オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【小説紹介と雑談】異邦人、ダンジョンへ潜る

 あらすじ

1946年七月。異世界の存在が確認される。
そこは、人類の新天地になるはずだった。
しかし、莫大なコスト面と、先遣隊の全滅、世論の反対により不可侵条約が結ばれる。
人類の目は宇宙に向けられた。

それから半世紀。
異世界のダンジョンに潜る為、ある企業が部隊を編成する。
五人のプロフェッショナルと三機の人工知能。それに予備の人員一名。
現代火器と技術により、冒険は簡単に行く予定だった。

だが異世界にたどり着けたのは、ポンコツ人工知能とノンプロフェッショナルな一名。
試行錯誤を繰り返して、彼らは生きる、食べる、戦う。そして、ダンジョンに潜る。

 

 作品ページから引用

 

おすすめ度☆☆☆☆

 

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 書籍化済み。数多の要素が散りばめられていますが基本的には異世界ファンタジーのジャンルです。あえて一言で言うなら『ファンタジーにSF要素を少し混ぜ込んでおいしい所だけを丁寧に煮込んだ鍋』。

 こういうおいしい所だけみたいな作り方はそもそも物語の骨子を理解していないとできないものです。それをわからずにやると大抵は作者の気持ちだけは先走って読者が置いてけぼりになりがちです。『必要な出力が足らないので作者だけがおいしい料理』って感じですね。

 それか必要情報の選別が出来ずに冗長になって雑味が増えて本来の味がぼやける感じになってしまいます。こっちは『必要そうなもんは全部入れた量が多すぎるごった煮』ですかね。前者は読むのもしんどいです。後者はまだ物語として体裁をなしているので読めなくはない。

 こういう別世界を演出してそれに魅力を出すに必要なものはリアリティです。リアリティと言っても本物である必要はなく、本物っぽさが大事だと思っています。それを出すには丁寧な仕込み、演出だと思っています。

 かの有名なハリーポッター指輪物語だって細部までに作りこまれた非日常が私たちの耳元で息吹を感じさせたから売れてます。私たちはいつだって非日常にあこがれていて、それが身近にあると思えた時その世界に熱狂するわけです。

 この小説だと食事の描写と主人公の一人称が絶妙でそれが最低限のリアリティを担保していて、そこから人間(ここでいうのは現実のそれというより物語的なもの)をきっちり描いて補強、それを簡略できるとこは簡略してラノベ的な味付けで提供しています。

 戦闘の描写などは叙情的でかっちりと描写するタイプではなく、このような物語はそれまでの没入感が大事です。例を挙げると遊戯王グレンラガンとかですかね。あの辺りの物語に共通することとして、集中させたいストーリー以外は結構がばがばなんですがそれを感じさせない勢いがあることです。細かいことはともかくこうなんだ! で納得させる強さがありますね。この小説は設定の語りは決して多いわけではないのですが、描写の仕方がすごいので入っていける。入口に来たら後はあれよあれよという間に運ばれて深くまで行けてしまいます。

 少しでも何かが欠けるとするりと入れるようなこの不思議な感覚は消えてなくなってしまうだろうし、作者の方は絶妙なバランス感覚を持っているなぁという印象。個人的にはかなり好きです。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883170654

 

 

異邦人、ダンジョンに潜る。 (ドラゴンノベルス)

異邦人、ダンジョンに潜る。 (ドラゴンノベルス)