オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【小説紹介と雑談】『異世界クイズ王 ~妖精世界と七王の宴~』と同じ土俵で戦い、それでも一位になる方法

かつてクイズ王と呼ばれた男、ユーヤこと七沼遊也。
彼が目を覚ましたとき、そこはクイズと妖精が支配する世界、ディンダミア妖精世界であった。

彼を召喚したのは小国の姫、エイルマイル。
この世界で、七つの国の王が競う巨大なクイズ大会が開かれる、それに出場してほしいと告げられる。

しかしユーヤは困惑する、言語は通じるものの、異世界の知識などまったく持っていなかった。
そんなとき、ある人物から決闘を申し込まれる。果たして経験と技術だけを武器に、異世界で勝ち抜くことができるのか――。

 


こんな方にオススメです

・クイズ番組が好きだった方
・クイズに興味がある方
・クイズにガチで取り組んでいる方
・「おいおい、異世界でクイズなんかできるわけないだろ」と思った方

 

おすすめ度☆☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 どうも、私です。月日の流れが早いというか、ff14にハマりすぎているというか。気づいたら記事更新をしていない期間が結構長くなってたのでこりゃいかんと書きに来たというのもあるのですが、今回紹介する小説が純粋にすごいと思ったのが割合としては大きいです。

 この小説、『異世界クイズ王 ~妖精世界と七王の宴~』は題名の通り異世界でクイズ物するって話です。クイズというのは基本的に問題を出し、それにこたえるという形式をとる以上、その世界に基づいた知識が前提となってくるわけです。それを現実を基盤にした場所以外でやるというのはかなり難しいことだと思います。異世界に自然な問題を出した場合、私たちに取っては全くもってわからないものになってしまうので、それをいちいち説明していくというのは本筋から離れてつまらなくなりがちです。私としてはタイトルやあらすじを見てまたアイデアだけの見切り発車っぽいなーと読む前は思っていました。

 しかしながらこの小説はそんな予想を見事にぶっちぎってくれました。一度熱中したら飽きるまで他の事を全くやらなくなる私がこうして紹介をしようと思うだけのパワーがありました。

 クイズという物がその世界の知識に基づいたものであるというのは先にも述べましたが、皆さんも感覚的に理解していると思います。ンベラ星人が好物のノミュイスタはマグマの中で取れる木の実ですが……とか書かれてもわかんないです。ちなみにこれは今私が適当に考えただけです。

 そのような読者に対して説明をしなければならない異世界においてクイズをするとなった場合、一つだけ共通しているものがあります。それは人間の反応です。異世界と言ってもこの小説でやっているのは人間同士のクイズ勝負です。その世界の知識という大きな共通項が抜け落ちてしまっている中で、クイズに対しての人の反応をこの小説は鍵としています。

 なんでもそうなのですが、特に何か対人相手の技術を極めようと思った時に、その物事に当たった人の普遍的反応に対して有利を取る技術というのが存在します。それはそのジャンルにおいて前提を備えているのが当たり前になり、道具的な工夫の要素がなくなった時に出てきやすいものです。

 対人ゲームが分かりやすいと思うので例を挙げます。対人ゲームのトップ層というのはその時点で最強と呼ばれている装備だったり、この行動にはこの行動をするのようなテンプレートを完全に網羅している存在です。そうやって能力的に差が付かなくなった集団の中でトップを目指そうとするならば、そのような前提を抜けた場所での工夫が必要になってきます。それは時には普通のプレイヤーには全く関係のないことであり、そんなの大したことないと思われる程度の差しか生まないこともあります。しかしながら皆が一様に努力し続けて並び立った集団の中で、その上一歩抜き出すにはそのような技術がものすごく重みを持つのです。スポーツや競技などを真面目にやったことがある人ならば納得しやすいと思います。

 この小説は異世界でクイズ物を通してそこよりも深い、上で述べたような対人の競技においての努力についてアクセスしていくようなそんな中身だったのです。それはとても普遍的で、しかしながら努力をし続け、辿り着いたものにしか語れないような工夫です。作者の方は競技クイズの世界にどっぷりと浸かっていたのだろうなと思わせるような知識の幅でした。これをクイズ全くやってなかったけど下調べしまくって書いたよ! って言われたらそれはもう宇宙人ですよ。

 その上でまるで情景を見てきたかのような描写と関わる要素の多さで言えば驚異的ともいえるストーリーのまとめ方といい、作者の方の力量に感嘆しました。

 しかしながら作中でも主人公が述べていますが、クイズという物が大衆の娯楽という世間の前提がある以上、深く競技的な深層に潜っていくのに大衆的な共感は得られません。この辺りの王道感の喪失や切り良くまとめたせいなのか、少し謎が浮いたままになっている終わり方も考えておすすめ度は4にしています。

 しかしながらこの小説で使われてる技量というのは私が今年呼んできた小説の中でもトップに食い込みます。トップですと言い切れないところが今年(私が読んだ年なだけで連載年はあれですが)の豊作ぶりを表してる感じがしますね。

 とまあ長々と語りましたがとても面白く、すごかったので読んでみてはどうでしょうか。切り良く終わっていますし、題材もクイズと取っつきやすいので読みやすいと思います。競技的なことをやっていたよ! って人には特におすすめです。

 

 

https://ncode.syosetu.com/n1867fd/

【小説紹介と雑談】不死なるプレイヤーズギルド

ゲームを始めようとしたら、突然不死の身体と現地基準では貧弱なステータスで異世界っぽい所にぶち込まれたプレイヤー達。
魔法は上手く扱えないわ、死ねばレベルはリセットされるわ、現地の人も魔物も強過ぎるわというハードモード。
それでも死んだらコンティニューできる力を使って懸命に戦い元の世界への帰還を目指す……が早々に飽きた主人公の自由気ままな振る舞いは、やがて世界を巻き込む大事件に発展していく……のだろうか。
これは不死の身体を持つプレイヤーという異物が入り込んだ世界の日常を、記す物語である。

 

おすすめ度☆☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 久々の記事更新となります。更新しなかった理由はff14に今更ハマってたからです。まあどうでもいいことなんですが。

 この小説はコメディ要素多めの異世界転移物ですね。主人公達異世界転移者の命が軽ーく扱われ、あっという間に死んだ後、すぐに復活して何事もなかったかのように次の話しに登場してくるのはすごくギャグマンガっぽいですね。

 こういう方式のギャグというのは小説という媒体でやるのは結構難しいと私は思っています。場面がそのまま目の前にある漫画と違って、突飛なことをやったと文字で書かれたとしてもそれを受け取るのに頭でそれを想像しないといけないわけです。それを成立させるには文章の書き方もそうですが、出てくるキャラクターがみんなキャラ立ちしていてその場面を容易に想像させれないとそれを理解させれないわけです。まあその他にもギャグの面白さなんかも当然あるわけで大変ですよねギャグコメディ。

 その辺りの領域に手を伸ばしているのがこの作品です。コメディ一辺倒というわけでもないのですが、大きな出来事に対して主人公の関わり方が全部ギャグ的で面白いです。そして私はギャグを面白くなく紹介することにかけて一流かもしれません。

