オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【小説紹介と雑談】ンディアナガル殲記

 思い通りにならない日常に鬱屈していた俺が召喚されたのは、塩に埋もれていく世界だった。
 右も左も分からないまま俺は「破壊と殺戮の神ンディアナガル」と呼ばれ、最前線へと放り出される。
 その戦場の最中、俺は自分が無敵の存在になっていると気付かされる。
 元の世界に戻るのに最低一週間は必要だと知った俺は、その一週間だけでもこの世界でハーレムを作ろうと、戦斧を手に戦う決意を固めるのだが……
 第一期はアットノベルスから加筆修正しての転載でした。

 テーマソングはkalafinaの『red moon』で。
 今のところ毎週水曜日に更新する予定。

 

あらすじより

 おすすめ度☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 

 この小説は異世界転生です。主人公、どんどん強くなります。立ちふさがる敵、全部なぎ倒します。気に入らない奴、みんな殺します。そして手に入るものは……?

 (先に言っておきますが、この作品は好みが分かれると思います)

 この作品の初投稿は2013年となっており、かなり古参です。私も初めてランキングに上がっていたのを見た時がまだ高校生くらい。一度あらすじのテーマソングの部分でブラウザバックしたのが記憶に残っています。まあきっかけは忘れてしまいましたが結局読みました。

 この作品は俺tueeeeが蔓延るなろうに置いて異質な小説です。精神的に幼い主人公が突然他人由来の大きな力を手に入れて、主人公よりももっと幼稚な悪役をなぎ倒し、主人公が関わる狭い世界だけが繁栄を享受する。web小説になじみ深い人ならわかるかもしれませんが、こんな展開、有りがちですよね。このンディアナガル殲記はそんな展開への強いアンチテーゼになっています。

 この小説を読んだとき、私はあるべきものがあるところに収まったような感覚。しっくりくるというか腑に落ちるというか。とにかくそういうものを感じました。

 普通、物語の登場人物はみなおかしな行動はしません。突然全裸になって踊ったり、意味もないのに人を殴ったりしませんよね? そんなことをする物語は全部駄作です。もちろんそういう理由があってそうしてるなら話は別ですよ? 

 作中で直接表現されるかはともかく登場人物の行動には必ず意味があり、それによって物語は進行します。ミステリーなんかは特に顕著です。犯人が誰も知らない第三者で理由も作中で出てこなかったら怒られますよね? 必ずそれに至る文脈(コンテクスト)があり、それらが絡み合って綺麗な物語ができる。

 でも現実ってそんなにきれいじゃないですよね。他人の心情はモノローグで語られませんし、行動に理由があってもその理由が明かされることは少ないです。挙句、理由があってもなんとなくやった、みたいな物語でやったら駄作決定みたいな動機が頻繁に登場します。まあ人間って複雑なので物語になりにくいというか。

 何が言いたいかというと言ってしまえば物語の登場人物と現実の”人間”は割と別物ですよね、ということ。うまい作者さんほど登場人物の深みは増していきますが、現実臭い雑味は消えていきます。物語には必要ないですからね。言ってしまえば意味のない行き止まりばかりの迷路。そんなのやりたくないです。しかしこの小説はそんな雑味をうまく料理しています。

 このンディアナガル殲記の主人公はとっても”人間”臭い。わがまま放題だし、ダブルスタンダードが頻繁に起こるし、こんなこと普通なるか? みたいな首を傾げたくなるような行動だってあります。でも私の心がこれはどこかで有りえるかもしれないと囁くのです。これは有りえたかもしれない”人間”である、と。気づけば最新話まで読んでいました。

 鬱屈とした雰囲気、雑味を含めた”人間”を味わいたい人、異世界テンプレにはもう飽き飽きだって人にお勧めです。合う人には合う。

 

※追記

 ついに完結しました。まずはこの長い物語をきちんと完結させた作者の方に賛辞を。約7年続けた物語を完結に導くというのは並大抵のことじゃないです。すごい。

 ここから先は個人的な感想になります。普通にネタバレするので読んでない人は見るのやめた方がいいです。

 

 

 最後に主人公は死んでも生き返り続ける世界で一人延々と苦しみ続けるendなわけですが、個人的にはそうするんだーという感想になりました。

 まあ主人公が自業自得で酷い目に合うのは既定路線でここを外したらこの作品自体が成り立たないわけですから当たり前なわけです。地味に酷いこと言ってますが分かってもらえると思います。

 私が思い浮かべてたのは主人公が何もない世界で苦しみ続けつつ、主人公の広がりきった内面で世界が再構築されて主人公がいないだけで幸せになってる各世界の場面を描写して終わるみたいな感じでした。

 これだと滅んだ地球も復活するので現実に繋がりますし、主人公がいなければ幸せになった対比があればより自業自得感があるかなぁと。そう思ってたんですけど違いましたね。

 まあでもぶっちゃけ主人公が酷い目にあってればノルマ達成みたいな気持ちだったので満足感はあります。お疲れ様でした!

 

 

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