オタク文化の切れの端

基本的にweb小説を紹介するブログです。普通のラノベも読みます。批評とかもします。たまに一般文芸とか映画の感想とか思ったこととかが入ります。

【小説紹介と雑談】『追加戦士になりたくない黒騎士くん』と小説サイト毎の作中の表現

自分をワルモノだと思っていたヴィラン、“黒騎士”こと穂村克己はとうとう最終決戦に敗れ、ヒーローに捕まってしまった。
しかし、捕まった彼を待っていたのは監獄でも警察ではなく、まったく別の地獄であった。

戦隊ヒーローと呼ばれる存在が実際に現れてから一年。
これは色々とズレた常識を持っているヴィラン、黒騎士くんが一般人に勘違いされたり、ヒーローに追加戦士にされそうになったりするお話である。
※この作品はコメディとなります。

 

 

おすすめ度☆☆☆(☆)

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 この小説は変身ヒーローをテーマにしたSF・コメディ小説です。内容としては主人公がヒーローとして活動していくうちに他のヒーローや敵に追い掛け回されたりする話ですね。なんか雑な感じですが、変身ヒーロー物って前提が多いのでなかなか端的に書きづらいです。なんでベルトで変身するのとか何で敵が来るのとか変身ヒーローのテンプレートってなかなかに独特ですよね。

 その割には人気が衰えることなくずっと続くジャンルですし、海外だとマーベルみたいなめちゃくちゃに大きなヒーロー物もあります。変身ヒーローというのはなかなかにいろんな人へ刺さるジャンルですね。自分はそんなに予習していませんがマーベルの有名どころくらいは見ないとなーと未来の予定に書きこんではいます。

 とまあ脱線しましたが、この作品自体は日曜朝にやっている仮面ライダーや戦隊ヒーローのネタを多数盛り込みつつも、軽いコメディとSFで進んでいく変身ヒーロー物として王道な構成です。いや、自分が日曜朝のその辺の番組を見たのはかなり昔のことなので今はそんなんじゃないぜ! って言われると浅学でしたと言うしかないんですが、個人的なふんわりとした印象として聞いてください。

 いわゆるお約束が多数盛り込まれつつも、ライトノベルの軽い感じで進んでいくこの作品。楽しく読むことが出来ました。こういうのが好きな人はもっと楽しめると思います。

 

syosetu.org

 

 

 ここからは雑談なんですが(今までが雑談じゃないかと言われるとアレですが)私が最近気づいたのはハーメルンでは作中の表現にいろいろな形があるなーということなんです。

 ここでいう作中の表現というのは基本の文章や文字以外に何か変化を加えた物のこととしておきます(例、物語の地図 文字の色や大きさの変化 文章での○○の再現等)

 今回紹介した小説もそうですが、変身シーンだとみたいな色を使って見たり、lineを再現してみたり、掲示板のフォーマットを再現してみたり、いろんな手法を用いられているなーと思いました。

 なろうやカクヨムでもこういうような工夫がないなんてことは全然ありませんが、やはりハーメルンに比べると数も種類も違うなーと思います。(それ以外のサイトはあんまり読んでないので比較できません)

 個人的にこういう文章以外の表現はあんまり好きではなく、それは多分オリジナルの作品しかほとんど読んでこなかったのでキャラ立ちや物語がしっかりしていないときに、このような表現に頼るとその表現に作品自体が寄せられてしまい、そういう表現を世界観の補強に使うのならば別媒体でやった方いいんじゃないかみたいな頭の固い考えが根底にあるせいだと思います。

 しかしながらハーメルンの小説は大体がまずキャラ立ちを第一として、世界観自体は二次創作のような皆が知っていたりする世界や、テンプレートとしてしられる世界観(異世界転生や○○といったジャンル)を使う形が多い気がします。

 そのような環境であるならば、いかにその世界が読者と思い描く物と同じなのかを証明する手段としてこのような作中の表現を使うのは正当な進化なのかなーみたいな気持ちになりました。

 好きじゃないといってもこういう表現を使う小説が私にとって面白くない物になりがちだったからの苦手意識なのでその物語に合ってるならヨシ! と思っております。それが面白いならオッケー!

 長々書きましたが以上です。ふんわりとした雑談でした。  

 

【小説紹介と雑談】『和風ファンタジーな鬱エロゲーの名無し戦闘員に転生したんだが周囲の女がヤベー奴ばかりで嫌な予感しかしない件』と最近の18禁ゲーム

どうやら和風ファンタジーゲームの名無しモブに転生したらしい
……尚、ゲームのジャンルはエログロ上等な鬱ゲーである

・追記
ファンアートへのリンク等がある話には●を付けました

 

 

おすすめ度☆☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 今回はハーメルンの作品で和風ファンタジー物ですね。内容としてはタイトルから連想されるような軽い感じではあまりなく、容易く人が死に、力あるものが暴れれば吹けば飛んでしまうような小さな力しか持っていない主人公が、その中でも活躍しようと足掻くような、そんな物語です。

 描写もしっかりとした土台にある文章で、成立難易度の高い和風ファンタジーという世界をきちんと成立させています。その上でタイトルにもある通り、主人公はやったことのあるゲームからの転生ということでヒロインなどの魅力あるキャラクター達も兼ね備えており、とても面白く読んでいます。

 物語としてはまだ中盤にようやく差し掛かったところという印象を受けますが、このままのクオリティで進んでいくのなら、非常に楽しみです。

 さてこの小説でも出てきているエロゲーという単語ですが、実際のところこのような作品に耐えうるようなしっかりとした世界観を持つ18禁ゲームというのは最近だと出ているんでしょうか。

 その辺の歴史をあまり知らず、私自体が18禁のフィールドに詳しくないのであれなんですが、元々18禁のPCゲームというのはシナリオに非常に重きを置いたものが散見したみたいなことを聞いたことがあります。なんか制約が少ないだとかなんとか。この辺ふわっとしてるんで違かったらやんわり指摘してくれると助かります。

 自分も知っているので言えば沙耶の歌とかG線上の魔王とかですかね。まあやったことはないので中身だけ知ってるという感じですが。それこそ今は最初から全年齢版みたいな顔をしてるもののfate/stay nightとか。これは私もやった記憶あります。内容というよりノベルゲーだと文字送りが遅くて、一気に表示できないのが好きじゃないなーと思ってました。

 それはともかく、そういうシナリオを重視するみたいな流れは今はどちらかといえば18禁の同人ゲームみたいな方へ流れていったみたいな感触があります。いや、これも全然詳しくはないので違いますって言われるとアレなんですが。