 キャラの立ち方もしっかりしていて難しいのをよく成立させてるなと思ってました。作者さんの力量の高さが伺えますね。ギャグ物が好きな人にはおすすめです。

 後余談なんですが、今ジャンププラスでギャグ漫画でハチャメチャに受けたボーボボが毎日一話ずつ無料になっていて、それを毎日楽しみに読んでます。不条理ギャグの頂点という感じなので読んでない人は読みましょう。

 

 

https://ncode.syosetu.com/n3069ez/

【漫画 感想】だんしゃりと機能不全家族

 どうも私です。今日はモーニング月例賞の佳作を受賞された『だんしゃり』の感想です。ここから読めるのでどうぞ。

comic-days.com

 

 それで感想なんですが、なんというか複雑な気持ちになりました。あまり良くない方面で。こういう方面の構造になまじ固まった思想あるためにうーんとなってしまうというか。

 主人公の家庭は明らかな機能不全家庭で祖母や父親の反応がとてもリアルです。このような『外には出ないが家の中で問題が多々ある』ような家庭はありふれているでしょう。ただ外に見えてないだけです。

 このような家庭で育った子供というのは心にトラウマを抱えた状態で大人になっていくわけで、それがアダルトチルドレンと呼ばれる人たちになります。自己肯定感が育たずに身体だけが大人になってしまった人。そんな境遇の主人公が救われるまでの話しを描いたのがこのだんしゃりです。しかしながら思うことが二つ。

 一つ目なんですが主人公は明らかにそのような機能不全家庭で育っているのですが、自己肯定感が結構残っているんですよね。幼い頃からであれば反論なんて出来ず、諦めが先に来るはずなのでこのような口論に発展しないはずです。これは精神が強いとかそういう話しではなく、システムのようなもので外部からの手助けがなければこうなります。

 なのでこの祖母と父親と主人公の三人で暮らすようになって問題が発生したと考えられるわけですが、明確に記されていない母親の存在を考えると中学校のあたりまでは自己肯定感がある程度育まれる環境にあったと考えるのが妥当です。

 この自己肯定感や反骨心がなければ先輩に対して助けを求めるという行為にも家出という行為にも繋がりません。その時点でこの境遇の子供が助かるには『事前に自己肯定感が育まれる環境が必要』という夢も希望もない結論になってしまいます。家族に縛られた主人公が救われる話にこの結論は辛すぎませんか? まずこれが一つ。

 二つ目は先輩の存在です。主人公はこのような重い話を抱えているわけですが、先輩にはそんな素振りが一切ありません。主人公に非常に都合のよく作られた理想の助け舟です。主人公の事を肯定しつづけてくれますし、最後は結婚し子供を作って家族まで作ります。

 こんな都合のいい存在いるわけねえだろ! みたいな話はしません。フィクションなのでこういうスーパーマンがいてもいいでしょう。しかしながら気になる点があります。それは主人公と先輩のきっかけです。

 作中で先輩と主人公の関係は共に好きあってる描写で始まります。先輩側が恋愛感情から熱烈なアプローチ(下級生の教室に来るのは熱烈と言っていいでしょう)をしかけ、自己肯定感が減っているので回答できないものの、主人公も先輩が好きと。恋愛感情を発端としています。

 少なくとも男女逆転させたら成立しないでしょう。先輩側が何の問題もなく主人公を支えられるから成立しています。女性側がぐいぐいアプローチをするならば男性側に何かしらの強みがあるようなエピソードがないとおかしい……となるわけですが男女逆転した場合、もはや別の物語になってしまいます。

 この時点で主人公の性別が女性であり、容姿がすごく悪くはないみたいな前提が必要になってしまいませんか? フィクションなのにあんまりではないですか。救われる素養があるから救われましたなんて話は。これが一つです。

 この漫画の感想をツイッターで見てみるとこの漫画を見てなんだか救われた気がすると書いてあるツイートが非常に伸びていました。かくいう私もそのツイートでこの漫画を知りましたが、少なくともこの漫画で救われた気になっている人はもう十分救われていると思います。

 総じて私にとってはリアルな機能不全家庭の事を描いているのに、時折夢から出てきたような存在が出てきて主人公を助けるので、返って現実が浮き彫りになってしまう漫画でした。

 いろいろと考えさせられたので学びになったなぁと思いつつ、この境遇の人が救われるモデルケースは結婚しかないんですかという気持ちにもなります。現実。

 今日はこの辺で。ではまた。

【雑談】小説を読んでいる時の脳内想像の違いについて

 こんにちは。特に何もない家の階段でコケて身体中打撲まみれになった私です。ここ二日くらいは風邪もひいてずっと寝てたのでここ一週間くらい動けないでいました。弱い。

 さて今回は小説の読み方について。

 私は幼い頃から結構な量の小説を読んできました。基本はライトノベルですが、一般小説だったり児童文学だったり色々。少なくとも同年代ではトップクラスに読んできた自負がありますが、そんな自慢にならないことは置いておきます。

 特に語るものでもないしと思い、読書の感想を他人と語るようなことは全くと言っていいほどしてこなかったので、私には読書仲間みたいなものが全くいませんでした。そもそも探そうとしてなかったので当然なんですが。

 そんな悲しい話しもさておき、インターネットで小説を読む人の話しが少しづつ入ってくるにつれて自分の小説の読み方が周りと全然違うことに気づきました。

 一般的に小説などの物語を活字媒体で読むときは大体の人が頭の中にその風景を思い浮かべて話を進めていくと思います。しかし私の場合、風景などは全く思い浮かばず、すべて言葉の意味そのままで受け取ってそれが滞りなく流れていくのを楽しんでいるという感じでしょうか。

 例を出しましょう。

残月の光をたよりに林中の草地を通って行った時、果して一匹の猛虎もうこくさむらの中から躍り出た。虎は、あわや袁※(「にんべん+參」、第4水準2-1-79)に躍りかかるかと見えたが、たちまち身をひるがえして、元の叢に隠れた。叢の中から人間の声で「あぶないところだった」と繰返しつぶやくのが聞えた。その声に袁※(「にんべん+參」、第4水準2-1-79)は聞きおぼえがあった。驚懼きょうくの中にも、彼は咄嗟とっさに思いあたって、叫んだ。「その声は、我が友、李徴子ではないか?」

  これはかの有名な山月記の冒頭から切り取った一文ですが、大体の人には月明かりの闇夜の中、男が虎に対して会話を試みているシーンが程度の差はあれ、ぼんやりと浮かんでいるのではないでしょうか。

 私の場合は文中の言葉をそのまま意味として受け取って脳内での映像化はせず、意味だけが並んで進んでいきます。

 多分なのですが、普通、脳内で活字を映像化する際の工程として

1.文章のまとまりの意味を把握、映像化への仮組みをする

2.材料を元に想像し、文章と相互に確認し合い更新する。

 という工程で読書してると思うんです。その辺の解像度の差はあれど、この工程以外で読書、とりわけ物語を読んでいる人はあまりいないでしょう。

 私の場合、いつからかはわかりませんが、早く続きが知りたいと思う余り、映像化の仮組みをした段階で、もう意味は分かっているのだからと映像化を飛ばして次に進むことが当たり前になっているという感じです。論旨はきっちり把握しているものの、細部までは見ていないという。

