オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【小説紹介と雑談】女勇者のお供は僻み系少女

あらすじ

【勇者時代】魔法があり魔物がいる世界。人類は魔物と数百年にわたり戦争を続けていた。そんな世界で女勇者として各地を放浪する美女マーニャと、「わたしはゴミだ……」が口癖なお側付きの少女フニ。自信に満ちた振る舞いをするマーニャはしかし先天的に一切魔法が使えない戦闘能力皆無の女で、実は高確率な割合で根暗になるフニこそがとんでもなく強い「天才魔法使い」で……。これは笑顔で何もかもを騙す詐欺女と、最強の根暗少女が、人と魔物の戦争を終結に導くまでの割とのんびりした旅の物語。

【学生時代】世界的に有名な魔法使いを父に持ち、また自身も自他共に認める「稀代の天才魔法使い」である少女フニは、その捻くれた性格と有名すぎる父を持つせいで魔法研究を担う学園に入学早々、問題ばかりを起こしていた。ついにはルームメイトからも部屋を追い出される始末。彼女が次のルームメイトの住まう部屋へと向かうと、そこには美しい女――マーニャがいた。彼女はフニにも優しく接し、少女の卑屈に捻くれた心を甘く溶かしていく。これは女と少女が心を通い合わせていく二人だけの物語、全ての始まりである。

【旅人時代】マーニャとフニは学園を卒業し、二人きりで旅を始めた。学園を離れ、様々な土地を見、沢山の人に出会い、喧嘩をして、魔物と出会って。気づけばマーニャの名は様々な人物の目に留まるようになっていた。それでも二人は旅を続けようとした。だが、二人の旅は一年で終わりを迎える。女と少女の前には、重い決断の道が続いていた。これは何故魔法を使えないマーニャが勇者を名乗り、フニが卑屈になったのか、その過程の物語。

 

 本文紹介より

おすすめ度☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 

 つい数日前に完結したので紹介します。

 この小説のジャンルはファンタジーです。魔物と人間が戦争を続けて数百年経ち、誰もその始まりなどわからずに戦争が前提としてある世界。

 誰もが魔法を当たり前に使う世界で魔法を使えない女勇者と誰よりも上手に魔法を使えるものの卑屈な少女。この二人の旅路を切り取り、短編連作のように切り取ったのがこの作品です。

 作品情報にはガールズラブとありますが、あまり直接的な感じではなく綺麗な心の動きを描写しているので抵抗なく読めると思います。いい意味でのファンタジー

 どちらかと言えばガールズラブというより愛とは何ぞやみたいな話になっていくのでその辺のおかげでしょうかね。結局理性の恋愛みたいなのって愛とは何みたいな話になるので普遍性があると思います。現実の同性愛みたいな話とはまた別物です。まあその辺は実際のところだと性欲だとかぐちゃぐちゃしたものが混ざってきてドロッとしがちというか。その辺含めて楽しみたいという需要がなわけではないでしょうが、主流からは明確に外れますね。

 この『女勇者のお供は僻み系少女』。綺麗な部分だけ記すという感じで時系列が飛びつつ、象徴的なエピソードが連なっていく形なのですが、最低限の文章で背景にある大きな世界、キャラの成り立ち、繊細な心の揺れ動きを表現しています。文章も綺麗ですし、魔法ファンタジーとしても行き着くところまできちんと行ってしまうので、盛り上がりを落とさないまま、気持ちのいい読後感に浸れます。終わり方もこれしかないよなぁといった感じですし、自分的にはかなり満足でした。

 ただこの小説、ライトノベル換算で言えば三冊分くらいなのですが、世界観が大きすぎて書いてある文章だけで出力しきれていない感があります。必要なところと厳選しているが故に、そぎ落とされてしまった部分が結構あり、テーマが大きくなっていくにつれてそのところどころ空いた穴がちょっと気になってきます。なので設定とかを厳密に気にする人や、読書自体に慣れていない人だと途中から着いていけなくなってしまうかもしれません。パズルで言うなら所々ピースが欠けているような感じでしょうか。

 しかしそれを自前の道具箱から埋めて完成させた時、この小説の破壊力はすさまじいものがあります。万人におすすめできるわけではないですが、私はとても好きです。

 

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