 ネット小説みたいな気軽に投稿できるテキストメインのところが出来ましたし、わざわざ18禁の場所でみたいなのが流れてるというのは確実にありそうですよね。

 なのでこの小説などにおける『世界観が重厚なエロゲー』というのは今後幻想入りしていくのかなーなんて思いました。ゲームに転移する系のMMORPGという概念と同じ立ち位置。

 しかしながら物語の題材になるということは人にそれらが望まれている証拠でもあるので、またなんらかのきっかけで復活したりもするのかもしれません。そのまま復活するか形を変えるのかはともかく。

 関係ないことをだらだらと述べてきましたがとても面白い小説です。いい意味でタイトルから想像したものとは違うしっかりとした物語が味わえるので是非読んでみてはいかがでしょうか。

 

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【小説紹介と雑談】『鬼人幻燈抄』とフィクションにおける未来の先取り

『人よ、何故刀を振るう』

 江戸時代、まだ怪異が現代より身近で鬼が跋扈していた頃のこと。
 江戸より百三十里ほど離れた山間の集落“葛野”にはいつきひめと呼ばれる巫女がいた。
 護衛役である甚太はいつきひめの為に刀を振るうが、何一つ守れず全てを失う。
 巫女を、惚れた女を殺したのは大切な妹。
 彼女は百七十年後、全てを滅ぼす鬼神となって再び現世に姿を現すという。
 憎しみから鬼となった甚太は、何を斬るべきか定まらぬまま、遥か遠い未来を目指す。
 
 鬼に成れど人の心は捨て切れず。
 江戸、明治、大正、昭和、平成。
 途方もない時間を旅する、人と鬼の間で揺れる鬼人の物語。

 

おすすめ度☆☆☆☆(☆)

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 この小説は和風のローファンタジーで、鬼や妖怪などの伝奇物ですね。主人公は鬼になった妹に大切な人であった女性を殺され、その憎しみから鬼になり、妹への復讐をするために長い年月を生きていく。その途中での関わった人たちから影響を受けて主人公も周りの人間も変わっていく……みたいな内容ですね。まああらすじまんまなんですが。

 特徴としては江戸から平成にかけて主人公が過ごしていくわけなんですけど、非常に丁寧なつくり方をされています。その時代の特色がきちんと文章から伝わってきますし、下調べがきっちりしているなーということを感じさせます。キャラクターの造形というのも非常に丁寧で、揺れゆく人間心理をしっかりととらえ、それを描いているのがすごいですね。

 この小説では早い段階から平成の主人公周りの描写、つまり未来の先取りが話として出てきます。この手法というのは基本的に最初の方で出てきて風呂敷を広げるため、世界観に時系列によって奥行きを持たせるために使われることが多いです。「この○○がのちの世に多大な影響を与えることはこの時誰も知らなかった」みたいな表現ですね。結構見る表現ではないでしょうか。

 しかしこの小説ではそれをエピソードとして1話、時にはそれ以上の長さで行うことが結構あります。この手法は時系列の奥行きを持たせられる反面、それが遠い未来のことだとそこへ行きつくまでの過程が結構制限されるものです。少なくとも見知った主人公や登場人物が出てきたら、少なくとも死んだりはしないんだなとなりますしこれからの展開が読めてしまいます。

 こんな功績を残してるんだ! というエピソードだったら、一番気持ちいい栄光を浴びる部分をもうこなしてしまっているので、そこに至るまでのしんどい過程を読者が面白く感じるように描かねばなりません。それも大変ですし、もしその描写を飛ばしてしまったら浴びている賞賛が薄っぺらくなってしまいますからね。総じてそのエピソード時点では世界観が広がるものの制約が多く、展開が読みやすくなる(融通が利きづらい)ので辛いというのが個人的な感想でした。こういう展開(未来の話しを長くする)をした小説できっちり終えた小説をほぼ見たことがありませんでしたし。

 しかしながらこの小説は魅力の部分を他のキャラクターとの交流、揺れ動く人間心理や活劇といったところに移し、その制約をきっちりクリアして見せ、時系列の差で起きる面白さを引き出しています。すごい!

 ストーリーラインとしてはまっすぐでそこまで奇を衒ったものではないですが、未来の描写もありつつも長編をきっちりと最後まで収束していて作者の方の力量が伺えるようです。

 もう完結しているのもあり、非常に上手くまとまっていて、なろうにはあまりない和風の伝奇物ということでそういう話しが好きな方は是非読んでみてはいかがでしょうか。

 

https://ncode.syosetu.com/n4442da/

【小説紹介と雑談】『子豚ちゃんな私は、この世界では超美少女らしいです。』とルッキズム

私(♀)には、日本という国で女として生きていた前世の記憶がある。どうやら転生者というやつらしい。転生先のこの世界と地球には、当然多くの違いがあるけれど、最大の違いは美的感覚だと思う。なんせ、私の価値観では不細工子豚ちゃんな見た目の私が、こちらの価値観では傾国レベルの超美少女らしいのだ。そんな私が、私基準ではめちゃくちゃかっこいい虎獣人の男性に出会って、押せ押せするお話。
本編は全十七話、プラス番外編いくつか。男女両方の視点から話を書いているので、場面の重複があります。

 

おすすめ度☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

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 この小説は美醜逆転物の恋愛小説ですね。元の世界だと虐げられているような見た目の主人公が持て囃される世界にて、元の世界では価値のあるとされていた見た目の相手が虐げられているのを見て、その相手に恋に落ちるみたいな話です。まあ美醜逆転で恋愛物って言ったらこれしかないような気もするんですが。

 元々美醜逆転というのは容姿が優れていない自分がどうしたら愛されるようになるのかを妄想していったら出来た要素だと思うんですが、個人的にはなかなか複雑だなと思います。

 現実では多かれ少なかれルッキズム、つまり容姿によって評価が左右される場面があるわけです。こと恋愛関係においては一番多いかもしれませんね。努力の多寡はもちろんあるでしょうが、容姿に恵まれる/恵まれないというのは確実に存在します。

 その上で恵まれない容姿である人が逆の立場になったらというのが美醜逆転物なわけですが、結局のところ立場が逆になっただけで仕組み自体は変わっていないというのが悲しいところ。ルッキズムに虐げられてきた人がルッキズムで支配する側に回るという構造。すごく嫌味な風に言えば逆転世界で虐げられている相手(つまりイケメンや美女)に主人公が手を差し伸べれば自分たちが支配層なら虐げられた人間も認めて上げれると示せます。