 これ、最近になって気づいたんですが論文の査読読みと似ています。論旨を把握し流れとしておかしな部分がないか確認しつつ、気にならない限り細部を見ない。

 なので評価軸としてはその作品が物語として破綻がなく、面白かったかどうかという読み方になります。アニメや漫画、音楽なんかもこの評価軸になってます。一つ一つをそうやって見るので作者で推すみたいなことがない。作品に思い入れも少ないので中身は語れても作品への愛は語れません。

 物語という共感と創造の分野でこういう読み方をしているのはごく少数でしょう。そして少数の人はそういうことを知らずに生涯を終える人が大半でしょう。こんなことは学校では教えてくれないですからね。

 インターネットのオタクと呼ばれる人たちはみんな作品やキャラクターへの愛を盛んに叫んでいて、それを共有することを楽しんでいます。私も読書が好きというと好きな作家は? と聞かれたことが何度かありますが、そのたびにうーんとなってしまいます。

 いまいち”オタク”という仕草にも乗り切れない割にそういう文化への興味は高かったのでなんでなんだろうなぁと今までぼんやり考えてきましたが、この辺りの答えがこういう物語への接し方に繋がってくるのは中々面白いなぁと思います。

 ちなみに最近、きちんと想像して読んでみようと練習がてらラノベをきちんと工程を踏んで読みだしたのですが、情報量がすごく増えて作品の面白さが増した代わりにめちゃくちゃ読むのが遅い上に疲れました。そりゃあこの読み方で年間300冊とかはなかなか厳しいです。それでも楽しいことは間違いないので習得しておいて間違いないものですね。汎用的な人類スキルの取得率の低さに日々びっくりするばかりです。

 とまあ今日はここまで。ではまた。

 

【雑談】オタクがチェンソーマンに踊り狂えてファイアパンチに踊り狂えなかった理由

 はい。私です。今日はファイアパンチの話しでも。

 皆さんチェンソーマンって漫画知ってますか? 今ジャンプで連載中の人気漫画です。月曜日になるとツイッターでオタクの人たちが踊り狂ってる漫画です。

  リンクはこれです。面白いので読むといいです。

  まあそれはともかく。この漫画の作者の人はその前にも漫画を描いていて、それが今回の話題のファイアパンチです。見たことないって人はとりあえず一話読んでください。無料なので。実はついこないだまで全話無料だったんですけど、細かいことは気にしてはいけません。ちなみに私はアホなので読み忘れてTUTAYAで借りて再読しました。アホなので。

[1話]ファイアパンチ - 藤本タツキ | 少年ジャンプ+

 

 一話読みましたか? 最高ですよね? 面白くなる感じしかしない。私が最初に読んだとき、こりゃあどえらい漫画が来たと思いました。一話にして絶望的な世界できっちりカタルシスを溜めて主人公を主人公たらしめる。新しい風が来たなぁなんて思ったものです。ネットでもかなり話題になってましたね。すげえ漫画が来た! みたいな。

 でまあそこからだんだんと遠くに飛んで行ってしまったわけですが、実際読んでいて伏線や展開の仕方、絵の上手さ、あと漫画の構図はめちゃくちゃに上手いわけです。絵に関しては週間の今より上手い気さえします、まあ背景が雪景色が多いというのも原因ではありますが。

 じゃあ何がダメだったのかと言えば、私的には展開の速さだと思うんですよ。それと映画っていう趣味要素を前面に絡めた感じ。

 私はそこまで映画に詳しくはないのでここがこの作品の影響を受けているなというのを的確に表すことはできませんが、伏線の張り方や構図や演出などに雑多な映画の影響が染み出ています。色んな媒体から影響を受けているのは感じますが、映画の分量が多い感じ。

 映画というのは漫画や小説なんかよりずっと尺が短いもので、普通なら二時間弱、長くても二時間半程度で終わってしまいます。なので無駄な描写や意味の薄い描写を挟んでいるとあっという間に時間が無くなってしまう。常に意味のあるシーンを映し続けないといけない。この辺りの映画の原則がこの漫画にも表れていると感じます。常にノンストップでストーリーを走らせ続ける。

 しかしまあ漫画というのは静止画であって動きを演出するにも限度があります。その上少なくとも映画っていうのは喋って動いてくれるのでキャラクターや世界観のリアリティをある程度担保してくれるのですが、漫画は説明がなければなかなか厳しい。絵で説明するにも限度がありますから。

 これが世界観的に馴染みのある現代とかだったら現実がある程度担保してくれるんですが、ポストアポカリプス的な世界観を使っているので説明する必要が結構あります。それを趣味的な映画という要素に絡めてハイペースでポコポコ進んでいくので読者が置いてかれたというのが私の感想です。なかなかないですよ。読者が離れていったんじゃなくて作品自体が遠くに行っちゃうの。

 チェンソーマンはその辺しっかりしていて担当の方がきっちり手綱を抑えてるのかなぁと感じます。このまま飛んで行かずに行ってくれよ……と失礼な心配をチェンソーマンにはしてるのですが、オタクたちが踊り狂ってる間は大丈夫でしょう。今のジャンプは面白い作品がたくさん出てきてすごいですね。

 ではまた。

【小説紹介と雑談】暴食妃の剣とweb小説のゲーム的表現

 

タイトル:暴食妃の剣 感想

貧しい者は真っ当な武器を持てず、命を懸けて戦おうとも、冒険者として大成することはできない。
 三流冒険者ディーンは、魔獣と戦うことよりも荷物運びや魔獣の解体などの補佐に徹する《運び屋》として貧しい生活を行っていた。
 あるときディーンは雇い主の男の判断ミスによって魔獣の群れに囲まれる羽目に陥ったばかりか、魔獣の気を引くための囮にされてしまう。
 しかし、偶然逃げ込んだ先で、膨大な力を秘めた暴食の悪魔の心臓を手に入れる。暴食の悪魔の心臓は、喰らった相手の力を奪う能力を秘めていた。
 ディーンは相手を喰らうことで無限に成長する暴食の魔剣を手に、一流の冒険者となることを志す。

 

 

おすすめ度☆☆☆(☆) 

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 この小説はハイファンタジーの冒険活劇ですね。うだつの上がらなかった主人公がある時、すごい力を持った悪魔の助力を経て相手のスキルを強奪できる魔剣を手に入れ、そこから成り上がっていくという感じです。ハイファンタジーではありますが作中世界だとスキルという要素が当たり前に存在しているので、その辺はやはりゲーム的……というよりweb小説ゲーム物的と言うべきでしょうか。

 こういうジャンルの小説だと一足飛びに強くなっていき、周りの人間をあっという間に追い抜かしてカタルシスを得るみたいな展開が多いわけですが、この小説ではあくまで魔剣を手に入れたことはきっかけであり、強敵に苦戦しつつもそれに勝利し力を手に入れ、そしてまた別の強敵……と地に足付けて強くなっていきます。いや、まあそれでも成長速度は普通に考えればやばいんですが、成り上がりの要素を含む物語だとこれくらいでも十分に丁寧に感じます。

