オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【小説紹介と雑談】『ギガファウナ ―超巨大生物の惑星―』と人から離れるSF

 25世紀。宇宙からの外来微生物により地球は危機に瀕していた。迫りくる滅亡を回避するため人類は外宇宙に活路を見いだす。日本政府が白羽の矢を立てたのは地球から約70光年離れた惑星あさぎりだった。だが、この星にはいわくつきの過去があった。かつて大型移民船セドナ丸が謎の超巨大生物の映像を最後に遺し消息を絶っていたのだ。
 探検隊のメンバーに抜擢された科学者やエンジニア、元傭兵に自衛官など、総勢157名の男女は謎に包まれたあさぎりへと旅立つ。長き航宙の末にたどり着いた彼らを待っていたのは、奇妙な生物に満ちあふれた生態系と、その上に神のごとく君臨する全長数百メートル規模の超巨大生物相だった。
 果てしてセドナ丸に何が起きたのか。惑星あさぎりの生命に秘められた謎とは。そして、探検隊員たちはこの星で生存することができるのだろうか。

 

おすすめ度☆☆☆(☆)

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 この小説のジャンルはSFですね。web小説の界隈で言えば少し珍しいジャンルです。まあ私が好んで読んでるわけじゃないので観測範囲が狭いというのはそうなんですが。

 この小説の中身を端的に言い表すなら超巨大生物が潜む惑星を探検して人類の居住区を作ろう! という感じですね。やはり未知の場所への探検というのは連綿と語りづかれ、その上で尚色褪せない魅力があります。私も普段はテレビとかあんまり見ないのですが、『深海に潜む謎の巨大生物!』みたいなタイトルを見たらのこのこテレビの前に這い出してしまいます。ここではないどこかで自分の想像を超えるような生き物や環境があるというのはやはりロマンですね。

 さて、こういう未知への探索となるとエンタメ的には大きな分岐があると思います。

 それは人間が主役か、それとも未知の生き物が主役かどうかです。これは一概にこれが主役と言えるものではなく、比重によるわけですが、基本的に人間寄りの話しが多いです。そりゃあまあ私たち人間ですからね。自分たちがそこに関わってないとつまらなくなりがちです。

 人の比重が大きければ大きいほど未知の生物や環境といった大きな力に対して、それを獲得して力を手に入れるというのが多くなってきます。これはそもそももっと大きなテンプレートである○○から不思議な力を手に入れて活躍するようなとこからの派生ですね。例えばナウシカとかそうですね。なろう系とも相性は良く、自由度も高いのでweb小説だとよく見かけます。

 未知の生き物が主役の場合、大抵語り手である人間があっちこっちに振り回されることになります。完全に振り切った場合、未知の生き物が語り手となって話を進めるのですが、これが見られるのはSFくらいなもので、あまりメジャーではないですね。

 この比重の割合が作品全体の方向性を決めると言っても過言ではないですが、どうしても人間以外に比重を置くと書くのが難しくなっていきます。感情移入しづらいですし、そもそも作者が人間なのですから自分の種族以外をリアルに読者に伝えるというのが難しいことは分かると思います。

 というわけでエンタメ的な小説だと人の比重が多くなりがちなんですが、この小説はその辺りのバランスが結構未知の生き物側に寄っていて、設定が練りこまれてるなーと感じます。

 SF的な方に寄りつつも未知な存在への畏敬とそれに対する人間の反応というがいい感じでこういうタイプの小説は久しぶりに読んだなーと新鮮でした。巨大生物やSF的な小説が好きな人にはお勧めです。

 

 

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