【ネット小説 紹介】幼馴染の自動販売機にプロポーズした経緯について。
あらすじ
町のおんぼろな自動販売機、そのそばにはいつも着物姿の女がいる。
軽やかに歌う彼女は「人ならぬもの」。
主人公の“ぼく”は、彼女を除霊しようと塩を投げつけるが……紹介文より
おすすめ度☆☆☆☆☆
(おすすめ度 指標
☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説
☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説
☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ
の目安で付けています)
この小説はラブコメです。書籍化済み。
この作者さんは周りの情景を描くのがとてもうまい人で、この方の他の小説も読んだのですがどの物語でもそこに合わせた風情を描写していました。他にも人物描写や地の文のまとまりといい、単純に地力が高いことがよくわかる文章です。
キャッチ―なタイトルに付喪神との恋愛、途中の心情描写、最後のオチに至るまでとてもきれいで、作中の古い歌たちの風情といい、すべてが高いレベルでまとまっています。
自分の中でエンタメというか文化の系譜というのは先達の型を認識し、それを踏襲した上でその伸びた枝先に新たな葉を伸ばすみたいな認識でいます。聖書とか神話とかそういうところから引っ張ってくるのは読者がもう持ってる領域を無意識に使えるので描く物の全景をどんどん大きくできる。一からのオリジナルというのはその文化の流れを明確に引けずに、リアリティを擁立できず潰れがちな訳ですね。
脱線しました。まあその文化の流れで親和するもの同士をうまく組み合わせて、それを自分の文脈で綺麗に出力できると名作になるわけです。
それでこの作品ですが付喪神という文化に古き和歌(恋歌)、それにラブコメですよ。系統一致ボーナスつきます。それをラブコメの枠内で綻びなくまとめてるんだからもう好きという言葉しかでないです。
やっぱりと言いますか、和歌なんかを調べるというのは結構な手間であって、元々こういうのが趣味であるとかでなければ自然に知ることはあまりないじゃないですか。いやまあ学生時代の国語でやったでしょとか言われると個人的にはかなり苦しいんですが……。ともかく物語上で必要な事柄に対してきっちり手を抜かないで調べ、それを効果的に反映させるというのはめちゃくちゃ大事だなぁと思います。どうしてもあやふやな知識だと説得力に限界がありますからね。
設定の説得力はキャラクターの魅力に直結する……とまでは言い過ぎかもしれませんが、やはりどこかで生きてるような気がするキャラクターというのはどれも抜群の説得力を持っているものです。
とまあ脱線しました。この小説は完結済みであり、小説一冊でまとまっています。ラブコメ好きにはもちろんですが、和風要素が好きな方にもお勧めできます。綺麗な物語を読みたいけど長物はちょっと見たいな時にもお勧めです。
余談ですが、この作者さん。こういう一発でまとめる方が好きなのか、この出来ゆえに筆が遅いのか。この小説以外の本も完成度が高いのですが続きが出ません。欲張りですができるならこの完成度で長く読めるものが欲しいですね。
https://kakuyomu.jp/works/4852201425154898017
幼馴染の自動販売機にプロポーズした経緯について。 (カドカワBOOKS)
- 作者: 二宮酒匂,細居美恵子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/富士見書房
- 発売日: 2016/08/10
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