 スキル的なわかりやすい成長要素とその成長があって立ち向かえる強敵たちとの熱いバトルがこの小説の魅力ですね。成り上がり的な要素と冒険活劇の二種類。

 この小説でもそうですが、昨今見かけるハイファンジー小説で冒険メインとなるとかなりの割合で見ることになるスキルという要素。実際のところ分かりやすく成長を見せられ、説得力もあるのですごい発明なんだなぁと感じます。

 多分これが流行ったのはVRゲーム物のようなゲームを題材にした物が流行ったからというのが理由の一つな気がします。その流れで「あれ? これTRPGのスキルシステムとの方が相性良くね?」という気づきがあり、TRPG的な表現の仕方が流入しているといった感じな気がしますがどうなんでしょうね。

 ステータスやスキルなんて要素は浸透してはいますが、その表現なんかはかっちりしてるわけではないですからね。しかしながらスキルやらステータスと言われた際に、ゲーム的ではなくTRPG的な表現の方が多くなってきたのは確かだと思います。

 最初期はMMORPG的な表現が多かったわけですが、今MMORPGは下火です。理由的にはいろいろあるんですが、少なくとも今あるMMORPGだとよく見る小説の描写にそぐわないわけです。ああいうスキル性の凝ったMMORPGやりたい……。

 そうなるとスキルなんかの要素は使いたいものの、読者に馴染みがなくなってしまう。その辺の兼ね合いもあって比較的シンプルなTRPG的な表記が流行ったのかなぁと。まあこの辺り意識して書いてます! って人の方が少なそうではありますが。まあ真相はどうかわかりませんが、面白い変遷ではあります。

 とまあ小説の話しに戻りますと、もうこの小説は書籍化されています。少し粗はあるもののRPGのような没入感と冒険活劇はやっぱり面白いですね。そういうのが好きな人にはお勧めです。

 ではまた。

 

kakuyomu.jp

 

 

暴食妃の剣 感想

【小説紹介と雑談】迷宮のアルカディア

冒険者として成功するため迷宮群都市へとやってきた少年アルケインは、自身の未熟さから初日で命を落とす。再び彼が目覚めた時、そこは見知らぬ部屋だった。そこで彼はひとつの真実を知る。そう、自分が今まで生きてきた世界はエロゲの世界であり、自分はその主人公であることを…………。攻略サイトから世界の全てを知った時、彼の運命はシナリオを外れた。これは、何の因果か現実の知識を手に入れてしまったエロゲの主人公の話。
ノクスノベルス様より書籍化決定いたしました。

 

 

おすすめ度☆☆☆☆ 

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 

 この小説は異世界転生物です。まあ厳密に言えばちょっと違いますが、内容的にはその文脈なのでこの分類であってると思います。言い忘れてましたがこの小説はR18です。具体的にはエロシーンが結構がっつりあるので苦手な人は注意です。メインがエロではないので紹介します。

 内容に触れますと主人公が自分の生きている世界がエロゲーの世界であると気づき、攻略サイトの中身を覚えた状態で強くてニューゲームといった感じです。

 この小説の良いところとしては主人公一行は攻略サイトの力で周りを圧倒できるくらいに強くなるのですが、敵も強く苦戦を強いられることです。周りを抜いて強くなっている楽しさとそれはそれとしてそんな自分達よりも強大な敵というのは面白さのいいとこ取りでうまいなぁと思います。

 後は最初に言った通り、R18なのでエロシーンががっつり描かれてます。まあ実際のところヒロインと両想いですってなったら行きつくところまで行くのが普通のことで、メイン読者層を考えてその辺が省かれてるライトノベルがおかしいと言えばそうなので自然な流れではあります。そらヒロインが美少女なのもハーレムが欲しいみたいな欲望も行きつく先はそういうことなわけで。

 しかしながらそういうR18なシーンに力を入れると違うジャンルとして成立してしまいますし、その辺本筋からズレるという理由でも描かれないわけですが、この小説くらいの量だと話の本筋からも逸れてませんし、そもそも主人公の行動理由に合致させているのであまり違和感はないですね。

 総じてゲーム的な成長要素をハックして周りより成長する感じの小説としてよくできていて楽しく読めました。エロシーンに抵抗がない人には結構お勧めです。

 余談ではありますが、R18の小説は全くと言っていいほど見ないので面白い作品を見落としてるのかなぁなんて思いました。この小説はたまたま見つけたのですが、そもそもR18的要素を小説に求めていないのでなかなか見つけ辛いと言いますか。なろうにもR18用の場所がありますが、わざわざ見に行こうとはなりませんしね。

 この小説は書籍化されているわけですが、その辺りのコミュニティの規模なんかも全く知らないのでちょっと興味はあります。気が向いたら少し調べてみようかななんて思いました。

 ではまた。

 

 

 

 

 

【小説紹介と雑談】正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になるとワンピースについて

変な果物食べて、見知った正体不明の妖怪になりました。色々あって絶望したけどメンヘラ龍のお供として彼と愉快な仲間たちと楽しくやっていこうと思います。

 

おすすめ度☆☆☆(☆) 

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 久しぶりに小説の紹介記事です。ワンピースと東方の二次創作ですね。主人公は東方のぬえの能力を持って転生した現代人という感じなので、基本的にワンピースの世界観がメインです。

 ワンピースはもはや説明する必要もないほど有名な漫画ですが、最新刊まできっちり追ってる人というのはどのくらいいるんでしょうかね? 私は最新刊1~2巻手前くらいは追ってますが。

 ネットだと○○編くらいまでがワンピースの全盛期だったみたいな話しが盛んに言われてますが、私的には最新刊までどれも面白いなぁと思ってみてます。個人的にはアラバスタ編までとそこからエニエスロビー編辺りで作風が転換したような感覚はありますが、どれも面白さがあってタイプが変わったという感じですかね。週間連載でこれをやってるというのはまさしく超人的だなぁなんて思います。

 この小説の話しに戻ると転生した主人公がのちに四皇の一人になるカイドウと幼少期に知り合い、一緒に成り上がっていくというストーリーですね。今本誌だとちょうどカイドウがメインでやってるので一緒に読んでおくと補強できますね。

 この小説の魅力としては丁寧な過去話や原作の掘り下げなんかもそうなんですが、何と言ってもワンピースっぽいんですよね。台詞回しとかキャラの作り方が特に。ワンピースの世界観が再現されてるというか。

 あの世界観ってかなり懐が深いというか、割と何でもありじゃないですか。主人公の力が体の体質がゴムになるなんて一歩間違えばギャグ漫画ですし、そういうシーンはやまほどあるんですが締めるところはきっちり締めていて面白い。その辺の懐深さが面白さの土台としていろんな出来事を柔軟に受け止めていて、面白さの理由の一端を担ってる感じがします。

 二次創作なのでもちろんオリキャラの主人公もいろいろしまくるんですが、それがきっちり世界観に乗っているので面白く見れるというか。話が進むほどにどんどん世界に馴染んでいく感じがいいですね。

 この小説、今も連載中なんですが本編の方の時系列に追いつきだしてるので、その辺りの情報が出るまでアクセル全開とはいけないのが難しいところです。本編の世界観を重視しているということはオリキャラを出しまくりが厳しいということですし。いや、やり方次第ではあると思うんですけど、どのくらい筆力があればできるのかは謎なとこです。

