満足のためだけのそれ。当然要項を満たしてないので捨てられかけたその原稿ですが、ある編集者が興味を持って読み出します。その小説は革新的な小説でこれは絶対に売れると確信した編集者はこの作者に何とか会いに行く。その作者はなんと高校一年生の女子だった。

 

 みたいな感じですね。でこの漫画の何がすごいかっていうと主人公と周りの描写のギャップがやばすぎるんですよ。

 

 主人公の響は傍若無人という言葉がすごく似合う振る舞いでやりたい放題します。自分の作品を望まない形に持ってかれそうになったら殴る蹴る、自分がつまんないと思ったらその作品を作者本人の前でボロクソに貶すとか。それは彼女の信念に基づいて行われてるように描かれるわけですが、まあ端的に言ってしまえば凡人が考えた天才ですね。

 

 まじめに考えれば主人公の信念の元っていうのが自己の感性に基づいた世界観であるわけなので、そこから出力される”最強の小説”が説得力の9割を占めるはずなんですけど作中だと主人公の小説の中身が全く出てこないんですよね。まあすべてを説得できる小説をここで示せるなら作者がそれを現実でやれよって話になるので当然ですが。天才の皮だけ丁寧に作った感じ。

 

 主人公以外の周りの描写はかなりリアリティがあって高解像度。筋が通っている世界の中で唯一主人公だけが浮きまくってるんですよね。傍若無人の振る舞いをしてもすべてが許されてあの子だから仕方ないみたいになるんですよ。直木賞などの現実の賞なんかが出てくるのもあって現実との被りがかなり感じられるのに、主人公の周りだけ歪んでいるというか。

 

 まあフィクションって現実から歪曲しててそれを楽しむものなんですけど、この漫画だと他の描写がきっちりしてる分、歪みが作品内でくっきり浮かんでいるというか。

 

 マジですごいんですよ主人公。小説書くだけで首相官邸に出入りして首相とマブダチになるし、テレビ局に殴り込みしてプロデューサーを肉体的に脅すし。世間で知らない人はいないレベルで有名になり、気に入らなかったら殴る蹴る。本当に最強。こんだけやって周りが全部現実準拠なので最高ですよ。

 

 こんだけボロクソに言ってますがこの漫画めっちゃ面白いですよ。あまりに歪みがでかすぎて常にツッコミしながら読めるので。「でたぁ!! 響さんの正義の正拳だぁ!」となります。

 

 少し前に最終巻が出たんですけど、それまでずっと『主人公の小説には読んだ人間を洗脳する力があり、それに気づいた現人類だったがもう人口の半分は洗脳されてしまっていた。人類は響を打ち倒すために最後の攻勢にでる』みたいなラストにならないかなってずっと考えてました。こうなったらマジで伝説の漫画でしたね。今後一年語れた。

 

 まあ一言で言えば小説版俺TUEEEEなんですけど、そこ以外の作りこみが真に迫ってるので違和感がすごくてシュールギャグとしてめちゃくちゃ面白かったです。みなさん読んでください。誰かに語りたくてしかたなくなります。

 

響~小説家になる方法~(1) (ビッグコミックス)

響~小説家になる方法~(1) (ビッグコミックス)