 現実では自分の身体の価値を社会が勝手に決めて、それに応じた対応を周りがしてくるというのは覆しのないようなことで、例えば自立すれば整形などの対応もできなくはないですが、子供のころに受ける周りからの評価は人格に多大な影響を与えますよね。何とか出来るようになった頃には癒えない傷がついていることもあります。

 そんな中で心が綺麗なら……みたいな綺麗ごとは通用しないとは言いませんがほとんど力がないのはそんな経験をしてきた彼ら/彼女らにとっては明らかであって、そういう時にこういう美醜逆転物が助けになるのかなぁなんて思ったり。そんなことを考えながら読んでました。

 まあこんなどうでもいいことを考えながら読んでいる人はいないでしょうし、普通にこのジャンルとして面白く読めたので興味がある方はいかがでしょうか。

 

 

 

https://ncode.syosetu.com/n4243cg/

 

【小説紹介と雑談】『ギアス世界に転生したら病弱な日本人女子だったんだが、俺はどうしたらいいだろうか』と二次小説について

元日本人男子の「俺」が転生した先はコードギアスの世界、しかもブリタニアと開戦する以前の日本だった。
このままだと戦争で死ぬ。
由緒正しい忍者(?)の家柄である篠崎家の娘、百合として、彼は生き残るための方法を模索する。

※読者さまからいただいたイラストはまとめて活動報告に掲載させていただいております。
まことにありがとうございます。
※本編完結しました。

 

おすすめ度☆☆☆☆

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☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

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 今回紹介するのはコードギアスの二次創作ですね。私はコードギアスをかなり周回遅れで履修したんですけど、遅れた理由があんまりロボットに興味がないからでした。実際のところギアスの能力やストーリーがよく、そこで大きくウケていた印象なので、ロボット物というだけでなくいろんな要素を上手く噛み合わせたところが人気だったのかなぁと今となっては思います。まあ人気のロボット物ってみんなそんな感じだと思いますが。ガンダムとかエヴァとか。

 この小説は主人公が本編開始前の世界へ転生して、原作の知識を使って未来の改変をしていく話ですね。まあ二次創作小説としては王道なのではないでしょうか。

 最近になって二次創作小説をよく読むようになったんですけど、それまではイメージとして原作キャラクターの別の魅力を引き出すのが主な目的なのかなーと漠然と思ってました。

 もちろんそういう小説もたくさんあると思うんですけど、基本的にハーメルン内で人気なのはそこの世界に別種の主人公を送り込んで原作と絡めつつ活躍させる奴ですね。そこそこ読んだ(ランキングから50作いかないくらい?)程度の認識なので違うよ? と言われるかもしれないですが。

 すでに完成された面白い世界で何者かになって活躍できる! というのがこのような小説の大きな魅力ですよね。さっくり読めるものが多いので最近はもっぱらこういうのを読んでます。

 小説の話しに戻すと、読んでるうちにあーこういうキャラクターいたなーとかこんなストーリーだったなーと思いだすことができ、主人公のキャラクターも立っていてとても面白く読めました。二次創作でも原作の出来事をすでに知っているでしょ? って感じで説明を全部すっ飛ばされるとメアリースー感が高くなってしまいますし、この辺りがきちんとしている作者さんはすごいなーと思います。私みたいなうろ覚えにも優しい。

 コードギアスを知らない、知っていても聞きかじりだけみたいな人でも楽しめます。二次創作に抵抗ない人にはお勧めです。

 

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【小説紹介と雑談】『ダークファンタジー系海外小説の世界で人外に好かれる体質です』とダークファンタジーについて

生まれ変わった先は、人外魔境で有名なダークファンタジー小説の主人公でした。
せっかくのファンタジーだし、どうせなら原作みたくカッコいい魔法使いになりたい。
でも、一つだけ大きな問題がある。
それは、僕のヒロインが全員イカれた化け物ってことだ……

 

おすすめ度☆☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

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 気が付くとすぐ日が経っているので時間というのはあんまり優しくないなと思いつつ。今回の小説はファンタジー物ですね。まあタイトルにある通りなんですが。

 内容としてはゲームオブスローンズみたいながっつりとしたファンタジー世界に主人公として転生してしまい、困ったことに主人公は魔を引き付ける設定があるので何とか生き抜かなきゃって感じですね。

 さわりとしては主人公が知っている原作の話しが多めで、ダークファンタジーの設定な割に重さが足りないかな? って印象でしたが進むにつれてその軽快さは鳴りを潜め、だんだんとそのタイトルにふさわしいダークな感触に変わっていきました。

 その上で登場人物も魅力的で非常に面白く読んでいます。こういうファンタジー世界だとゲームでいう”ネームド”のようなモンスターやキャラクターを存在感ある感じで描写されるとやはりワクワクしますね。

 ところでダークファンタジーっていう括りなんですけど、ファンタジーにはいろいろあるものの実際のところファンタジーと聞いて科学がっつり魔法もがっつり世界は繁栄を極めている! なんて感じを想像する人は少ないと思います。それこそ文明が発達していない架空上の中世ヨーロッパに魔法を乗せた世界みたいなのがパッと考えるファンタジーなのではないでしょうか。

 そもそもそういう世界って普通に考えればならず者が横行していて治安は悪いはずです。少なくとも魔法という派手な武器があってモンスターみたいな人類の敵もいる設定だったらなおさらですよ。

 そんな世界だったら悲劇はごく当たり前に起きるわけで、リアルに考えると大体ダークファンタジーに行きついてしまうわけです。リアルはダーク。

 ファンタジーという言葉が拡大し続けてる現状、古来ならば神話、有名どころでは指輪物語などの本来ファンタジーと呼ばれてたこのジャンルがダークファンタジーとやハイファンタジー呼ばれるようになったのは中々面白い話だなーと思います。

 とまあ脱線しましたが入りは軽く、中に行くほど引き込まれて行く面白い小説です。そういうのが好きな人は読んでみてはどうでしょうか。

 

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【小説紹介と雑談】『サイレント・ウィッチ』と女性主人公

天才魔術師モニカ・エヴァレットは人見知りで、人前で喋るのが大の苦手。
そこで彼女は猛努力の末に、詠唱をせずとも使える無詠唱魔術を習得。〈沈黙の魔女〉として、弱冠十五歳で七賢人に選ばれた後は、森の中で静かに暮らしていた。