 ワンピースが好きという人には結構お勧めできます。二次には疎いのでアレなんですが、ワンピースの二次創作ってかなり多いみたいですね。最近更新されているという理由でこれを読んでたんですが、他にも探してみようかなと思いました。

 ではまた。

 

 

 

【雑談】虐殺の文法を応用して催眠おじさんになった人

 最近面白いネット小説がめっきり見つからなくてアニメとか映画ばっかり消化してます。今日はその辺の雑談でも。

 最近の映画週間として前々から気になっていた虐殺器官の映画を見てきました。まあ映画自体は演出のメリハリが出来てなくて微妙だったんですが、内容自体はとても面白かったです。一応言っときますがネタバレするので気を付けてください

 その中で虐殺の文法というものが出てきます。簡単に言えば人間には共同体の人数を調整して生き残る確率を上げるために、ある特定の文法を使うと争いが起こるような仕組みがあるみたいな感じですね。

 これ自体はとてもよくできた設定で現実にあるとは思ってないんですが、一時期寝る前の思考実験で似たようなことを考えていました。まあ別に虐殺がどうのとかではないんですが。

 その内容としてはある人間に対して望むように動かす言葉や振る舞いは存在するのか、それを察知できるのかという感じ。同人誌の常連である催眠おじさんは現実で存在するのかみたいな話ですね(?)。

 催眠おじさんは現実にいないと思うんですが、相手に自分の金を振り込ませるみたいな詐欺の話しはいつになってもなくならない訳で、相手を自分の思い通りに動かす術自体はあるわけです。しかし詐欺の場合は相手に勘違いをさせてお金を奪い取っていますし、誰でも引っかかるわけではないですよね。私が考えていたのは相手の求める物を支払えるコスト(言葉や振る舞い)などから捻出して円満に行動を意図した方に持っていけるのかという感じです。

 まあ思いどおり相手を操る手段なんて物は魔術の類で、私はとても悔しいことに魔術を修めてはいませんから現実的に考えていきました。

 人間は社会的な生き物なのは皆さんご存じのとおりですが、それゆえに人それぞれ自分の好む他者とのコミュニケーションがあります。初対面や浅い付き合いでそれを見抜くことは困難ですが、少なくとも正解があることは間違いないはずです。初対面だろうが”理解”ってる言動されたら私も二秒で堕ちますし、人によって方法は違うとはいえ何らかの心を掴む手段があるはずです。

 まあそれがわかるなら苦労ありませんし、初対面で会話が続かなくて気まずくなるなんてこともないんですよ。しかしながら十人十色とはいっても文化部分は皆同じ社会で育っていてそこまで違うことはない訳で、相手のバックグラウンドを服装や振る舞いから予測して最適解に限りなく近い答えを出すことは可能なのではないか? というのがこの思考実験だったんですが、明らかに寝る前に頭の中だけで考えれるレベルを超えたので考えるのやめました。

 そもそもバックボーンを文化から予測するという都合上、その年代の人間はどのような文化をどう辿ってきたのか調べなきゃいけないですし、常に更新し続けていないとすぐに陳腐化するので分類自体のコストがやばいんですよ。しかもちゃんと検証するなら実験がめちゃくちゃ大変、というより検証できないでしょう。個人で適当にやるとしてもコストがやばいし、正しさを証明する方法がないので間違っててもそれに気づけない。

 そもそもこれ論文とかにするのってめちゃくちゃ反対されますよ。レッテルを勝手に張るのは一番嫌われることですからね。それでいてやれることと言ったら人より早く仲良くなれるくらいなもんです。リターンの割にコストがでかすぎるというのが結論です。同人誌の竿役おじさんはすごいってことですね。

 いつになく適当な記事になりましたが以上です。ではまた。

 

 

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

【雑談】ミステリというジャンルについての所感

 今日はミステリというジャンルについての話しでも。

 ついこないだやっていたID:INVADED イド:インヴェイデッドという作品があったので見てきました。今ならアマプラやネットフリックスで見ることができます。リンクは下に。

www.amazon.co.jp

 

 

 まあ普通に面白く見れたんですが、それはこの作品がSF的な物語を内包してたからであって、私は純粋なミステリというものが楽しめない性質というか。

 そもそもミステリというジャンルの楽しさというのが謎を解き明かしていくことだと思うんですよね。たぶん。

 名探偵に自分を重ねるというのは厳しいと思うんですよ。それだけの洞察力を読者は持ち合わせていないわけですから、名探偵の言葉でそれに気づくというのが普通になる。それに自分を重ねるのはなかなかに厳しいですよ。もちろんそのような楽しみ方もあると思います。作中の材料を吟味して自分で謎を解き、それの答え合わせとして名探偵と自分を重ねる。確かに楽しいでしょうが主流ではないと思います。

 それでですが、ミステリを好んで読む人は考えるに謎という要素が解き明かされて行く様子が楽しいんだと思うんですよ。例えるなら数学の式なんかと同じ感覚で、美しく作られた数学の問題なんかが綺麗な途中式や解になっているの、気持ちいいですよね。それがもっと人間に寄ってきているのがミステリというか。まあ私は数学なんて全く履修していないんですけど。

 その辺りの類似性としてミステリの謎というのは事実に即していないといけません。リアリティの要求が他のことより格段に高い。

 例えばですが事件だ! ってトリックの話しになったら突然冷凍庫に合った冷凍イカで殴ったので証拠が残らなかったなんて言われてもええ……? って困惑します。嘘ですよ? 相棒のことは好きです。

 脱線しましたが、なんやかんやで密室殺人が成立した! なんて言われても納得できないわけです。そのなんやかんやが重要なんだと。そこがあやふやだとそもそも成立しない。

 基本的に物語というのは感情をベースとした物です。感情というのは不確かなもので、揺らぎやすいものです。それを見て揺らぐ自分の感情も。物語ではそこを楽しむわけですが、ミステリでそれを出せる場所は限られているわけです。精々犯人の動機くらいなものですが、その辺りですらこんな出来事があったので○○の事を恨んでいましただとかの理由付けが求められます。厳密で余地が少ない世界です。基本的に事件を解き明かしていく、つまり結果から辿っていくとなるとなんにでも根拠が必要になりますからね。

 謎というのは突き詰めていくとどんどん機能的になっていくものです。一見すぐには分からないものの事実を複合的に組み合わせていくと真実が見えてくる。その間にあやふやなものはないわけです。過去に遡っていくわけですから。もう起こったことは揺らぐ余地がない。

 その辺り感情喚起的な物語が好きな私だとあんまり相容れないというか。起こったことは変えられないことで、変えられないことに対して考えてもしょうがないみたいな私の考え的に面白く見れないというか。なんでも楽しみたいという私的にはなかなかつらいことですが、パッと矯正できるものでもないんですよね。難しい。

 ミステリが好きな人は理系的な人なのかもしれないななんて勝手に思ってます。勝手に思ってるだけなので正誤は知りません。まあそんなことをID:INVADEDを見ながらつらつら考えてました。私がただ面白いミステリに出会ってないというのが案外真相かもしれませんね。

