オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【ネット小説 紹介】北陸クトゥルフ紀行(仮)

「私は夢。あなたの夢」

 石川大学に通う真舘 朗(まだち あきら)は、夏休み中に大学構内で起きた殺人事件を目撃して以来、精神を病み、夜を恐れるようになってしまった。
 そんな折、彼のもとへ奇妙な申し出がくる。いわく「仕事を請け負ってくれるならば、その悩みを解決しましょう」と。
 夜毎の苦しみに耐えかねた真舘は、藁をも掴む気持ちでそれに応じた。
 ・・・・・・こうして、彼は人間の世界から足を踏み外し、北陸の薄暗がりの下で蠢くモノと対峙することとなる。
 白い少女と共に。

 

おすすめ度☆☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

  この小説はホラーです。題材としてはクトゥルフ神話をモチーフとしており、一般人がずるずるとそちら側に落ちていく感じは、伝聞でしか知らないクトゥルフ本家の片鱗を感じます。

 読書好きならクトゥルフくらい読んどけと思うかもしれませんが、ホラー苦手なんですよね……。普通に怖いからというシンプルな理由となっております。恐怖を楽しさに変換できないんですよ。

 結局ホラーって自分の安全が確保されてるから楽しめるわけじゃないですか。そりゃあ目の前に本当の化け物がいたら楽しいとか言ってる場合じゃないですよ。現実とフィクションのホラーを分ける境目って何かといえば『知っている』ことと『自分に影響がない』ことだと思うんですよね。

 例えば目の前にクマがいたとして怖いですが、クマの事は一応知ってるわけですよ。だから何してくるかはとりあえずわかる。でもフィクションの化け物って何してくるかわかんないじゃないですか。知らないってことは単純に恐怖がある。

 まあ後はフィクションなんだから絶対に自分は関係ないって無意識に思い込めてると怖くはないですよね。心のどこかでもしかしたら……なんて考えたらアウトですよ。

 私はビビりなので雑多な思考してる時に、ホラーのこと思い出すと寝れなくなります。なのでまあそもそも見ないようにしてるわけですね。もしホラーを見たとしても他のジャンルの視点から見るみたいな力業で何とかしてます。

 とまあ長々書きましたがこの小説は伝奇物の要素を併せ持っています。クトゥルフも有名になりましたし、作中でこの存在はこんな特徴があって……と語られて行くのでホラー苦手な私でも読めるわけです。

 きっちりと段階を追って進んでいく物語に無駄なところは見えず、このジャンル独特の雰囲気も相まってとても素晴らしい。やはり人の力届かぬところというのを丁寧に描写されると私としてはニコニコしてしまいます。きっちりと小説一冊分程度にまとまっており、作者さんの力量が垣間見えます。

 ホラーが苦手な私でも読めたので、ホラーはちょっと……という人にもおすすめできます。なんでも読めます! という元気な方にはもっとおすすめです。

 

 https://kakuyomu.jp/works/4852201425154980977#reviews