オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【ネット小説 紹介】俺のロボ

“ガーディアントルーパーズ”はアーケード用のロボットアクションゲームだ。プレイヤーはコクピットさながらに作りこまれた大型筐体に搭乗して戦う。

 ありがちな世界設定にどこか野暮ったいメカデザイン、ボタンだらけの二本のジョイスティックにフットペダルまで使う複雑すぎる操作。トドメに鬼のような難易度のミッションとマイナス要素のオンパレードだ。
 
 レビューサイトの評価は総じて低かったが、俺はこのゲームにハマってしまった。三十路も近いサラリーマンがゲーセン再デビュー、今時の若者たちにオヤジの力を見せてやるぜ。

 だがこのゲーム少し変だ、全国大会を勝ち進むうちに俺の周囲で妙なことが起き始めた……

 

 

 

おすすめ度☆☆☆(☆)3.5

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 この小説はSF勘違い物です。主人公は三十近いサラリーマン。ある時から大型の筐体に乗り込んで遊ぶロボットゲームにはまり、頭角を現していくもののそれはただのゲームではなく、主人公の周りではいろんなことが起きていくといった感じです。

 こういうあらすじだと主人公や周りの反応が大げさになって少しわざとらしい感じがしてしまうことも多いです。そうなってくると舞台装置にしか感じられなくなってきて、そこで手に入れた優越感が偽物になってしまいます。こういうジャンルの小説で大事なのは世界のバランスで逸脱しすぎずにインフレすることだと思います。

 手に入れた力は利用してこそですし、そうすれば新たな力が手に入るというのが理想ですからね。五千兆円手に入れたらその金で自分を救い、そして周りも救い、そして世界を手に入れたいわけですよ。しかし勝ち確定の一人試合は見ていてつまらないものですし、程よい相手があってこそ。世界支配を拒む悪党(ただし金に弱い)みたいな踏み台がいてこそ盛り上がるというものですよ。まあ何が言いたいかと言えば五千兆円ほしいということですね。

 話しを戻しますと、この小説だとマイペースな主人公の一人称が崩れず、周りから入ってくる情報が勘違いの盛り上げとしてちょうどよいくらいで独特な雰囲気があります。この辺の匙加減が上手で、面白く読んでいけました。ビームサーベル好き。あとは企業とかの世界観なんかも主人公視点ではなかなか語られないもののきっちりと考えてあるのが好印象。この辺おろそかにするとこういうジャンルは総崩れしちゃいますからね。

 終始崩れぬ主人公のペースで進んでいくこの小説の別の魅力としてロボットに乗っての戦闘があります。自分は履修してないので詳しくはありませんがモビルスーツとかが好きな人にはこれがモチーフだなってわかる機体が結構あるんじゃないでしょうか。まあそもそも主人公がハマったゲームのモデル自体が戦場の絆っぽいですし。あの筐体、初めて見た時は驚きました。なんじゃこりゃ? って感じで。いまだにやったことはないんですが、あそこに入った瞬間プラグスーツみたいなのを着させられるんでしょうか。

 ロボ物としても楽しめますし、その独特な雰囲気で勘違い物としても他とは違った面白さがあるのでびびっと来た人は読んでみてはどうでしょうか。

 

 

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