 ではまた。

 

 

 

 

 

 

 

 

【映画感想と雑談】『来る』は人の悪意をテーマにしたホラー

 今プライムに『来る』というホラー映画が公開されています。リンクはこれです。www.amazon.co.jp

 

 昔からあまり実写映画は見ないので来たのですが、まあそろそろ手を出す頃合いかなぁと最近ちょっとずつ手を出してますね。

 そもそも映画って二時間くらい動かないでそれを見る集中力がいるじゃないですか。アニメとかの映像作品全般がそうですが、そうやって長い時間落ち着いてることが出来なかったので見てこなかったわけです。

 今はまあ椅子にふん縛ることをしなくても何とか耐えれるようになったので履修するかと重い腰を上げました。直近で言えば『パラサイト』とか『ジョーカー』とか見てましたね。で今回は『来る』の感想と。

 まず最初に言っておくとめちゃくちゃ出来が良くて面白かったです。私自身はあんまり映画を見てきてませんが、非常に丁寧に作られていて、伏線の回収なんかも本当に綺麗で感心してしまいました。ストーリーラインなんかは元々の原作小説がすごいというのもあると思うんですが、きっちりと粗なく仕上げてくるというのはこの映画の監督が原作を理解しているからだと思います。すごい。

 ここから先は内容についての感想です。がっつりネタバレするので注意。

 

 

 この映画、序盤中盤でめちゃくちゃ丁寧に田原夫妻の成り行きが描かれて行くわけなんですが、まずその辺りの描写のリアリティがめちゃくちゃすごくて、いや質感すごいな……となってました。なかなかあんな偽幸せの家庭みたいなのをリアルには描けないですよ。

 それでまあ丁寧に怪異である「ぼぎわん」の情報を追加していって、夫妻と関わった人間たちがどんどん破滅していくわけですが、その辺りの流れがめちゃくちゃ丁寧ですよね。怪異のパワーアップ方法(お守りの件や犠牲者の数とか)もその辺りのきっちり抑えられていて、終盤あれだけ暴れまくっても納得できるというか。めちゃくちゃ丁寧な田原夫妻その周辺のエピソードの前振りのおかげですね。

 そして「ぼぎわん」との最終決戦となるわけですが、その前に「ぼぎわん」の賢さがすごいんですよ。最初の田原さんを電話で騙して殺したシーンとか、仲間として呼んだ霊媒師が移動中に殺されちゃう。こんなことを考え、実行できるのは人間くらいなものです。

 一つの怪異という言ってしまえばそれだけの存在だったはずなのに、悪知恵を持ち合わせたもっと悪辣な怪物になってしまっている。ここに至って「ぼぎわん」というのは人の悪意に力を持たせたモノになっているわけです。殺し取り込んできた人間たちはみんな誰もが持っているような人間の悪性があったわけですが、それが悪いと断じることができるほど人間って強くないですよね。この辺りでこの映画を通して恐怖を与えてくるモノとして描かれているのは人の悪意なんだなぁと感じました。どこにでもあって目に見えないもの。

 そして最終決戦。真琴の姉である琴子が中心に霊媒アベンジャーズみたいな感じになるわけですが、手あたり次第にいろんな手段を集めて対抗してもボッコボコにされます。人の悪意に人間は宗教や法律と色んな手を使って何とかしようとしてきたわけですが、現代までそれを完全に抑え込めてはないわけです。そう考えてこの辺りを見るとメタファーになっているのかなぁなんて思えますね。

 琴子さんが最終的に除霊するまでにいろいろあるわけですが、本編で野崎に対して琴子さんが言っていたこととして、守るべきものを失うのがとても怖いので作らないようにしているあなたと私は似ているのかも、みたいな話しがあります。

 人の悪意に対して勝てる人間というのは弱みがない、つまり付け入る隙が無い人なわけです。琴子さんは完全無欠のように見えましたが、唯一真琴という自分の妹がウィークポイントだったという。冷たいようでかなり気に掛けているのが出てますしね。予定パンパンの最強霊媒師がまだどうでもよかった頃の「ぼぎわん」に電話越しと言え何とかしようとしてたんですよ。そこからまた妹の真琴が再び関わるまで出てこなかったんですからもうね。ツンデレです。

 そのせいで本人が言うところの無様な除霊になってしまったわけですが、真琴を逃がしてタイマンに持ち込んだらあれだけ暴れ散らかしてた「ぼぎわん」にも普通に勝ってしまいます。野崎が知紗を救えたのはトゥルーエンドのボーナスというか。自分の悪性から逃げなかったから。この辺りの関係はとっても納得がいってすごいなぁと感心しきりでした。とっても面白かったです。

 

 とまあべた褒めしてなんですが、やっぱりホラージャンルは苦手ですね。ホラーって登場人物が勝てることがほとんどないんですよ。勝ってもすごい犠牲の果てとか生存が勝利報酬とかがほとんどで対抗手段のほとんどが対処療法というか。

 大体ホラーの題材って身近にある恐怖なわけです。虫とかへの生理的嫌悪をあおったり、暗闇での無力感とか。今回の映画で言えばホラーの根源は人の悪意なわけじゃないですか。もう現実でそういうのを感じつつ過ごしてきてるんだから増幅して伝えてこなくても……みたいな気持ちになります。フィクションの中くらい勝ちたい。

 まあ作品の出来と私の好き嫌いは別としてるのでまた機会があったら他のホラーも読んだり見たりしますが。またなんか見たら感想でも書きます。

 

 

来る

来る

  • メディア: Prime Video
 

 

  

【小説紹介と雑談】Dジェネシス ダンジョンができて3年

【タイトル】Dジェネシス ダンジョンができて3年

地球にダンジョンが生まれて3年。
総合化学メーカーの素材研究部に勤める上司に恵まれない俺は、オリンピックに向けて建設中の現場で、いきなり世界ランク1位に登録されてしまう。

あり得そうな世界であり得ない力を持たされた主人公が、世界の趨勢になるべく関わらず生きていこうとする、緩い(彼の希望)物語。設定はハードSFなのに、主体は主人公の日常です。

 

 

おすすめ度☆☆☆☆ 

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 久しぶりの記事更新になります。小説自体は結構読んでいるんですがどれもブックマークの続きなので、新しく読んだものがあんまりないのが現状です。一応何作かは新しく読んだりしてみてるんですが、どうにも読み進められてないですね。過去記事を直すのもやってるんですが、めんどくさがって心理的ハードルが上がってるのがブログ更新をサボってる一番の理由かもしれません。まあぼちぼちやっていきたいと思います。

 この小説は現代ファンタジーですね。地球にダンジョンが出来て色んなファンタジーが日常になったところで主人公がひょんなことから特別な力を手に入れ活躍するって感じですね。

 この流れはかなーり使い古されていてこのあらすじだとかなりの数、該当する作品がありそうです。基本的に主人公が手に入れた力を背景に好き放題するというのがテンプレであり、この小説もそれに漏れません。みんな手に入れた力で好き放題したいですからね。突然降ってきた五兆円で自由を謳歌したいというのは人類皆の普遍的な欲求です。

