オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【感想】シャンフロ コミカライズの感想

 前に紹介したシャングリラ・フロンティアが書籍化を飛び越えてマガジンで漫画化されました。これだけの人気があって書籍化していないというのはまあ何らかの形でトラブルがあったんだなと思っていましたが、いきなり週刊誌で漫画化というのは予想を飛び越えた展開です。

 展開も早く、pvを出したと思ったらすぐに本誌での連載が始まりました。いまなら無料で一話読むことができます。下がリンクです。

pocket.shonenmagazine.com

 

 

 それでまあ読んでみての感想なのですが、正直なところがっかりしたというのが本音ですね。がっかりというのは正しくなく、より正確に言うならばまあそうなっちゃうよね……というのが正直な思いではあります。ツイッターなんかで見てみると好評な声が多く、この作品は固定層めちゃくちゃ多いという事実を再確認しましたが、個人的にはうーんと思ってしまったのです。気になった点をいくつか。

 

 ・原作の要求量に達せていない

 シャンフロは数多のゲームを渡り歩きつつ、メインであるシャングリラ・フロンティアの攻略を進めていくわけですが、漫画という題材でやる以上、作画というのは基本的にメインの作者が一人で、あとはアシスタントという感じになるわけです。船頭多くして山に登るとも言いますし、複数の人がメインを張ることはできないわけです。頭を決めてその人の絵柄を使ってやっていくことになります。

 しかしいろいろなゲームを渡るという作品のコンセプト上、その一つ一つに最適なキャラクターデザインがあるわけで、作画側の人はそれをきっちり確認した上、自分の絵柄で出力しなくてはなりません。この一話だけでも

・冒頭のフェアクソ

・主人公のリアル

・シャンフロ

 と三つの書き分けの要求がありますし、原作が進むほどロボとかファンタジー生物だとか作画要求が跳ね上がっていきます。なので作画側の負担がめちゃくちゃでかい。

 この漫画を担当している方の絵が下手とは口が裂けても言えませんが、原作側が求めてきている要求があまりにえげつないので、達することができていないというのが一つ。

 

 ・演出に対しても立ちはだかる要求量の多さ

 基本的に舞台がゲームであり、膨大な情報量を一人称の形で限定して出力している原作ですが、紙面に制限がある漫画という媒体と相性が悪いと言わざるを得ません。VRとはいえゲームの戦闘描写というのはひと手間多くなりスマートに描きづらいですし、その上一人称なので主人公の思考がそれに付随します。それを完璧に描き切って取捨選択するというのはもはや神業でなければ無理なのではと思っていたわけですが、実物を見ると頑張ってはいるもののやはりもっさりとした感じに。

 小説ならすんなり飛ばせる場面も漫画だとそうもいきませんからね。この本編での例として、主人公がハシビロコウ的な仮面をつけて戦う場面というのは、小説ではあまり気になりませんが漫画だとかなりシュールです。

 これはなぜかというと小説は一人称で、主人公の目線で進むので戦闘場面で表したいこと、つまりゲーム内での戦闘に対しての興奮にフォーカス(視点)が向くので見た目の事はフェードアウトしているわけですが、漫画だとそうもいかないので全体像を描かねばならないからです。

 こういう描写に対して考えられる解決策としては主人公のフォーカスに合わせて仮面を透かして読者とフォーカスを合わせるなどが考えられますが、他にも色々解決策はあるでしょう。

 他にもゲーム的演出を入れる時にそのまま文字などで入れるとその場面の主題から遠ざかってしまう問題や、そのまま表現すると作画コストが天井知らずになる問題など作画側が漫画造形に死ぬほどうまくないと解決できない問題などが少し考えるだけでもめちゃくちゃあります。前者は画力でそういう描写なしの表現をする、後者はデフォルメをうまく使うなんかが思いつきますが、どれだけの超人を連れてくればできるんだって話です。求められるものが多すぎる。

 ・キャラデザ

 これはまあ個人的な話しなんですけどヒロインちゃんのキャラデザが想像と全く違っててめちゃくちゃ悲しくなりました。恋愛ヘタレお嬢様で文武両道の清楚なんて黒髪ロングのベタ塗りしかないだろと思っていたんですが……垂れ目でエアリーボブ。恋愛経験値はナメクジなのになんでそんなゆるふわコーデ? まあそれもなくはないって感じなんですけど……ですけどー! 今後の動きを考えるとそのほんわかしたデザインでヘタレムーブというのは違和感しかないというか……。

 原作の設定で髪型とか公開されていたのかと思って漁ったんですけど出てこなかったのでこれが初出っぽいです。ここにあるんだけど節穴か? ってなった人は教えてください。

 原作者の監修が絶対入っている以上、これが正しいんだと思いますが……。泣いています。

 他にも三つの世界が一話で描かれているわけですが、どれも服装が変わっただけでその世界のキャラデザじゃないなーと感じます。全部画一的というか。まあコスト的に言えば仕方のないことではあるんですが、納得はしたくない。

 

 大まかに言えばこんな感じですね。細かく言えばいくらでも言えますが、これは一重にVRゲーム物という作品の漫画化難易度が高すぎるのが原因だと思います。

 こういううるさいオタクというのは私含め少数でしょうが、何となくのような言語化できない理由で読むのやめたとなる人は結構多いと思います。

 これから先、マガポケのアプリで配信される限り追っては行こうと思いますが、この漫画が原因でシャンフロが小説を読まない層にも爆発的にヒット! ということにはならないんじゃないかなーというのが私の正直な感想です。