それから二年が経ったある日、モニカに一つの命令が下される。
その命令とは、学園に通う第二王子を、本人には気づかれぬよう秘密裏に護衛してほしい、というもの。
かくしてモニカは王子の護衛をするために、貴族の子女が通う煌びやかな学園へ潜入するのだった。

「いやだよぅ、怖いよぅ……うっ、うっ……胃がキリキリするぅ……」

と泣きべそをかきつつ。


カドカワBOOKS様から書籍化していただけることになりました。ありがとうございます!
コミカライズ企画も、現在進行中です。
番外編・外伝は、タイトル上のリンクからとべます。

 

 

おすすめ度☆☆☆☆

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☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 気づくといつの間にか月日が過ぎていて更新結構開いてしまいました。今回の小説は魔法ファンタジーでの学園物ですね。地球出身の人間が~みたいな異世界系ではないハイファンタジーです。

 中身としては天才魔術師でありながらそれ以外は年相応な少女である主人公が、ひょんなことから学園に通う王子の影の護衛として学園に潜入することになり、そしてそこで人間的に成長していくという感じです。

 こういうモチーフだと天才魔術師という部分にフォーカスを当てて主人公を持ち上げるのが最近のブームというか流れですが、この小説はそうではありません。その部分は主人公という人物を構成する一要素であって、それ以外の人間的な部分にもきっちりと焦点が当てられており、天才魔術師(数学が非常に得意)であるというステータスがどこにでも出張ってくるというような構成にはなっていません。

 それは主人公の脇を固めるキャラクター達も同じで、誰もが皆悩みや葛藤などを抱えており、その人間らしさをうまく物語の上で昇華していくような、気持ちのいい物語になっています。

 ストーリーも綺麗にまとまっており、魔術などの設定も凝りすぎず、それでいて説得力がきっちり出るような風に描かれているのでとても完成度が高い小説だなーというのが私の感想です。キャラとしては主人公のモニカが好きですね。

 

https://ncode.syosetu.com/n8356ga/

 

 ここから先はネタバレを含みます。中身としては主人公の性別による攻略対象の選び方って変わるよねみたいなことが書いてあります。

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【小説紹介と雑談】『俺にはこの暗がりが心地よかった』と小説の掲示板回

「私が選んだ1000人に異世界へ行ってもらう」
全世界のディスプレイに現れた神の言葉によりその騒乱は始まった。
幼馴染みが転移に選ばれてしまった黒瀬ヒカルは、彼女が転移する当日、彼女と共に殺害されてしまう。しかし、なぜかヒカルは死なず、権利がなかったはずの『行動のすべてを地球でライブ中継される異世界転移』に選ばれてしまうのだった。
何の準備もなく魔境へと転移させられた彼は、何度も死の危機に直面しながらもギフト闇の精霊術によりどうにか生き残り続けていた。
「死ねない。地球でみんなが応援してくれているはずだから――」
これは、視聴者達の視線に翻弄されながらもやがて前を向き歩き出す、精霊に愛された少年の物語

 

おすすめ度☆☆☆☆

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 また期間が開きましたが例によってFF14してました。楽しいからしょうがない。

 今回のこの小説は異世界転移物ですね。あらすじは引用した紹介文の通りです。王道ですね。作者の方がタイトル変えるかもーと書いていたので変わった時は記事タイトルも変えときます。

 このような感じの設定でよくある主人公周りだけ解像度を高めて、それに都合のいいよう世界側を歪めるご都合主義みたいな感じではなく、しっかりと物語が練られており、世界の上にキャラクターが動いているのが感じ取れます。

 異世界転移物というのはこの辺りの匙加減が難しいです。基本的に読者は主人公の活躍を望んでいるわけですが、主人公に有利すぎてパカパカ無双されると物語のリアリティがなくなってしまい、これってただの空想じゃん! と醒めてしまうことになります。そりゃあ全部が全部自分に都合のいい世界に生きている人はいませんからね。これは裸の王様だと気づいてしまうわけです。

 かといって現実に即したような苦難を描くとそこから抜け出して活躍する道筋が遠くなり、切ったばったで無双するような単純な主人公の活躍からは遠くなってしまいます。もちろんそういうこと以外にも主人公が活躍する手段はあるでしょう。しかし現実的な路線で行くと栄え辛い、もしくは適切な知識がかなり必要になり、ご都合主義的な設定チートでそこを打開すると上の醒めてしまうことに繋がってしまいます。

 この辺りをうまくコントロールして主人公などのキャラクターに感情移入させるような物語を創るのは作者さんの力量がないと成立しません。その辺りこの小説はとてもうまくやっていて、少し引っ掛かるところはあるものの(視聴者数の話しとか現実社会の動きなど)サクサク読めてかなり面白いです。

 とまあ紹介とは少し離れるんですが、この小説にはいわゆる掲示板回が結構出てきます。現実の匿名掲示板を模した感じのアレです。

 私は結構好きなんですが、なんでだろうと考えた時に主人公の優位が明確に再確認できるからかなーと思うんです。

 実際の匿名掲示板はともかく、こういう物語で出てくる場合は主人公たち以外の民意として現れるわけです。基本的には一般の人たちが主人公について語るわけですから、話題の中心です。しかも彼らが主人公の起こしてきた事実を言って再確認しても露骨なヨイショには感じません。あまり嫌味なく主人公の業績が確認でき、話題の中心にもいます。カタルシスポイントが貯められます。読んでて気持ちいい!

 しかしながらこれが成立するには語られるだけの業績が主人公に必要なわけです。その辺りの積み重ねが疎かだとそもそも成立させれません。何もしてない主人公を褒めそやせませんよ。無い袖は振れない訳で、その辺りはやはり作者の方の力量が大事。その辺りが私の掲示板回が好きな理由なのかなーなんて思いました。

 とまあ結構脱線しましたが、サクサク読めてとても面白いです。異世界転移系を読みたい! けど露骨なのはちょっと……みたいな人には特にお勧めです!

