オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【ネット小説 紹介】堕落の王

気がついたら異世界に転生していた。
寝ていたらいつの間にか望んでもないのに魔王になった。
働かなくていいなんてこの世界、最高じゃないか。きっと日頃の行いがよかったからに違いない。
怠惰の味は蜜の味。栄光、勤勉、貞淑、名誉など興味もない。
堕落の王とは何を隠そう――この俺の事だ。

*****作者からの連絡*****
2015/12/26 ファミ通文庫さんより書籍化致しました。書籍版もよろしくお願いします。
2015/11/02 第二部完結しました。ありがとうございました。
2015/2/28 続き組んだので第二部を掲載中です。
2015/1/30 無事完結しました。ありがとうございました。

 

 

 

おすすめ度☆☆☆☆(☆)4.5

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 この小説は異世界ファンタジーです。主人公は現代からの転生者ですが、その事実が物語に深く関わったりはしません。

 この物語は悪魔が住み、覇権を争う魔界での物語です。悪魔は7つの原罪によって分かれ、その罪を遂げるごとに強くなっていきます。ある悪魔は自分の強欲を満たすため、ある悪魔は己の憤怒をぶつけるため、欲望とは他人と衝突するもので、魔界は常に戦乱の世でした。そんな魔境で主人公は他に例のない怠惰を司る魔王であり、日々を寝て過ごしていました。

 とまあ「俺なんかやっちゃいました?」感漂うあらすじなのですが、これは私の書き方が悪いですね。この小説は章ごとに七つの大罪の名前が冠されており、それを司る登場人物の視点で物語が進んでいきます。なので常に主人公が出てくるわけではなく、その章ごとに掘り下げられる人物が違うのが特徴です。

 どのキャラクターも悪魔なので原罪を持ち、己の欲望を遂げるために行動するのですが、それがキャラ立ちにとても役立っていて、登場人物の魅力がするりと入ってきます。

 章ごとに大罪をモチーフにしており、キャラクター視点を頻繁に変えているのに破綻しない筆力、終わりに向かい完璧にまとめ切っている構成力(特に一部)は他に類を見ないもので、このジャンルの小説では一番好きかもしれません。

 二部構成ではあるのですが、二部は少し風呂敷を広げすぎてしまった感があり、それが☆4つにしている理由です。とはいえ、この面白さを前に読まない理由にはなりません。

 この作者さんはこのブログでも紹介した昏き宮殿の死者の王も書いている他、書籍化作品多数を書いている人です。異世界ファンタジーで風呂敷を広げさせたらこの人の右に出る人はいないと個人的に思っています。どの作品も全部読んでいるファンですが、私はこの堕落の王が一番好きですね。

 

https://ncode.syosetu.com/n4760cl/

 

堕落の王 (ファミ通文庫)

堕落の王 (ファミ通文庫)