【ネット小説 紹介】昏き宮殿の死者の王
あらすじ
――死にたくない。自由が欲しい。
そのためならば、僕は――甘んじて『怪物』になろう。
全身に絶え間ない激痛が奔り、衰弱の末死に至る奇病。
それに冒された少年は数年の苦痛の末、絶望を感じる余裕もなく誰にも看取られることなく生を終える。
そして再び目覚めた時――少年は邪悪な死霊魔術師の力により、最下級アンデッド、『死肉人』となっていた。
念願の痛みを感じない身体を手に入れ、歓喜する少年だが、すぐに自分の立場が未だ支配され、病室に軟禁されていた頃と大差ない事に気づく。
ただ平穏を求める少年を、世界は放っておかなかった。
死霊魔術により死体から少年を蘇らせ、エンドと名付け支配せんとする死霊魔術師。
闇に属する者をどこまでも追い詰め、滅する事に命を賭ける終焉騎士団。
多数の魔物を配下に収め、各地に君臨し覇を争う魔王達。
目的は生存と自由。必要な物は力と注意深さ。
これは、自由を求め、時に戦い、時に逃げ出し、時に怯え、時に躊躇う、臆病な死者の王の物語。本文紹介より
おすすめ度☆☆☆☆☆
(おすすめ度 指標
☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説
☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説
☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ
の目安で付けています)
この小説は吸血鬼をモチーフにしたダークファンタジーです。この小説を書いている作者さんは他にも何作か長編を書いていて、そのうちのほとんどがファンタジーの世界観です。そしてこの小説はまだですが、それらは皆、書籍化されています。
あまり奇をてらったような作品は書かない方で、少しの例外を除けばファンタジーでよく見る要素を自分の世界観に落とし込んで、どこか王道から逸れたような、知っているけど新しい設定を打ち出してきます。地力の高さがうかがえますね。
なろうでファンタジーと聞くとどこかで聞いたような設定をつぎはぎしたような、なんだかちぐはぐでギャグ時空にいるのではないか? なんていう気持ちになってしまうものが多かったりしますが、この作者さんはその辺が上手いです。
その上で一番推したいのはキャラクターの魅力です。この作者さんはキャラクターを動かすというか”物語の登場人物”にするのがとてもうまいのです。魅力的なキャラ設定を活かすようなストーリーの運び方によってキャラ達が輝くというか。この軽妙で引き込まれるようなキャラクターたちの魅力と、知らない世界を知るようなわくわく感を与えてくれ、広がっていく世界観。この二つの要素が高い次元で纏まっていることがこの作者さんの魅力だと思っています。機会があれば他の作品も紹介したいと思います。
あとは余談なのですがこの作者さん、めちゃくちゃに速筆です。常に何個かの連載を抱えてるイメージがあります。それでいて連載途中でやめてしまうということがほとんどなく、一部を除いてちゃんと完結させているところがすさまじいですね。この小説一話にも満たない微妙な文章を書くのにも手間取っている私からすればどうなってるんだと思ってしまいます。
この小説、『昏き宮殿の死者の王』は生前病で全く動けず、世の中を見る事なく死んでしまった主人公が、期せずして吸血鬼になるところから始まります。自分を復活させた死霊術師からなんとか逃げて自由に生きる。その為に主人公がいろいろな手を尽くして虎視眈々とチャンスを伺う訳ですが、予想の付かない展開、そのスリルと段々と明らかになっていく世界観といい、とても引き込まれます。
まず第一に書籍化を! というような話題性先行の一発芸ではなく、しっかりとした土台の上でキャラの魅力を引き出すストーリー。ライトノベルかくあるべしといった感じで私はとても楽しく読めました。おすすめです。
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