 

https://ncode.syosetu.com/n7820go/

 

 

 

【小説紹介と雑談】『お前が神を殺したいなら、とあなたは言った』とエンタメぱぅわー

「ナオキ、君に神を殺してほしいんだ」

 現代日本新興宗教の教祖として生計を立てていた神城ナオキは死んだ。そして彼はその罪ゆえに、無限の地獄へと送られることになった。
 だがなんの手違いか、はたまた陰謀か、彼は神々が実際に存在する異世界「エルマル」に送り込まれる。神とその神官たちが支配するこの世界において、神の加護も特殊な能力も持たぬまま、ただ「神を殺せ」という使命だけをその身に帯びて。

異世界に転移した現代日本人が、「本当の神」を信じその恩恵を世界にもたらす教団を駆逐し、自分の教団で世界を支配していく物語です。
※主人公はいわゆるチート的なものを一切使えません(展開がダルくなるので言語は初手から通じる方向性で)。
※各話タイトルの後ろの(+n日)は、1つ前の話からの時間経過を示します。
※登場人物はだいたいみんな死にます。人によっては鬱展開と感じるかもしれません(作者的には想定より全然そっち側に行かなかったなというのが所感です)
※教会内部の派閥名を見て「あっコレってアレじゃんね」と思った同胞が万が一にもいたらお声がけください

 

おすすめ度☆☆☆☆

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☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

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 この小説は神学を中心としたファンタジーです。内容としてはファンタジーな部分は少なく、神学を中心に研ぎ澄まされた登場人物たちによる人の限界に挑むようなやり取りが繰り広げられます。

 神学という余り馴染みがないだろう分野を題材にしたこの小説は、深い知識に裏付けされた恐るべき完成度を誇っています。

 昔私が記事に書いたことなのですが「例えば賢者という役職はライトノベルなどにおいてただ知識がありすごい力を使える人という符号でしかない」というのがあります。

 その記事内にも書いた通り、賢者を賢者たらしめる経験と知識を作者が想像するにはそれだけの思索・経験が必要であり、それはとても難しいことでだからこそそれが書かれている小説は最高! という話しです。

 この小説はその高コストを全て支払いきり、その上で私のようなあまり勉強をしていない人間にもわかりやすく小説という形に落とし込み、なおかつ面白いというすさまじいことをしているのです。

 私はあまり神学について知らないので文章で示されたものに「うんうんそうだよね」と頷いたほんの十数行後に示された新しい解に「そっちのが正しいかも!」と飛びついたりと糸の切れた凧のように考えをふらふらさせることになりました。弱い。

 終わり方も最初から筋道を決めておかなければ辿り着かないような非常に美しい終わりであり、構成の面においてもすごい。90万文字を超える長編をこう落とし込める筆力。

 作中のセリフや行動にはほとんどに確かな説得力があり、それが息もつかせぬ怒涛の勢いで最初から最後までを覆っていて、作者さんのパワーをこれでもかと浴びせかけられた私はばたりと倒れたのでした。

 これだけの小説が普通に転がっているなろうというのは恐ろしいところですね。なんと無料で読めちまいます。怖い。皆さんぜひ読みましょう。

https://ncode.syosetu.com/n7775do/

 

エンタメ力の話し

 とまあここまで絶賛しているのですが、お気づきの方もいるかもしれません。私のおすすめ度としては☆4つにしています。

 私個人としてはすごく面白く、これを書いた作者さんに畏敬の念を捧げているところなのですが、それが万人に受けるわけではないというのがその理由です。

 この小説はかなりのハイカロリーで少なくとも流行りのライトノベルのようなお菓子ばかり食べている人にとっては中々に”重い”のは間違いないはずです。少なくとも思索や勉強を好んで食べるくらいの人間でなければサクサク読むことは無理でしょう。

 この小説の面白さの本質はキャラクターの魅力や設定の奇抜さではなく(もちろんそこも面白いですよ!)神学と言う学術に対する人々の闘いなのではと思います。

 日本語ではこれらは一纏めに面白いで括られますが、この面白さは比重で言えばinterestingの方、無理やり和訳すれば”興味深い”という類いの面白さに傾いてるのではと言うことです。

 この”面白さ”というのは知を愛していない方々には伝わり辛いもので、エンタメ小説が好きな――とりわけライトノベルが主戦場の――人々にはそこまで響きません。そして彼らこそエンタメ小説という分野において大衆派であって、その点から見ると万人におすすめできるとは言い難いなーというのが私の考えです。

 彼らが求めるのはエンタメぱぅわーが高くて面白い小説であってinterestingの方ではないですからね。まあこの小説、エンタメぱぅわーもかなり高いのでそういう読み方でも読めちゃうのがヤバいんですが。

 それと一つだけ、ちょっと不満な点があります。まあこれはうるさいオタクの戯言なので小説の面白さには全く関係ありません。

 それまでひたすら学術への人々の(営み)を見せられ、それも歴史と言う大きな流れの中ではほんの少しなのは本当に美しいと思うんですけど、最後の一話だけがエンタメに積極的に屈した感じで違和感があります。

 そうしないと主人公の動機付けや本編中薄っすら出てきたシステムとしての神に回答できないのはそうなんですけども。現実の神学をめちゃくちゃうまく補完して早送りで描いてる人間の闘いに部外者が出てくるのが嫌と言うか……。個人的なわがままでしかないのはそうなんですが。

 それはさておき、久しぶりに勉強しようかなと思うようなそんな小説でした。作者さんに敬礼!

 

 

 

 

 

【小説紹介と雑談】『異世界職業図鑑』と長編の難しさ

異世界経済物語(小説家になろうの方でも共通世界観の「少年冒険者の生活」を連載中)

■20200630 本編完結済

 

おすすめ度☆☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

※R18です

 

 この小説はファンタジーの群像劇です。一つの異世界で繰り広げられる数多の物語を章ごとにフォーカスする人物を変えて描いています。なんか堅苦しくなりましたが、本編的には結構な割合でギャグ的なシーンが混ざってくるのでサクサク読めます。あとこの小説、R18なので結構あけすけな表現が出てきますが、あくまでメインは物語になります。

 しかしながらサクサクは読めるんですが、すぐ読み終われはしません。これは前の記事から更新が遅れた理由にも直結してるんですが、この小説、めちゃくちゃ長編です。話数は1000を超えて文字数で言えば730万文字! 参考にライトノベル一冊は約10万文字です。今まで読んできた続き物で一番長かったと思います。読むスピードには結構自信のある私ですら3週間以上かかりましたからね。読み終わってから記事書こうと思ってたらかなり時間が経ってしまいました。あんまり小説読まないって人だったらこの一作読み終わるのに一年かかるとか普通にあり得そうです。

 この小説のすごいところはこの大長編にもかかわらず、中だるみが見当たらず、終わりに至るまでどんどんと盛り上げていき、きちんと完結して見せたことです。編ごとの終わりが物語へと収束していき、一本の線に繋がっています。これは本当にすさまじいことで、これだけの長編を綺麗にまとめるにはその場その場で書いていては絶対に無理です。もちろん厳密に考えていなかった部分は多々あると思います。しかしながら書いたところから展開を組み立て、それを綺麗に着地させる作者さんの構想力には飛びぬけた物があります。

