オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【ネット小説 紹介】エア・ウォーカー

【あらすじ】
皇紀2677年・東京。飛行能力を獲得した新人類『反重力種』によって構成された特殊部隊『対空警邏(たいくうけいら)』。地上の生物を無差別に攻撃する謎の侵略存在『飛獣』。2つの異能は空を戦場にぶつかり合う。『選ばれない存在』である事を自負する少年・真鍋マグは、立ち並ぶ打ち捨てられた高層ビルの廃墟の狭間で『対空警邏』の英雄・柊アリアと再会する。

 

 

おすすめ度☆☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 

 この小説は現代ファンタジーです。飛行能力を手に入れた等身大の人間たちが侵略してくる化け物を倒すみたいな内容。アクションもきっちり。

 異能力があってアクションもきっちりと言うと爽快感溢れるようなド派手な戦闘描写を想像しやすいと思うのですが、この小説のメインは違います。

 この小説の主人公は現実の人間の精神にとても近いです。等身大の青少年が嫌味なく描写されていて、それは登場人物全てに言えます。彼らはこの世界で生きていると伝えてくるような質感があります。

 そんな彼らが重力を無視して飛べる能力を持ち、怪物と戦う。確かにファンタジーなのですがそれもどこか泥臭く、華美に装飾されていない確かなリアルを伝えてきます。

 普通はモブではない登場人物が簡単に死ぬようなことは、そのために作られたなどでなければありえないのでどこか安心してみていられます。しかしこの小説にはそんな安心感はありません。過酷な環境であり一歩間違えたら全滅していた。そんな緊張感が戦闘シーンでは常に感じます。この辺りもリアルですね。そんな非常な現実を作品の全体的に漂う物悲しさが助長します。

 そんな明るくない未来を見てそれでも抗おうとする人間の美しさ。それがこの小説の醍醐味でしょう。web小説ではあまり見ないタイプですがとても面白く読めました。

 しかしながら終わり方が大団円のハッピーエンドというわけではないので、そういう終わり方以外嫌だという人にはお勧めできません。

 web小説の界隈では連載しないと人気が保てないといった理由で連載を前提とした小説が多いわけですが、やはりこういう小説を読むのもいいですね。小説一冊程度で綺麗にまとまっていて完成度が高いです。

 シリアス、硬派な雰囲気の小説を読みたい人におすすめです。

 

 

https://kakuyomu.jp/works/1177354054882303321/reviews