 この流れ自体に面白さがあるのは確かなのですが、そこにも面白い面白くないの差が発生します。その辺の差は周辺のリアリティがあるかに集約される感じがあります。

 結局まじめにやってると辛くて苦しいのでその辺を手に入れた力ですっ飛ばして楽しい思いをしたい! というのがこの流れの、ひいてはチート物のコンセプトなわけです。

 これがなんで楽しいのかって言ったらそりゃあ普通にやれば辛くて苦しい修行パートを飛ばせるからですよ。そこがアドバンテージであってそのギャップがないと無双してる主人公が基準になっちゃいますからね。だから主人公が活躍する周りでリアルに準じた人や物がきっちり支えてあげるのが重要というわけです。そうしないと主人公の活躍に価値がなくなってしまう。

 その辺り、この小説は設定が練られていて周りの反応も大げさじゃなくてリアリティが感じられます。リアリティが感じられるってのが重要で本当かどうかはあんまり関係ないですね。

 他にもこの小説には他の有名な作品からの引用が多く、かなりの脚注があるという珍しい特徴があります。この辺もちゃんと現実と地続きですよーって感じがしてリアリティが増すなぁと思いました。

 ここから先は私個人の考えなんですが、この作者さんは理系的な描き方をするなぁという印象が。理系的というかアカデミックな描き方と言ったほうが正しいですね。この感覚は結構いろんな小説を読んできましたがたまーにあります。文系理系ってどう定義してんだよと聞かれると答えに詰まるんですが、まあふんわりとした感じで受け取っておいてください。

 基本的に物語って感情を描く物なんですよ。作者というのはそういうものを多かれ少なかれ見て育ち、自分の感情を伝えようと作品を創り始めるので基本的には文系側なわけです。基本的には感情が優先されて出力されると。厳密にはもっといろいろあると思いますがふんわりですよ、ふんわり。なのでこういうチート系になるとチートによる体験がメインになって世界の方は最低限になりやすいというか。

 理系的って言ったのは世界の方が優先度が高くてそれにキャラ達が合わせてる感じがするからです。感情より事実重視というか。まあフィクションなので事実ではないんですが。フィクションで事実重視なんて矛盾しているように見えますが、理系の考え方(ふんわり)が根っこにある人が、あとから創作物とかに嵌まるとこのパターンになるのかなぁなんて予想してます。ちなみに私の妄想でしかないので全然ちげえよバーーーカとなる可能性も普通にあります。個人的には結構当たってるような気はしてますが。

 こういう教養なんかがふんだんに盛り込まれていて高学歴の人特有の世界観を描かれると少し羨ましく思ったりもします。もう少し勉強しとけばよかったかなーみたいな。まあ私、興味ないことは本当に出来ないので無理なんですが。この辺の価値観の差みたいなのの詳しい話はまた別の記事にでも書きますかね。

 

 とまあ脱線しまくったんですけど普通に面白く読めたのでお勧めです。

 

 

https://ncode.syosetu.com/n7945fn/

 

 

Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 01
 

 

 

 

【雑談】所謂テンプレはどこから来ているのか

 今回は雑談です。話題はテンプレについてですね。

 テンプレートは今日日、色んなところで聞く単語ですが今回の話しでは小説や漫画、アニメなどに出るテンプレートについてでも。

 基本的にジャンル分けされていてどんな部類の作品でも類似の作品が相当数ある現状、テンプレというのはもう出来ているものです。それが人気ジャンルならばなおのこと。

 例えば釣り目のキャラは強気、クールなキャラは寒色系のカラーというようなキャラクター造形のテンプレや、なろうで言えば異世界転生物や悪役令嬢物といったストーリーのテンプレというのが脈々と受け継がれてきているわけです。

f:id:yururikachang:20200716173935j:plain

釣り目でクールキャラな18号さんは全体に青のカラーがチョイスされています

 このような”お約束”というのはそのようなポップカルチャーに触れていると自然に覚えていくものですが、その実それがどこから、どうやって出来たのかというのは意識しないとわからない項目だったりします。消費するだけならそんなことは考える意味がありませんし、それを知ったからどうなるというわけでもありませんしね。

 しかし皆さんも覚えがあると思いますが、この○○なんか薄っぺらいなーと見るのをやめたり、なんかもう予想できるしつまんないやと放置してしまう。こういうのってそれこそよくありますよね。

 基本的に世の中の漫画、小説(特にラノベ)の半分以上はその辺りのテンプレートを感覚でしか理解していないか、もしくは型の輪郭ははっきりわかるもののそれ以外ができないため、そこを守りつつオリジナリティを出してくる他作品との競合に負けてしまっています。

 割と当たり前のことなんですが、テンプレというのは同じジャンルの作品群がそうしているからという理由で出来ているわけではありません。

 テンプレートの起源は基本的に必要性があったためそうなっているんです。

 例えばですが清楚な少女のキャラクターがいたとします。清楚という個性があるため、派手ではなく、基本的に保守的な性格になるわけです。そんな謙虚な彼女が髪の色を染めたり、自己主張の激しい髪型をすることは何か理由がなければないはずです。ということで日本人の基本的な髪色である黒髪、もしくは黒が濃い茶髪のショートカットやロングになることが自然である……となります。

 同じようなことがストーリーにも言えます。例えば悪役令嬢物は必ずと言っていいほど序盤で転生前の記憶を思い出したり、何かしらのアドバイザーが現れます。これは物語の起を担う役割とこのままいけば悪役令嬢ですので悪役として断罪されてしまいますから、流れを変える存在が必要という理由があります。他にも転生だと著者である現代人の土俵で描きやすいだとか、その他細かい理由はいくつもありますがストーリーは複合的要素が多いので一部抜粋にとどめます。しかしながらそのどれもが必要性に駆られてのことです。

 必然性によって開拓されたその初めの一歩を皆が有難がり、道しるべとして利用するからこそテンプレというのは生まれることになります。その辺を理解しないで型だけなぞっているとなんか中身ないな……となってしまう作品が誕生するわけですね。

 基本的に受けている創作物というのはそのような必要性によってできたテンプレートを必要性によって壊し、ギャップを生んでオリジナリティを出すか、新しい領域を開拓してテンプレートを生み出すかのどちらかなわけですが、かなりの領域が開拓されている現状、前者が多いのは自然の摂理とも言えますね。

 とまあこれから先は脱線になりそうなのでここまでに。最後に清楚なキャラクターの画像を貼って終わりにしたいと思います。

 

f:id:yururikachang:20200716175542j:plain

清楚な月ノ美兎さん

 

【感想】シャンフロ コミカライズの感想

 前に紹介したシャングリラ・フロンティアが書籍化を飛び越えてマガジンで漫画化されました。これだけの人気があって書籍化していないというのはまあ何らかの形でトラブルがあったんだなと思っていましたが、いきなり週刊誌で漫画化というのは予想を飛び越えた展開です。

 展開も早く、pvを出したと思ったらすぐに本誌での連載が始まりました。いまなら無料で一話読むことができます。下がリンクです。

pocket.shonenmagazine.com

 

 