 基本的に小説は読めば読むほどこの展開になったらこうなるだろうなーという予測がつくようになります。これをテンプレと言うか必然性と言うかはともかく、これを外して読者を納得させるのは非常に難しいことです。

 しかしながらこの小説ではこの非常に難しいことを何度も成功させてきます。筋で読んでいると外され唸らされること多数。これもこの作者さんの構想力を裏付けする物でしょう。個人的にはやっぱり蜘蛛の糸編が一番好きですね。

 話自体のクオリティも非常に高く、完結していることもあってこれだけの長編でもガンガンお勧めしていきたいところなのですが、しかしながら人によっては合わないかもという部分もあります。

 基本的に物語というのは不快なキャラクター(ここでの不快は一般道徳に反す立ち振る舞いのキャラ)は登場を減らすべきです。誰だって不快な者を見たいとは思わないはずです。しかしながら古今東西色んな物語では”悪者”が出てきます。そんな”悪者”がなぜ出てくるのかと言えば、それは基本的に免罪符的な話となります。このキャラクターはこれだけの悪行をしたのだから何かに裁かれるべきという理由で打ち倒されてもらうわけです。主人公が何もしてない人を打ち倒したら主人公が不快なキャラになってしまいますから、免罪符が必要なのです。公平世界仮説ですね。

 なので”悪者”は打ち倒されるために必要なカルマポイントが溜まったら素早く退場させるのが基本です。まあ何事にも例外はありますが、それは例外足りうる要素がそろった時のだけです。

 この物語では長編であるがゆえに”悪者”にも長く活躍があり、悪行の報いが起こるまでに結構な時間差があります。そのせいでこのキャラきついよーとなる描写は結構続くことがあります。最序盤のヒモの章はその最たるものです。自分はここで一回読むのやめようかなってなりました。この辺りを耐えられないと厳しいかもしれないですね。ちなみになんですが、この理由で私はリゼロを読み進められなくなりました。主人公がめちゃくちゃするので……。

 非常にクオリティが高いこの作品がそこまで有名になっていないのはR18の検索の壁と上記の壁が大きいのかもと勝手に思っています。あとは全1178話の圧。

 しかしながら食わず嫌いするのはもったいない作品なので皆さん読んでみてほしいです。おすすめです!

 

https://ncode.syosetu.com/n8426ea/

【小説紹介と雑談】『転生エルフ血風伝』と今のなろうの流行り

「汝、夢幻の世界の住人たらんことを欲するか?」それは地獄への罠。強要される未曾有の大量殺人。開始地点はダンジョンの最下層。最初の敵はドラゴン。復讐を誓った元受験生の転生エルフは、やがて大陸全土を巻き込む戦乱の中心へと躍り出ていく……魔王として。

 

おすすめ度☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 この小説は異世界転生物ですね。流行りとしては過ぎ去った感じもありますが、この小説自体が2013年投稿なので当時を考えると流行にきっちり乗ってるという感じでしょうか。

 中身としては転生してきた主人公が魔王として世界に覇を轟かせていくといった感じで王道ですね。主人公以外の人間からの視点変更もうまく使っていて、世界観の広がりも抑えつつ、インフレをある程度コントロールしてるのがうまいなーと思いました。

 しかしながら世界観自体の説明はかなり不足していて、それを賛美的な言い回しで盛り上げて乗り切ってることが多いです。個人的にはもっと地盤を固めて世界観をストーリーで絡めつつ深めていったものの方が好きですね。

 とはいえ面白くないということはなく、こういうあらすじの物語が好きなんだ! って人にはお勧めできます。

 

 ここからは雑談なんですが、久しぶりになろうのランキングを覗いたらタイトルにみんな『もう遅い!』だとか『今更戻らない!』みたいなタイトルがすごい量出ててひえぇ……ってなりました。大抵の作品がめちゃくちゃ長いタイトルで、それを読むと成功が確約されており、元いた場所と比べて優越感! みたいな感じ。

 勝敗のわからないギリギリのバトルだとか失敗しても成長して……みたいな読者にストレスを与えてそれを開放するみたいな小説はなろうでは求められてない感がありますね。カタルシスまでの展開を約束してもらってストレスなしで読むというのが主流という感じ。

 正直こう確約されてると無意識に現実と比べてむなしくなりそうな気もするんですが、人気はあるわけですよね。予定調和的な楽しみ方なんでしょうかね。水戸黄門みたいな感じ。

 なろうの読者層おじさん説みたいなことも言われてるので、現実に重ねてる? みたいなことも考えたんですけど調べた感じ10代20代が半分以上を占めている*1らしいので違うみたいですし。

 個人的には物語に触ってきた数の違いかなという気持ちもあります。ラノベに触り始めたばかりだとこれくらいわかりやすい感じが一番ウケるとか。私みたいな擦れたオタクの総数なんて全体から見たら大したことないと思いますし。別にマーケティングするようにがっつり情報集めるほど興味がないのであくまで想像ですけども。

 何にせよこういう流れ自体は別にいいと思います。しかしながらランキングが汚染されて私好みのが見れないのだけは何とかしてほしいなぁなんて。まあ前々からそうなんですけども。

 なろうのランキングが書籍化の登竜門になってる現状、仕方ないといえばそうですが、そういうPVとかの数値に頼らないで当たる小説を見つけてほしいという気持ち……。まあ納得させやすさが違うのでなんとも。この世は儘ならないことだらけです。

 終わり。

*1:ソースここ!

premium.kai-you.net

【雑談】youtubeに改造されていく私たちと近況でも

 どうもこんにちは。また久しぶりに記事更新ですね。

 小説を紹介したいなーって気持ち、なくはないんですけど書けないでいるのには理由があります。ここ最近なろうのランキングなどを全く見なくなり、完結済みの作品ばっかり追っています。

 星の数ほどある作品から埋まっている作品を掘り当てることよりも個人的には面白い作品をたくさん読みたいんですよね。なので高い評価がある小説ばっかり読んでいるんです。

 まあwebで高めの評価ってなると面白さは当然として定期的な更新や長く続いての完結というのが基本になってくるわけです。

 そうなると必然的に話数が多い小説を読むことになるのでなかなか読み終わらないというか……。まあ毎日飽きずにff14してるのが悪いと言えば悪いんですが。

 とはいえ何作か読み終わって紹介できそうなのもそこそこに溜まったので近いうちに記事を出すでしょう。ちなみに今は異世界職業図鑑を読んでます。1000話超えてるのでもう少しかかりそうですが読み終わったらまずこの小説の記事かなと思ってます。

 

 近況終わり。あとは雑談でも。

 最近ゲームのお供にデュアルディスプレイyoutubeを見ています。皆さんも便利なのでデュアルディスプレイスマホの広告ブロックだけは買いましょう。お得です。

 とまあそこは置いておくとしてみなさんはyoutubeってどうやってみてますか? 正確に聞くならどうやって動画を探してますか?

 思うにyoutubeがおすすめしてくる動画を見ていることが一番多いんじゃないでしょうか。検索窓を使って調べるのはそこまで多くないのではと思います。事実私はそうなので。

 あのターゲッティングはとても精度の高いものでついつい見ちゃうんですよね。私だと料理系の動画だとか生き物の生態だとか雑学系の動画がわんさと出てきます。今だったらハマってるゲームのも出ますね。みなさんもそうなのではないでしょうか。

 それはとても喜ばしいことなんですが、一方でこのまま自分の視点が広まらないんではないかと思ったりもします。

 人は年を経るにつれて色んな物事を知っていくわけですが、どうしても新しいものに触れる機会は減っていきます。そもそも新しいものに対して気力が持たなかったりもしますしね。

 年老いてくると必然的に慣れ親しんだものを再生産再確認というような興味の閉じた円環になってしまいがちです。そのすべてが未来永劫通用するならいいのですが、そうではないのは歴史を見るに明らかです。天動説とか。

 そんな存在になるのを私は非常に恐れているのですが、その対策の一環としてなるべく多くの視点を知っておきたいというのがあります。

 まあ堅苦しくなりましたが、簡単に言えば知らないことは知っときたい! ってだけのことですね。

 しかしまあこういう風に好みを把握されているとその外側に足を向ける機会が失われてる感じがするなーという話しです。

 youtubeなんかだけじゃなくてターゲッティング広告とかもかなり身近にありますし、インターネットのその傾向はますます強まっていきそうです。

 そうやって興味の幅が狭くなっていった結果、自分の世界も狭くなっていくというのは避けたいとこですが、試しにyoutubeのターゲッティング切ってみたら見たい動画を見るのにめちゃくちゃ手間がかかるようになったのでやめました。グーグル様万歳!

 完

 

【小説紹介と雑談】『陰の実力者になりたくて!』と勘違い物

【web版と書籍版は途中から内容が異なります】

※書籍3巻とコミック2巻好評発売中です!

 どこにでもいる平凡な少年は、異世界で最高峰の魔剣士だった。

 彼の名はシド。

『陰の実力者』に憧れる転生者である。

 彼は実力を隠して学園に入学し、理想の『陰の実力者』になるため暗躍する。

 これは、おバカな夢を真面目に叶えようとする少年の物語。

 

おすすめ度☆☆☆☆

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 少し目を離すと結構日付過ぎてますね。最近めっきり新しく読む量が減ってブックマークの更新を見に行くくらいしかできてないのであんまり書くことないというか。まあFF14にハマってるのが全て原因なんですけど。

 まあ読んでる本はたくさんあるのですが、改めて紹介しようとなるときっかけがないのもまた事実。読んだ直後みたいな脳内の占有率が高いうちに記事を書いた方がいいのはそうですね。今回は読んでたストックからの放出なんですけど。

 この小説は勘違い物です。陰の実力者というミームにあこがれて常識をぶっちぎるくらい強くなった少年とそれに深読みして振り回される周りという勘違い物としては王道な感じですね。

 この作品自体はなろうの累計ランキングの上位(今調べたら7位でした)に入っているので結構有名な感じです。今まで結構流行ってはいるものの、なろうのボリューム層にヒットしていなかった部分をきっちりまとめ上げて受けやすくした王道な勘違い物というのが私の印象ですね。 

 そもそも勘違い物というジャンル自体が本来そうなるよね? という読者の認識に反してギャップを出すという話なわけですが、この認識自体がが読者すべてにあるかと言われるとなかなか難しいところがあります。

 読者の層が厚いほど、そのすべてで通用する認識は制限されて行くものです。毎日三食食べてるだとか睡眠は最低でも五時間は取ってるだとか、当たり前だろうと思っていることでも重なっていくとすべてに当てはまっている人間は思いのほか少なくなるもので、それはこのような認識にも言えるでしょう。

 面白い部分がきっちりと抑えられていて読んでいてくすりと笑ってしまうような箇所がたくさんあり、その上で無双的な要素も満たしています。その辺りをうまくやっているこの作品を見ているとやっぱり人気になるにも理由があるんだなぁと感じます。勘違い物が好きな人は読んでまず間違いない感じです。

 

 

https://ncode.syosetu.com/n0611em/

 

 

【小説紹介と雑談】『ログ・ホライズン』とMMORPGという属性

MMORPG〈エルダー・テイル〉をプレイしていたプレイヤーは、ある日世界規模で、ゲームの舞台と酷似した異世界に転移してしまった。その数は日本では約三万人。各々がゲームのキャラクターとしての肉体を得た今、プレイヤーたちは高い戦闘能力、「死」からの蘇生能力を備えた英雄的存在〈冒険者〉とよばれ、この異世界で暮らすこととなる。

 

 

おすすめ度☆☆☆☆(☆)

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 どうも私です。今回は『ログ・ホライズン』の紹介記事です。まあ今更紹介なんてするまでもない有名な作品で、アニメなどのメディアミックスも行われた小説ですね。

 今自分がMMORPGに属するFF14(正確に言うと違うんですけどそこは置いておいて)をやっているのでその辺に関連した小説でもと思って改めて読んだ感じです。

 あらすじと言えばまあ引用文そのまんまですよね。たくさんのプレイヤーがゲームの世界に入っちゃったっていう。この設定が人気になった頃にこの小説、『ログ・ホライズン』が現れて、異世界転移系の爆発的人気の決定打の一つになった……みたいな印象があります。実際の流れとしては結構違うかもしれないですが、個人的な印象としてはそうです。少なくともなろうの小説はこれだけ面白いものもあると確かな価値を示しだしたのがこの小説あたりからかなーと。レジェンド的作品ですね。

 内容なんですが、異世界転移で地に足付けた成長譚を非常に丁寧に描いていて、やっぱり頭一つ抜けてる面白さを感じます。地の文での心の動きを示すのがめちゃくちゃうまくて改めてすごいなーと思いました。