 それでまあ読んでみての感想なのですが、正直なところがっかりしたというのが本音ですね。がっかりというのは正しくなく、より正確に言うならばまあそうなっちゃうよね……というのが正直な思いではあります。ツイッターなんかで見てみると好評な声が多く、この作品は固定層めちゃくちゃ多いという事実を再確認しましたが、個人的にはうーんと思ってしまったのです。気になった点をいくつか。

 

 ・原作の要求量に達せていない

 シャンフロは数多のゲームを渡り歩きつつ、メインであるシャングリラ・フロンティアの攻略を進めていくわけですが、漫画という題材でやる以上、作画というのは基本的にメインの作者が一人で、あとはアシスタントという感じになるわけです。船頭多くして山に登るとも言いますし、複数の人がメインを張ることはできないわけです。頭を決めてその人の絵柄を使ってやっていくことになります。

 しかしいろいろなゲームを渡るという作品のコンセプト上、その一つ一つに最適なキャラクターデザインがあるわけで、作画側の人はそれをきっちり確認した上、自分の絵柄で出力しなくてはなりません。この一話だけでも

・冒頭のフェアクソ

・主人公のリアル

・シャンフロ

 と三つの書き分けの要求がありますし、原作が進むほどロボとかファンタジー生物だとか作画要求が跳ね上がっていきます。なので作画側の負担がめちゃくちゃでかい。

 この漫画を担当している方の絵が下手とは口が裂けても言えませんが、原作側が求めてきている要求があまりにえげつないので、達することができていないというのが一つ。

 

 ・演出に対しても立ちはだかる要求量の多さ

 基本的に舞台がゲームであり、膨大な情報量を一人称の形で限定して出力している原作ですが、紙面に制限がある漫画という媒体と相性が悪いと言わざるを得ません。VRとはいえゲームの戦闘描写というのはひと手間多くなりスマートに描きづらいですし、その上一人称なので主人公の思考がそれに付随します。それを完璧に描き切って取捨選択するというのはもはや神業でなければ無理なのではと思っていたわけですが、実物を見ると頑張ってはいるもののやはりもっさりとした感じに。

 小説ならすんなり飛ばせる場面も漫画だとそうもいきませんからね。この本編での例として、主人公がハシビロコウ的な仮面をつけて戦う場面というのは、小説ではあまり気になりませんが漫画だとかなりシュールです。

 これはなぜかというと小説は一人称で、主人公の目線で進むので戦闘場面で表したいこと、つまりゲーム内での戦闘に対しての興奮にフォーカス(視点)が向くので見た目の事はフェードアウトしているわけですが、漫画だとそうもいかないので全体像を描かねばならないからです。

 こういう描写に対して考えられる解決策としては主人公のフォーカスに合わせて仮面を透かして読者とフォーカスを合わせるなどが考えられますが、他にも色々解決策はあるでしょう。

 他にもゲーム的演出を入れる時にそのまま文字などで入れるとその場面の主題から遠ざかってしまう問題や、そのまま表現すると作画コストが天井知らずになる問題など作画側が漫画造形に死ぬほどうまくないと解決できない問題などが少し考えるだけでもめちゃくちゃあります。前者は画力でそういう描写なしの表現をする、後者はデフォルメをうまく使うなんかが思いつきますが、どれだけの超人を連れてくればできるんだって話です。求められるものが多すぎる。

 ・キャラデザ

 これはまあ個人的な話しなんですけどヒロインちゃんのキャラデザが想像と全く違っててめちゃくちゃ悲しくなりました。恋愛ヘタレお嬢様で文武両道の清楚なんて黒髪ロングのベタ塗りしかないだろと思っていたんですが……垂れ目でエアリーボブ。恋愛経験値はナメクジなのになんでそんなゆるふわコーデ? まあそれもなくはないって感じなんですけど……ですけどー! 今後の動きを考えるとそのほんわかしたデザインでヘタレムーブというのは違和感しかないというか……。

 原作の設定で髪型とか公開されていたのかと思って漁ったんですけど出てこなかったのでこれが初出っぽいです。ここにあるんだけど節穴か? ってなった人は教えてください。

 原作者の監修が絶対入っている以上、これが正しいんだと思いますが……。泣いています。

 他にも三つの世界が一話で描かれているわけですが、どれも服装が変わっただけでその世界のキャラデザじゃないなーと感じます。全部画一的というか。まあコスト的に言えば仕方のないことではあるんですが、納得はしたくない。

 

 大まかに言えばこんな感じですね。細かく言えばいくらでも言えますが、これは一重にVRゲーム物という作品の漫画化難易度が高すぎるのが原因だと思います。

 こういううるさいオタクというのは私含め少数でしょうが、何となくのような言語化できない理由で読むのやめたとなる人は結構多いと思います。

 これから先、マガポケのアプリで配信される限り追っては行こうと思いますが、この漫画が原因でシャンフロが小説を読まない層にも爆発的にヒット! ということにはならないんじゃないかなーというのが私の正直な感想です。

【ネット小説 紹介】転生勇者が実体験をもとに異世界小説を書いてみた

おすすめ度☆☆☆☆ 

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 

 この作品は作家の乙一さんが書いた異世界テーマの短編小説です。乙一さんはミステリーの分野でとても有名であり、ライトノベルやホラーも書く幅広い作風で知られています。

 私は乱読派ではあるものの、ある時から単行本は全くと言い程買ってないので乙一さんは名前だけ知っているという感じでした。そもそもミステリーというジャンル自体、履修してなかったのでまあ今後読むだろうという感じで放置してた次第ですね。

 これは改善しなきゃいけない類の話しなんですが、私はあんまり謎を解くみたいなことに面白さを見いだせない性質なんですよ。常に少ないエネルギーをやりくりして何とか生きてるので謎解きみたいなカロリーを使うけれどもう答えは用意されてるみたいな問題はスキップしてきたというか。そんな経緯があるのでいまいちやる気になれないという。

 まあ何でも楽しめた方が得なのでこの辺りの習慣は治そうとしてはいるんですが、元々活力がない問題はいかんともしがたく。この辺は幼少期からの経験が影響しているので先を長く見ています。

 とまあ脱線しました。本題はミステリーやライトノベルを書いている乙一さんの話しですね。

 そんな作家さんの短編がRTで流れてきたわけですが、題材が異世界転生物なのでちょっと驚きました。読んでみると内容自体はそこまで目新しいという感じではないのですが、するすると入ってくる文章で非常に読みやすく。それでいてきっちりと意図したことを文字数に反して多く伝えてくるまさに短編のお手本のような書き方。やはり一線で活躍し続ける作家さんはすごいなぁと素直に感動しました。

 小説書きというのは誰でも書ける文字を商売道具にしているわけですから、あまりプロと素人の垣根というのが分かり辛い職業です。それでも異世界転生をテーマに据えて書いた短編がとても面白いというのはやはりプロというのは一味も二味も違うと思わされます。余裕が出来たら既存の作品も読んでいきたいですね。

 おすすめ度が5じゃないのは刺さる場所が少し限定されているかなと感じたからです。まあこのサイトを見ている人には多分関係ないと思うのでアレなんですが。とても面白く中身もそこまで長くはない短編ですので是非読んでみてください。

 

j-books.shueisha.co.jp