 最初にこの小説を読んだときは何にも考えてないガキンチョだったので、読み終わってもおもしれーーーーーーーーくらいしか感想が浮かばなかったのですが、今読むとなかなか考えることがあって面白いというか。

 例えばなんですが、この作品に出てくるキャラクター達は皆モブとは一線を画す傑物達なわけです。そりゃあスポットライトの当たっている人物ですから当然のことで、誰も物語のキャラクター達がモブ的な動きだけして終わるなんて面白くないです。少なくとも非日常での冒険譚では登場人物は何か非凡な才や幸運があるわけです。

 しかしまあこの小説の設定を紐解くと登場人物たちはMMORPGから突然異世界に転移してきた一般人なわけです。それがこの小説では突然の出来事にも動揺少なく、ハイコンテクストな会話をし、この世界や全身であったゲーム時代の仕様、そして豊かな発想からの勇断を持って世界をぐいぐいと動かしていきます。一応言っとくとゲーム時代は普通にパソコンでやるゲームであってVRMMOとかではないんです。少なくとも元のゲームの上手さと肉体を動かす戦闘なんかは全く別の物のはずなんですけど。

 なまじ現実でMMORPGというかネットゲームという属性を知ってしまったが故に、この英傑たちは少なくとも地球ではないどこか遠く、そして美しい場所からやってきた人と似て非なる尊い種族なんだ……みたいな気持ちがあります。

 まあ物語何て全部現実に即していたら全くもってつまらないのでこれでいいんですが、入りがゲーマーみたいな身近な題材だったので。意識してる分、違和感が結構出たというか。とまあ何も考えずに楽しんでた頃より成長したのか何なのか。めんどくさいオタクの話しですね。

 しかしながらつまらないなんてことは全くなく、ゲーム時代から来るこれどうなってるの? みたいな曖昧な部分やそういう違和感をも吹っ飛ばしてしまうほど文章が上手く、物語への没入感を高めてくれるので読んでる時は全然気になりません。こういう情感を乗せるのが上手いような、純粋に文章が上手い作家さんは最近のネット小説では全く見なくなりましたね。まあむしろネット小説にいた時代が特別だったという説もありますけども。

 脱線しました。とりあえず面白い異世界転移物は? と聞かれたら間違いなく早めに出てくるこの作品。まだ読んでない人はぜひ読んでみてはどうでしょうか?

 

 

https://ncode.syosetu.com/n8725k/

 

ログ・ホライズン1 異世界のはじまり

ログ・ホライズン1 異世界のはじまり

 

 

 

 

【小説紹介と雑談】『ギガファウナ ―超巨大生物の惑星―』と人から離れるSF

 25世紀。宇宙からの外来微生物により地球は危機に瀕していた。迫りくる滅亡を回避するため人類は外宇宙に活路を見いだす。日本政府が白羽の矢を立てたのは地球から約70光年離れた惑星あさぎりだった。だが、この星にはいわくつきの過去があった。かつて大型移民船セドナ丸が謎の超巨大生物の映像を最後に遺し消息を絶っていたのだ。
 探検隊のメンバーに抜擢された科学者やエンジニア、元傭兵に自衛官など、総勢157名の男女は謎に包まれたあさぎりへと旅立つ。長き航宙の末にたどり着いた彼らを待っていたのは、奇妙な生物に満ちあふれた生態系と、その上に神のごとく君臨する全長数百メートル規模の超巨大生物相だった。
 果てしてセドナ丸に何が起きたのか。惑星あさぎりの生命に秘められた謎とは。そして、探検隊員たちはこの星で生存することができるのだろうか。

 

おすすめ度☆☆☆(☆)

(おすすめ度 指標

☆5つ 万人におすすめ出来る完成度が非常に高い小説

☆4つ 小説好きには勿論、殆どの層におすすめできる完成度の高い小説

☆3つ 少し癖があるものの小説好きにおすすめ 

の目安で付けています)

 

 この小説のジャンルはSFですね。web小説の界隈で言えば少し珍しいジャンルです。まあ私が好んで読んでるわけじゃないので観測範囲が狭いというのはそうなんですが。

 この小説の中身を端的に言い表すなら超巨大生物が潜む惑星を探検して人類の居住区を作ろう! という感じですね。やはり未知の場所への探検というのは連綿と語りづかれ、その上で尚色褪せない魅力があります。私も普段はテレビとかあんまり見ないのですが、『深海に潜む謎の巨大生物!』みたいなタイトルを見たらのこのこテレビの前に這い出してしまいます。ここではないどこかで自分の想像を超えるような生き物や環境があるというのはやはりロマンですね。

 さて、こういう未知への探索となるとエンタメ的には大きな分岐があると思います。

 それは人間が主役か、それとも未知の生き物が主役かどうかです。これは一概にこれが主役と言えるものではなく、比重によるわけですが、基本的に人間寄りの話しが多いです。そりゃあまあ私たち人間ですからね。自分たちがそこに関わってないとつまらなくなりがちです。

 人の比重が大きければ大きいほど未知の生物や環境といった大きな力に対して、それを獲得して力を手に入れるというのが多くなってきます。これはそもそももっと大きなテンプレートである○○から不思議な力を手に入れて活躍するようなとこからの派生ですね。例えばナウシカとかそうですね。なろう系とも相性は良く、自由度も高いのでweb小説だとよく見かけます。

 未知の生き物が主役の場合、大抵語り手である人間があっちこっちに振り回されることになります。完全に振り切った場合、未知の生き物が語り手となって話を進めるのですが、これが見られるのはSFくらいなもので、あまりメジャーではないですね。

 この比重の割合が作品全体の方向性を決めると言っても過言ではないですが、どうしても人間以外に比重を置くと書くのが難しくなっていきます。感情移入しづらいですし、そもそも作者が人間なのですから自分の種族以外をリアルに読者に伝えるというのが難しいことは分かると思います。

 というわけでエンタメ的な小説だと人の比重が多くなりがちなんですが、この小説はその辺りのバランスが結構未知の生き物側に寄っていて、設定が練りこまれてるなーと感じます。

 SF的な方に寄りつつも未知な存在への畏敬とそれに対する人間の反応というがいい感じでこういうタイプの小説は久しぶりに読んだなーと新鮮でした。巨大生物やSF的な小説が好きな人にはお勧めです。

 

 

https://ncode.syosetu.com/n3366fv/